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秘密兵器
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柔軟をした後、グランドをランニング
優里はなんとか皆と同じメニューをこなし、続いてのキャッチボールへと移行した。
相手は勿論大輔だった。
練習中につき、言葉は交わさなかったが、久しぶりの優里とのキャッチボールは大輔を少し感傷的な気分にした。
キャッチボールが終わると、監督の村上が優里の元に近づいてきて、状態を気遣った。
「水谷、どうだ?
体調の方は…
初日から飛ばす必要はないから、自分のペースでやろう。」
「はい。」
「よし、マウンドから少し投げてみるか?」
村上がマウンドを指さして言うと、優里は頷き、小走りで向かって行った。
「肩ができるまで何球でも放っていいからな。
ゆっくりやるんだぞ」
村上が離れたところから大声で言うと、優里は帽子の鍔に指を置き、軽く会釈した。
大輔がレガースを取り付けてホームベース後ろにしゃがんで構えると、優里はゆったりとしたフォームから第一球を投じた。
山なりのボールだったが、大輔の構えるミットに寸分の狂いなく収まった。
大輔は頷き、ボールを優里に戻し
「水谷、今日はストレートだけな」
と、言って再び座って構えた。
今度は少し速めの球を投げたが、まだまだ大輔の知る優里の球ではない。
何球も丁寧に自らのフォームを確認しながら投げ続けた優里は、監督に向かって
「大丈夫です。
次、全力で投げます」
と、宣言した。
村上は頷き、二年の山谷にスピードガンを持たせて大輔の後ろに立たせた。
「どれくらいの球を投げられるんでしょうかね?」
村上の隣で優里の姿を見つめていた部長の光岡は、耳打ちするように小さな声で質問した。
「まあ、ブランクがあるからな。
過剰に期待してはダメだよ。
投手が一枚増えただけでも感謝しなきゃならん。」
村上や光岡だけではなく、部員全員も練習をやめて、優里の一球に注目した。
いつものように、セットの構えで静止
そして、小柄で柔軟な体をスムーズに体重移動させると、
思い切って腕を振って投げ下ろした
パンッ!
小気味の良い音がこだまするのと共に、大輔の構えたど真ん中にきれいに収まった。
「いいぞ!」
大輔は頷き、ボールを優里に投げ返した。
「監督、どうです?」
「140キロ台前半てとこだな。
だが、岸よりかなり速い。
それと手元での伸びもあるしコントロールも正確だ。
これだけのブランクががあって…
ブランクっていうのは女子野球からの話じゃないよ。
男子として野球を辞めてからのブランクが、二年もあって、ここまで投げられるなら大したもんだ。
もう少し練習して体が慣れてきたらもっと速い球が投げられるようになるだろうよ。」
村上は冷静に優里の実力を評価した。
優里はなんとか皆と同じメニューをこなし、続いてのキャッチボールへと移行した。
相手は勿論大輔だった。
練習中につき、言葉は交わさなかったが、久しぶりの優里とのキャッチボールは大輔を少し感傷的な気分にした。
キャッチボールが終わると、監督の村上が優里の元に近づいてきて、状態を気遣った。
「水谷、どうだ?
体調の方は…
初日から飛ばす必要はないから、自分のペースでやろう。」
「はい。」
「よし、マウンドから少し投げてみるか?」
村上がマウンドを指さして言うと、優里は頷き、小走りで向かって行った。
「肩ができるまで何球でも放っていいからな。
ゆっくりやるんだぞ」
村上が離れたところから大声で言うと、優里は帽子の鍔に指を置き、軽く会釈した。
大輔がレガースを取り付けてホームベース後ろにしゃがんで構えると、優里はゆったりとしたフォームから第一球を投じた。
山なりのボールだったが、大輔の構えるミットに寸分の狂いなく収まった。
大輔は頷き、ボールを優里に戻し
「水谷、今日はストレートだけな」
と、言って再び座って構えた。
今度は少し速めの球を投げたが、まだまだ大輔の知る優里の球ではない。
何球も丁寧に自らのフォームを確認しながら投げ続けた優里は、監督に向かって
「大丈夫です。
次、全力で投げます」
と、宣言した。
村上は頷き、二年の山谷にスピードガンを持たせて大輔の後ろに立たせた。
「どれくらいの球を投げられるんでしょうかね?」
村上の隣で優里の姿を見つめていた部長の光岡は、耳打ちするように小さな声で質問した。
「まあ、ブランクがあるからな。
過剰に期待してはダメだよ。
投手が一枚増えただけでも感謝しなきゃならん。」
村上や光岡だけではなく、部員全員も練習をやめて、優里の一球に注目した。
いつものように、セットの構えで静止
そして、小柄で柔軟な体をスムーズに体重移動させると、
思い切って腕を振って投げ下ろした
パンッ!
小気味の良い音がこだまするのと共に、大輔の構えたど真ん中にきれいに収まった。
「いいぞ!」
大輔は頷き、ボールを優里に投げ返した。
「監督、どうです?」
「140キロ台前半てとこだな。
だが、岸よりかなり速い。
それと手元での伸びもあるしコントロールも正確だ。
これだけのブランクががあって…
ブランクっていうのは女子野球からの話じゃないよ。
男子として野球を辞めてからのブランクが、二年もあって、ここまで投げられるなら大したもんだ。
もう少し練習して体が慣れてきたらもっと速い球が投げられるようになるだろうよ。」
村上は冷静に優里の実力を評価した。
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