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フロイライン

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脅迫

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「親の仕事の都合でやむなく引越しをした場合、前の学校で野球部に直前まで所属していた場合でも、次の学校でもすぐに試合に出られる。
そういう特例措置があるんだ。
普通なら一年間は出られないんだがね。」

「…」

「まあ、彼の思いはね、そこまでしても水谷さん、君と野球を再びやりたかった

私はその思いに絆されてしまったんだよ。」


「…」


「まあ、とはいえ君の考えを否定するつもりはないし、自由を謳う我が学園で、こちらの考えを押し付けたりするような気持ちはさらさらないんだよ。

あくまでも、そういう話があったという事実を伝えたまでだ。

それと、富田君の父親についてもね、野球部に招き入れたいがためにヘッドハンティングするような邪な考えも1ミリも持ってはいないから、そこは安心してくれたまえよ。」


「…」

いや、そんな邪な考えを持っているに違いない…

自分がこの話に従って野球部に入り、そこで負けても誰も咎められないが
もし、入部を断り、そのまま大会が始まり敗退となった場合、当然この理事長は自分が入らなかったせいだと思い、誰かに責任を押し付けるだろう。
大輔のお父さんも会社での立場が危うくなり、ひょっとしたら辞めなきゃいけなくなるかも…

優里は一瞬にして、西岡の話のウラにあるものを看破した。

だが…

「すいません

ワタシの気持ちは変わりません。もう野球は諦めて、普通の女子として生きたいと、今はそれだけを考えています。
それに、もし、入部したとしても
今のワタシは性転換をして女性の体になっています。
部室で一緒に着替える事も出来ませんし、全てにおいて問題が出てきます。
やはりこのお話はムリがあると思います。」

「いや、もし水谷さんが入部してくれるなら、専用の部室をすぐに設けるから。
もういつでも着手出来るように準備は済んでる。」


「いえ、あくまでもそうなったときのお話をしただけで、ワタシの気持ちは変わりません。

失礼します。」

優里は立ち上がり、一礼してその場を去っていった。



「うーん…

やはり難しそうですね、理事長」

秋山校長は首を傾げながら西岡に言った。


「水谷優里君か

なかなか聡明な生徒じゃないか
あの歳であそこまでの事を言えるなんて大したもんだ。

益々気に入ったよ。」

西岡は意味ありげな笑みを浮かべながら頷いた。
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