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フロイライン

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呼び出し

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「水谷さん、ちょっと来てくれる?」 


教室で帰ろうとしてい優里に、担任の森脇恭子が呼びにきて声をかけた。

「えっ?」

「ちょっとね、校長先生があなたに話があるって言うから」  


「ワタシに?ですか…」

イヤな予感しかしなかった。


仕方なく優里は鞄を机に置き、校長室に行った。


「失礼します。」

優里が入室すると、そこには秋山校長と、西岡理事長、野球部監督と村上までが揃っていた。


「やあ、すまないねー呼び出してしまって。」

頭が禿げ上がり、よく太った秋山校長は、立ち上がって笑みを浮かべると、優里にソファーに座るように指示した。

「何かご用ですか?」

優里はそこにいる面子を見て、何故自分が呼ばれたかはっきりとわかり、少々苛ついた口調で言った。

「まあまあ。ちょっと村上監督からお話があるようだから聞いてくれるかね」

「…」

「水谷さん

男子公式野球部の村上です。
この度は女子の大会に出場出来なくて本当に残念でした。」

「いえ、それはもう自分の中で吹っ切れてますし、大丈夫です。」


「そうですか。

水谷さんの野球への才能と情熱をこのまま埋もれさせるのは僕も惜しいと思ってましてね

どうでしょうか。
その思いを男子の野球部でぶつけてみませんか」


やはり、そうきたか…
優里はため息をつきそうになったが、目上の大人三人の前ではさすがに失礼だと翻意し、ぐっと我慢した。

「その事については何回か友人からも誘われましたが、お断りしました。
もうワタシは野球には何の未練もありませんから」


「友人…

ああ、富田君の事だね」

横から理事長の西岡が口を挟んできた。

「はい」

優里は西岡の方に視線を向け、頷いた。


「富田君はね、そうそう
水谷さん、あなたが性転換をしてウチに転校するって話になった時、たまたま彼の事を知ってね 

いやあ、すごいよね
富田君も水谷さん、あなたに劣らない才能の持ち主だ。

なんで強豪校に入らずに丸和なんてところに行ったんだろうね」

「それは…」

「知ってますよ。
中学のとき、水谷さんと対戦してその投球に衝撃を受け、一緒の学校で野球をしたくなったとか」

「…」

「多分彼は思ったんでしょうね。
あなたと自分が揃えば、たとえ弱小校でも甲子園に行けるかもしれないと」

「…」

「まあ、そんな話はどうでも良かった。

ただね、彼をウチの学校に誘ったのは私なんだよ。」

「えっ」

「いやね、私の経営する会社の取引先で富田君の父親が働いてる事を知ってね
私がヘッドハンティングしてウチの会社に来てもらったんだ。
まあ、前の学校よりも遠かったし、ここの近くに引越しする面倒も見させてもらったんだ。」

「そんなことを…」

優里は愕然とした。
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