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絆
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「すみれ、久しぶりに投げたらすごく楽しかったよ。
今日は呼んでくれてありがとう。」
優里はすみれに謝意を表し、皆に挨拶をした。
すみれは複雑な思いでその後ろ姿を見つめるだけだった。
優里は歩きながら、練習を続ける元チームメイト達にネット越しに視線を送り、思いを巡らせていた
自分はやはり野球が好きなんだ
そう自覚せざるを得ない。
でも、短期間で予想以上に劣化している…
性転換手術を受けた体でも高いレベルを維持できたのは、気持ちを張り詰めていたからだ。
だから…これで、よかったのだ…
野球を諦める決心もついた
ひょっとしたらすみれは自分を諦めさせるためにここに呼んだのかもしれない。
優里は達観した思いで、その場を立ち去ろうとしたが、思わず足を止めてしまった。
「水谷 」
目の前に富田大輔が立っていたからである。
「大輔…」
「聞いたよ。
大会に出場出来なくなったらしいな。」
「うん。
だから、もう野球はキッパリと諦めた。」
「いや、やっぱりお前は俺とバッテリーを組む運命にあったんだよ。
なあ、もう一回お前の球を捕らせてくれよ。」
「バカ言わないで。
何でワタシが今さら男子野球部に入らなくちゃならないのよ。
それに、さっき久しぶりにボールを投げてみたけど、全然球速が出てなかったわ」
「ああ、見てたぜ。
そりゃ、お前太りすぎなんじゃねえか?」
「太ったんじゃないわ。
女性ホルモンのせいで、筋肉が落ちて皮下脂肪が付いたのよ。」
「そうだな。
たしかにお前の今の体つきは女みたいだもんな。」
「女みたい…って、カチンとくることばかり言うわね」
「ごめん!
俺、昔から空気読めない発言が多いって注意されてきたんだ。
反省するよ」
「もういいよ
行っていいかな?」
「ダメダメ
とにかくさあ、俺とバッテリー組もうよ、もう一度。
このままだと、一生後悔するぜ。
もうすぐ地区予選も始まるしよ、これが最後のタイミングなんだ。
水谷、頼むよ。」
「だから無理だって言ってんじゃん」
「じゃあこれだけは聞かせてくれ
水谷はもう野球が嫌いになったのか?」
「…」
優里は暫く押し黙っていたが、少し涙目になり
「嫌いになるわけないじゃん!
好きだよ、好きに決まってんじゃん!
でも、もうどうしようもないのよ」
と、強い口調で言うと、そのまま立ち去っていった。
大輔は優里の泣き顔にショックを受け、その場に立ち尽くした。
「富田、説得に失敗したようだな」
「監督…」
大輔の背後から監督の村上が顔を覗かせ、呟くように言った。
「まあ、仕方ない
後は俺と理事長に任せろ。」
「任せろって…
何とかなりそうなんですか?」
「いや、多分難しいだろうが、理事長は何故か自信満々だ。
任せるしかないだろう。
それよりも、お前も腕が鈍ってるだろう?
早く練習に行きなさい。」
「はい。」
大輔は一礼すると、男子硬式野球部のグランドがある方向に駆けていった。
今日は呼んでくれてありがとう。」
優里はすみれに謝意を表し、皆に挨拶をした。
すみれは複雑な思いでその後ろ姿を見つめるだけだった。
優里は歩きながら、練習を続ける元チームメイト達にネット越しに視線を送り、思いを巡らせていた
自分はやはり野球が好きなんだ
そう自覚せざるを得ない。
でも、短期間で予想以上に劣化している…
性転換手術を受けた体でも高いレベルを維持できたのは、気持ちを張り詰めていたからだ。
だから…これで、よかったのだ…
野球を諦める決心もついた
ひょっとしたらすみれは自分を諦めさせるためにここに呼んだのかもしれない。
優里は達観した思いで、その場を立ち去ろうとしたが、思わず足を止めてしまった。
「水谷 」
目の前に富田大輔が立っていたからである。
「大輔…」
「聞いたよ。
大会に出場出来なくなったらしいな。」
「うん。
だから、もう野球はキッパリと諦めた。」
「いや、やっぱりお前は俺とバッテリーを組む運命にあったんだよ。
なあ、もう一回お前の球を捕らせてくれよ。」
「バカ言わないで。
何でワタシが今さら男子野球部に入らなくちゃならないのよ。
それに、さっき久しぶりにボールを投げてみたけど、全然球速が出てなかったわ」
「ああ、見てたぜ。
そりゃ、お前太りすぎなんじゃねえか?」
「太ったんじゃないわ。
女性ホルモンのせいで、筋肉が落ちて皮下脂肪が付いたのよ。」
「そうだな。
たしかにお前の今の体つきは女みたいだもんな。」
「女みたい…って、カチンとくることばかり言うわね」
「ごめん!
俺、昔から空気読めない発言が多いって注意されてきたんだ。
反省するよ」
「もういいよ
行っていいかな?」
「ダメダメ
とにかくさあ、俺とバッテリー組もうよ、もう一度。
このままだと、一生後悔するぜ。
もうすぐ地区予選も始まるしよ、これが最後のタイミングなんだ。
水谷、頼むよ。」
「だから無理だって言ってんじゃん」
「じゃあこれだけは聞かせてくれ
水谷はもう野球が嫌いになったのか?」
「…」
優里は暫く押し黙っていたが、少し涙目になり
「嫌いになるわけないじゃん!
好きだよ、好きに決まってんじゃん!
でも、もうどうしようもないのよ」
と、強い口調で言うと、そのまま立ち去っていった。
大輔は優里の泣き顔にショックを受け、その場に立ち尽くした。
「富田、説得に失敗したようだな」
「監督…」
大輔の背後から監督の村上が顔を覗かせ、呟くように言った。
「まあ、仕方ない
後は俺と理事長に任せろ。」
「任せろって…
何とかなりそうなんですか?」
「いや、多分難しいだろうが、理事長は何故か自信満々だ。
任せるしかないだろう。
それよりも、お前も腕が鈍ってるだろう?
早く練習に行きなさい。」
「はい。」
大輔は一礼すると、男子硬式野球部のグランドがある方向に駆けていった。
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