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野望
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「どうしてだ!
なんで水谷君が出場出来ないんだよ!」
理事長の西岡は監督の小林に激しく詰め寄った。
「理事長、連盟がそう判断した以上、我々に出来る事はもう何もありません。
ここは残念ですが、諦めるしかないんです。」
「もう体も完全に女性になってるのに、何がダメなんだ。
水谷君抜きで大会で勝てるのかね?」
「いえ、メンバー的には去年から大した上積みはありません。
組み合わせ如何に関わらず、勝つ事は容易ではありません。
勝負事ですのでやってみなければわかりませんが。」
「小林君」
「はい?」
「水谷君を女性として認めなかったということは、彼女はまだ男性だという認識だっていうことだね?」
「連盟はそう考えたのでしょう。」
「だったら、男子として登録し直して男子野球部からの出場は可能だということだね?」
「理論上はそうでしょう」
「そうか…」
「ですが、理事長
水谷優里は男子で野球をしていた頃、凄まじいボールを投げ、全国でも充分通用…いや、全国優勝出来るだけの実力を持ち合わせていたのは間違いないです。
しかし、今の水谷は、性転換手術を行ない、長期間のホルモン治療で、体力、筋力共に著しく低下し、女子では充分に通用しますが、男子としては多分…厳しいものがあると思います。
理事長がどうお考えなのかはわかりませんが、もし、彼女を男子野球部に入れようとしているのなら、やめられた方がよろしいと思います。
彼女をまた傷つける結果になりかねませんからね。」
「わかっている。
本人の意思っていうのもあるから、そこは無理強いはしないつもりさ。
だが、野球に思いを残したままでいるなら、それも一つの方法、救済だと思うがね。」
西岡は何かに思いを馳せるように、遠くに視線をやりながら、独り言のように呟いた
なんで水谷君が出場出来ないんだよ!」
理事長の西岡は監督の小林に激しく詰め寄った。
「理事長、連盟がそう判断した以上、我々に出来る事はもう何もありません。
ここは残念ですが、諦めるしかないんです。」
「もう体も完全に女性になってるのに、何がダメなんだ。
水谷君抜きで大会で勝てるのかね?」
「いえ、メンバー的には去年から大した上積みはありません。
組み合わせ如何に関わらず、勝つ事は容易ではありません。
勝負事ですのでやってみなければわかりませんが。」
「小林君」
「はい?」
「水谷君を女性として認めなかったということは、彼女はまだ男性だという認識だっていうことだね?」
「連盟はそう考えたのでしょう。」
「だったら、男子として登録し直して男子野球部からの出場は可能だということだね?」
「理論上はそうでしょう」
「そうか…」
「ですが、理事長
水谷優里は男子で野球をしていた頃、凄まじいボールを投げ、全国でも充分通用…いや、全国優勝出来るだけの実力を持ち合わせていたのは間違いないです。
しかし、今の水谷は、性転換手術を行ない、長期間のホルモン治療で、体力、筋力共に著しく低下し、女子では充分に通用しますが、男子としては多分…厳しいものがあると思います。
理事長がどうお考えなのかはわかりませんが、もし、彼女を男子野球部に入れようとしているのなら、やめられた方がよろしいと思います。
彼女をまた傷つける結果になりかねませんからね。」
「わかっている。
本人の意思っていうのもあるから、そこは無理強いはしないつもりさ。
だが、野球に思いを残したままでいるなら、それも一つの方法、救済だと思うがね。」
西岡は何かに思いを馳せるように、遠くに視線をやりながら、独り言のように呟いた
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