Two seam

フロイライン

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二学期

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丸和高校野球部は三年が引退し、新チームが発足した。

大輔を中心としたチーム編成へと移行し、日々の練習に明け暮れる日々が続いた。

だが、対外試合を全て禁止されていた為、部内練習のみとなり、秋季大会への影響が心配されていた。


部を辞めた優里は、既に女性ホルモンの投与を行っており、徐々にではあるが心身に変化をもたらしつつあった。

そんな事になっているのを全く知らない大輔は、ほぼ毎日、優里の野球部復帰をはたらきかけ、休み時間になると優里のクラスにやってきた。


「大輔、何回言われてもムリだから。

もう野球はやらないよ」


「って言われて諦めるオレじゃねえよ。
なあ、考え直してくれよ。

ほら、秋季大会の地区予選からやっと試合が出来るんだよ。
お前がいたら絶対良いところまでいけるって。」

「ホントに申し訳ないんだけど、その気はさらさらないから。」

優里はそんな大輔に対し、素っ気ない態度を取り続けた。

諦めの悪い大輔は、ついに優里の自宅まで押しかけて説得を試みた。

優里はどうしようかと迷ったが、大輔に本当の事を告白したのだった。


心の性とカラダの性

性同一性障害

ホルモン治療に性適合手術

大輔にとって、まったく縁もゆかりもないものをわかりやすく、丁寧に話す優里

全てを話し終えると、優里は大輔の方を向き、いつもとは違う女性的な口調でこう締めた。

「大輔、今言った通り、ワタシ、ずっと自分が男だっていうことに違和感をもって生きてきたの。

でも、小さい頃に始めた野球は好きだったし、高校一年までは続けるつもりだったのよ。
それが、あんな事があって夏の大会に出られなくなり、もう野球を続ける意味がワタシの中で無くなってしまったのよ。

これからは自分の生きたい性で生きる事にするの。

だからもう諦めて。お願い」

大輔は予想だにしない方向からの話に驚き、返す言葉がなく…すごすごと帰っていった。


その後はもう大輔は優里のところに来なくなった。

優里もホルモン治療の副作用がキツく、学校を休む事が多くなり、一年の終わりには念願の性適合手術を行い、長期間休み、そのまま転校してしまったのである。

もう二度と接点をもたないと思われていた優里と大輔だったが
優里を追って大輔が転校してきたことで、事態は大きく動こうとしていた。

いや、本来ならすっかり変わってしまった優里の姿を見て、諦めるはずが、それでも大輔の意思は固く、揺るがなかったからだ。
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