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本性
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学校が所有する駐車場に、母が車を停めて待っているのに気付いた優里は、小走りで駆け寄った。
「ごめん、待った?」
車の後部座席に座りながら話しかける優里に、母の千春は首を横に振った。
「今来たところよ。
一回戦突破おめでとう。」
「まあ、なんとかね。
でも、あの陽射し、どうにかならないかなあ。
日焼け止めなんて効きやしないし。」
「そんなの仕方ないじゃない。優里が選んだ道でしょ?」
「まあ、そうだけど。
野球は好きだけど、それに付随する事はどれも好きになれない。」
「とにかく頑張りなさい。」
「はーい。」
千春は毎日、優里を車で迎えに来ている。
こういった試合のときだけではなく、普段から1日も欠かさずに、だ。
事情がわかっているからこその行動なのだが、なかなか出来る事ではなく、優里はそんな母に心から感謝した。
三十分かけて家に着くと、優里はすぐにシャワーを浴びた。
本当は一刻も早くシャワーを浴びたいのだが、チームメイトと一緒に入るわけにはいかず、このようなルーティンになるのは致し方なかった。
「なんか食べる?」
「ううん。いいわ」
シャワーから出た優里はソファーに腰掛け、ホッと一息ついた。
「2回戦はいつなの?」
「えっと、あれ?いつだったっけ」
「あんた、相変わらずねえ。」
「まあ、いつ試合するとか相手だとか一々考えても仕方ないじゃん。」
「そりゃそうだけど。
あ、明日は病院よ。」
「あー、そうだった。
カウンセリングの日だね。
18になるまで手術も出来ないし、戸籍の変更もムリだから、高校生活は全部野球に打ち込むわ。
お母さんもそれは了解してくれてるのよね?」
「うん。心配な事はあるけど、優里の人生だし
好きにすればいいよ。病院の先生から私も話を色々聞いて、少しは理解できたからね。」
「ありがとう」
優里は千春に感謝の言葉を述べ、テーブルに置かれたスポーツドリンクを飲もうとした、その瞬間
携帯のLINE電話の呼び出し音が鳴ったのである。
「ん?なんだ、大輔か…」
優里は画面を見つめると、画面をタップし、携帯を耳にあてた。
「もしもし、うん。大丈夫だよ
どうしたの?」
しばらく大輔の話を黙って聞いていた優里だったが、思わず
「えーっ!」
と、大きな声を上げてしまった。
キッチンで夕食の支度をしていた千春は、何事かと、優里の方に視線を送った。
「ごめん、待った?」
車の後部座席に座りながら話しかける優里に、母の千春は首を横に振った。
「今来たところよ。
一回戦突破おめでとう。」
「まあ、なんとかね。
でも、あの陽射し、どうにかならないかなあ。
日焼け止めなんて効きやしないし。」
「そんなの仕方ないじゃない。優里が選んだ道でしょ?」
「まあ、そうだけど。
野球は好きだけど、それに付随する事はどれも好きになれない。」
「とにかく頑張りなさい。」
「はーい。」
千春は毎日、優里を車で迎えに来ている。
こういった試合のときだけではなく、普段から1日も欠かさずに、だ。
事情がわかっているからこその行動なのだが、なかなか出来る事ではなく、優里はそんな母に心から感謝した。
三十分かけて家に着くと、優里はすぐにシャワーを浴びた。
本当は一刻も早くシャワーを浴びたいのだが、チームメイトと一緒に入るわけにはいかず、このようなルーティンになるのは致し方なかった。
「なんか食べる?」
「ううん。いいわ」
シャワーから出た優里はソファーに腰掛け、ホッと一息ついた。
「2回戦はいつなの?」
「えっと、あれ?いつだったっけ」
「あんた、相変わらずねえ。」
「まあ、いつ試合するとか相手だとか一々考えても仕方ないじゃん。」
「そりゃそうだけど。
あ、明日は病院よ。」
「あー、そうだった。
カウンセリングの日だね。
18になるまで手術も出来ないし、戸籍の変更もムリだから、高校生活は全部野球に打ち込むわ。
お母さんもそれは了解してくれてるのよね?」
「うん。心配な事はあるけど、優里の人生だし
好きにすればいいよ。病院の先生から私も話を色々聞いて、少しは理解できたからね。」
「ありがとう」
優里は千春に感謝の言葉を述べ、テーブルに置かれたスポーツドリンクを飲もうとした、その瞬間
携帯のLINE電話の呼び出し音が鳴ったのである。
「ん?なんだ、大輔か…」
優里は画面を見つめると、画面をタップし、携帯を耳にあてた。
「もしもし、うん。大丈夫だよ
どうしたの?」
しばらく大輔の話を黙って聞いていた優里だったが、思わず
「えーっ!」
と、大きな声を上げてしまった。
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