Two seam

フロイライン

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パーフェクトゲーム

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一回の裏、丸和の攻撃は、制球の定まらない墨吉の二年生投手の冨樫を捉え、一番、二番が連続ヒットで出塁。

ノーアウト一塁三塁で、三番バッターの優里を迎えた。


「中里さん、水谷君のバッティングはどうなんです?」

「中学時代は良かったみたいですよ。この打席、楽しみです。」

優里はネクストバッターズサークルでヘルメットを取り、額から滴る汗をハンカチで拭くと、再びヘルメットを被り直し、バッターボックスに向かった。

「おっ、雰囲気あるねえ」

今津は優里の構えを見て、嬉しそうに呟いた。


当然、マウンド上の冨樫もキャッチャーの大竹も嫌な予感がしており、一球目は外角に外す選択をした。

二塁ランナーを目で牽制しつつ、冨樫はセットポジションから、大竹の要求する外角にストレートを投げ込んだ。

もう少し外しても良いと思ったが、ボールゾーンには行っていたので、想定通りのコースに投げられた。

だが、優里は大きく踏み込み、外角に投じられたボール球に、おっつけるようにしてライト線に流し打った。

「上手い!」

中里は思わず、感嘆の声を上げた。

ファーストの頭上を越えた打球は、勢いが落ちる事なくライトフェンスに達し、クッションボールを処理したライトの飯田は、二者に生還されるのを見ながら、ゆっくりと内野に返球したのだった。

優里は悠々と二塁ベースに到達し、自軍のベンチの方を見て、右手を上げた。

「ピッチングもバッティングも中学を卒業したてとは思えない技術力だね。」

「今津さん、次ですよ次」

中里はバッターボックスに入る大輔を指差して言った。

「おー、富田君ね。
彼もすごいんでしょ?」

「バッティングでは富田君でしょうね。
丸和とはいえ、一年生で四番を任されるんだから。

それに、墨吉のピッチャーの冨樫君、球種はストレートとカーブのみで、ストレートも速くないから緩急がつけられない。
打ちごろの球を投げてますよね。」


大輔は落ち着いた表情で右打席に入った。
足元の土をならすと、ピッチャー方向にバットを掲げ
気合の入った表情で構えに入った。

その大きなフォームは、内角に穴がありそうであった。

少なくとも墨吉バッテリーにはそう感じるものがあった。
だが、一歩間違えれば大事故になる事と、冨樫に内角ギリギリを投げ込む技術がなかった事が、二人を躊躇させた。

キャッチャーの大竹は、思案した挙げ句、初球でカウントを稼ぎたい欲求を抑え、外角に外れる球を要求した。

冨樫も頷き、二塁ランナーの優里に視線を送ると、すぐさま大輔の方を向き、素早いフォームでストレートを投げ込んだ。

球はホームベースから二個分ほど離れたラインを通り、康太のグラブに収まった。

勿論、球審の判定はボールだ。

次のサインも外角寄りの球、今度はカーブを要求した。

だが、今度はボール一個半分、甘く入ってしまった。

大輔の方もストレート待ちだった為、タイミングがずれたが、出かかったバットをほんの一瞬だけ止め、そこから鋭く振り込んだ。

金属バットの高い音がグランドに響き渡った。

レフトは一旦追う構えを見せたが、自身の遙か上を通過する球を見上げ、すぐに諦めてしまった。

ツーランホームラン。

脅威の一年生バッテリーは、一回の攻撃で4点をもぎ取ったのだった。


「すげえな。あの打球

よく百年に一度の怪物とか表現されるけど、丸和の一年生コンビ、ホント化け物だわ。」

今津は新たなるスターの誕生に歓喜した。

「冨樫君と水谷君でTMコンビですね。」

中里も同調した。
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