Two seam

フロイライン

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翌日、他の部員達にも優里はカミングアウトをし、部員達は一様に驚いたが、すみれのフォローもあって皆理解を示してくれた。

ただ、優里にエースの座を奪われた二年生の中村まどかだけは、複雑な表情を浮かべ、何も言葉を発せず、視線を下に落とした。

弱小どころかレギュラーメンバーさえ集められずに苦労していた咲聖にとって、まどかはまさに救世主だった。

いちばん重要な投手というポジションであったのは勿論、実力もあった。

すみれと同じように小学生のときは男子に混じって野球をし、中学時代はソフトボールに転向していたが、高校入学と同時に硬式野球をすることを決意した。

野球の基本はセンターラインである。
バッテリーにニ遊間からセンターがしっかりしていれば、なんとか戦える。

すみれも小林もその活躍に期待した。

だが、一年生時にはまだ体も出来ていないのと、ソフトの癖が抜けきれていないこともあり、思ったようなパフォーマンスを示すことが出来ず、夏の大会では初戦敗退の憂き目を見る事となった。

それでも、新チーム発足と共に気合を入れ直し、練習を励むまどかの前に突如現れたのが優里だった。

圧倒的な投球を見せられたまどかは、あっさりと負けを認め、控えに甘んじる事もやむなしとした。

しかし、今、優里の秘密を知ってしまった。

性転換手術をして女性の体になっているとはいえ、優里は元男子だったのだ。

これで納得しろという方がおかしい。

まどかは腑に落ちない思いに包まれながら、優里の話を聞いていた。

優里のカミングアウトのあと、監督の小林が引き続き話を始めた。

「今聞いた通り、水谷は生まれた時は男の子だったんだが、心は女性で、ずっと苦しんできた。

そして、高一のときに死ぬような思いをしながら性転換手術を行い、女性の体を手に入れたんだ。

人によっては、元々男の体してたんだからいくら手術をしても、アドバンテージがあってズルイじゃないかって言うかもしれん。

しかし、手術やその後のホルモン治療は健康を害したり体力や筋力を失わせたり、マイナスになる事の方が多い。
だから、我々だけはそれを理解して、一緒に頑張っていこうと思う。

分かってくれるか?」


「はい!」

皆、大きな声で返事をし、まどかも勿論そのうちの一人として頷いた。

優里は申し訳なさげに頭を下げた。
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