Two seam

フロイライン

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揺れる想い

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「すみれ、ワタシ‥前々から言わなきゃって思ってたことがあって。」

学校から駅に向かう道の途中、優里は神妙な面持ちで話しかけた。

「えっ、どうしたの?」

「ワタシ、実は元々は男の子なの。」

「??」

「テレビとかネットで見た事ない?
体と心の性が一致しない人の‥」

「あ、あー、ある。あるよ、見たこと」

「ワタシがまさにそれなの。男として生まれてきたんだけど、物心ついた時から性自認は女で‥

高校1年の時に手術を受けて、男性から女性に性別を移行させたの。」

「‥えっ、そうなの?」

すみれは気の利いた言葉を返そうと頭を目一杯回転させたが、優里の話の内容に動揺し、何も出てこなかった。

「練習をよく休んじゃうのは、手術の後遺症とか定期的に女性ホルモンの注射を打たなくちゃならないからで‥

ごめんなさい。

隠すつもりはなかったんだけど、なんか言いづらくて‥」

「ううん。そんなのは‥全然

この事は監督は知ってるの?」

「うん。知ってる‥

元々ワタシを咲聖に転入するように勧めてくれたのは小林監督なの。

男子の時に入ってた野球部の監督と先輩後輩の仲らしくて、ワタシの事をお願いされたみたい。」

「そっか。
言いにくい話を話してくれてありがとう。

私は優里のこと、女の子だって思ってるし、この話を聞いても何も変わらないよ。」

「ありがとう、すみれ」

優里は涙ぐみながら俯いた。

「優里と出会えて嬉しいよ。
こんなスゴイ人と日本一を狙えるんだからね。」

「性転換してから体がしんどい日もあったりするんだけど、とにかく頑張るからね。」

「無理はしないでね。
ところで、私らや学校は良いとして、連盟は優里が女子として大会に出ることを認めてくれるのかな」

「うん。二名以上の医師に診断もされてるし、性転換手術も済んでるから、戸籍の性別変更も問題なくされるはず。
でも、法律では18歳にならないと申請出来ないから、ネックとなるのはそこだけ。

小林監督や学校とも相談して、嘆願書みたいなのを作ってもらってるところなの。」

「じゃあ、大丈夫だね。

さあ、この話はもう終わりにしよう。
明日から練習のピッチ上げてくよ」

すみれはニコッと笑った。
優里ほど美しくはないが、ショートボブに童顔といういかにも学生スポーツをしている少女といったその風貌は、とても可愛く、優里はすみれの顔が大好きだった。
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