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フロイライン

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新星

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「おはよう」

出勤してきた坂本が声をかけると、事務局長の堀田は明るい声で挨拶を返した。

「おはようございます!会長

昨日の報道スタリオン、見ましたか?」

「見たよ。見たに決まってるじゃないか。」

「スゴイですね、水谷‥優里さんだったけかな
あんな投手が咲聖学園にいたなんて。」

「ああ。三年生だろ?
あの子が一年生から出てたら咲聖は文句なしで全国優勝してるだろ。」

「ですよね。咲聖なんていつも初戦敗退してますもんね。」

「まあ、どちらにしても今年の大会はかつてないほどに盛りあがるのは必至だな。

連盟を一人で立ち上げて、女子に硬式野球をやらせてあげたいという思いで頑張られた四津先生もきっと天国で喜んでおられるよ。」

坂本は椅子に腰掛けると、何か思いに耽るような表情を浮かべ窓の外に視線を送った。






「優里、また取材だって。」

登校するなり、優里はバッテリーを組む木山すみれから声をかけられた。

「もういいよ。練習に集中できないよ」

優里は浮かない顔をしながら練習用ユニフォームに袖を通した。

「しょうがないよ。優里みたいに速いボールを投げる選手がこれまでいなかったんだもん。それに可愛いからね、優里は」

たしかに優里は美少女と呼ぶに相応しいルックスをしていた。
女子としては高いといえる170センチの身長に、クリっとした瞳に通った鼻筋。肌は日焼けしてはいるが、透明感があってきめ細かで美しい。
すみれもたまに見惚れてしまうことがあるほどだ。



「私さあ、調べてみたんだけど、女子の最高球速は137キロなんだって。」

「あ、そう。」

「優里、147キロ出したもんね!世界記録を10キロも上回ってるし!」

「別に大したことないよ。それに、知ってるでしょ?すみれは。」

「まあ、そうだけど‥とにかくスゴイって!」

グランドに行くと、既に監督の小林が自らトンボをかけていた。
咲聖学園女子硬式野球部監督の小林裕之は今年で39才。
痩せ型でよく日焼けした顔に細い目が妙にマッチしていた。
監督業の他に体育の教師もしており、忙しい毎日を送っている。

「監督、おはようございます!」

「おう、おはよう。
新聞2社と地元の情報番組のレポーターが後で取材に来るから、水谷と木山のバッテリーで対応してくれ。」

「監督、それよりも例の件は?」

優里が質問すると、小林は頷いた。

「書類は送付したよ。まあ心配すんな」

優里も小林の言葉にまた頷き、ウォーミングアップを始めた。
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