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ガラム島に居た男
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どの国にも諜報機関は存在するし、領主が独自に育成しているケースもある。そしてゼルダンシア帝国の情報部は、組織表には記されていない秘密機関を持っていた。
その秘密機関に所属する男、コードネーム名ダームは自分の優秀さを恨んでいた。
「ったく。まさかあんな施設を見つけてしまうなんてね……!」
ダームはフォルトガラム聖武国に潜入していた。同国における近年の陸軍拡大や主だった貴族の情報を収集し、それを本国に送るのが主任務だ。
少し前まではフォルトガラム聖武国にも幾人かの同僚が潜入していたが、数日前に帰還命令が出たため、既に全員出国していた。だがダームはある日、物資の流れから地図上で不審な地点を特定する。
(なんだ……この先は未開拓の森と馬鹿でかい湖があるのみ。だが確かに領主は物資を輸送している。一体何故……?)
ダームは1人ガラム島に残り、調査を行う。そしてその森の中でとある施設を見つけてしまった。
その施設に潜入し、多くの情報を得たのだが、そのどれもが信じられないものであった。そして潜入がばれて死を覚悟したのだが、その時に出会った1人の少女に匿われる。
施設からどうにか脱出し、その少女の手を握って森を駆け抜ける。その少女にお願いされたのだ。自分をここから逃がして欲しいと。このままでは自分も、人を殺さなければならなくなるからと。
帝都に同じ年頃の娘がいるダームは、少女の願いを聞く事にした。何より貴重な情報源でもあるのだ。帝国としても保護対象となる。
「ミニリス。水飲むか?」
「……ありがとう、おじさん」
「まだ若いつもりなんだがなぁ。いや、12才になる娘もいるし十分おじさんか」
森を抜け、2人は街を避けて南下する。港で適当な船に密航し、大陸に渡るつもりだったが、どうやってミニリスも連れていくかダームは頭を悩ませていた。
「ま、着いてから考えりゃいいか」
「……おじさん?」
「ああ、いや。何でもないよ。ミニリスには命を救われたからな! 安心しろ、このまま安全な場所まで連れていってやる!」
そして再びミニリスの手を引いて歩き始める。道すがらダームは不思議に思っていた事を聞いていた。
「なぁミニリス。お前たちが見せたあの力……あれはなんだ? 古に存在したという魔法なのか?」
「……分からない。私たちはあそこで生まれたし、この力も物心ついたと時には持っていたもの。……でも、お母さまが言っていたの」
「……お母さま?」
「うん。私たちは幻霊の因子を持った特別な子供。お母さまの娘、そして息子だって」
ダームはその施設で、子供たちが摩訶不思議な力を発現させているのを目撃していた。
もしかしたらフォルトガラム聖武国が抱える秘密研究所なのかもしれない。だが国がどこまで関わっているのかも定かではなく、確定的な情報は得られずにいた。
(……いや。国がやるにしてはへんぴな場所だし、施設の作りもどこか安っぽかった。領主が独自に何か研究してやがるのか……? どちらにせよ良い感じはしねぇな)
そこでは多くの少年少女たちが存在していた。だがその多くの者は目が死んでおり、実際に死んでいる者もいたのだ。
幼い子供を使った何かしらの実験をしているのは間違いない。そしてそれは他国とはいえ、決して良い気分になれるものではなかった。
「お母さまってのはどんな奴なんだ?」
「お母さまは……」
「……っ!」
ミニリスが何か言いかけたところで、ダームはその小さな身体を抱きかかえて真横へと跳ぶ。一瞬後、ダームたちが立っていた場所に複数の矢が飛んできた。
「ほう……よく躱したな。気配は消していたのだが」
「……! 追手かい……!」
気付けば周囲を複数の男たちによって取り囲まれていた。リーダー格の男は配下に指示を出す。
「矢はもう使うな。子供を盾に使われたら厄介だ」
「おじさん……!」
「くそ……!」
ダームも相応の訓練を受けた者だし、秘密機関に所属して随分経つ。だからこそ分かる。
自分たちを囲む者たちも相当な訓練を受けており、この状況から生き残れる確立は限りなくゼロに近いと。その脳裏に妻と娘の顔がよぎる。
「ったく……! この仕事を最後に、配置換えの希望を出そうと思っていたのによ……!」
「情報の照合、完了しました。対象の名はミニリス。タイプは顕者、幻霊クラスは2です」
「タイプ顕者のクラス2か……。最悪、死んでも構わんな。だが極力傷はつけるなよ」
「はっ」
徐々にその包囲を絞っていく。ダームは覚悟を決め、懐から短剣を取り出した。
「……悪いな、ミニリス。どうやら約束を果たせなさそうだ」
「おじさん……私……」
「ま、みっともなくても最後まであがかせてもらうがな……!」
ここを死地と定め、その瞳に覚悟の色を灯す。こうなった獲物は手ごわいと知る追手は、慎重な足取りで距離を詰める。そして。
「おいおい。久しぶりに戻ってきたら、とんでもない現場に出くわしたな。あんたら、寄ってたかってその子に何の用だ?」
「っ!?」
さらに響く第三の声。その声の主はダームたちの背後から届いた。
全員の視線がそこに集まる。そこには大斧を背負った男が立っていた。
「……一人か。我らに気付かれずにここまで近づけた腕は買うが。見られたからには生かしておく訳にはいかん。義侠心から姿を見せたこと、後悔するんだな」
「……はっ、義侠心ねぇ。確かにそんな気持ちがない訳でもないが、今さら格好付けるつもりもねぇよ。という訳でここはシンプルにいこうぜ。ここで去るなら追わない。去らないなら……分かるだろ?」
男は挑発する様な笑みを浮かべる。だが追手は男と会話をする気はなく、黙って指でサインを送った。その瞬間、複数の男たちが新たに現れた男に襲い掛かる。
(何者かは分からんが、警戒に値するのは確かだ。それに武装もしている。先にこちらを片付け、その後にミニリスたちを……)
今後の展開に思考を割く。しかし。
「かぁあっ!」
男は背に背負う大斧を取り出すと、目にも止まらぬ速度で真横に振るう。武器の重量を考えると、それは人では不可能な動きだった。
「…………!?」
その一振りは周囲に突風を巻き起こす。男に斬りかかった者たちは全員、身体が二つに裂けていた。
「ミニリス!」
そしてその光景を見たダームは、驚くよりも早く冷静に状況を判断する。
一瞬で追手が複数人死んだ事で包囲に穴が空いたのだ。ダームはその一瞬の隙を見逃さず、ミニリスを抱いて即座に移動する。
「お、追え!」
「させねぇって!」
だが大斧を持つ男の動きも速かった。彼はその場から想像を上回る速度で移動し、次々と追手たちを両断していく。
(ばかな……! な、なんだ、あの男は……! 何故あんな馬鹿でかい斧を持ってあれほどの速さで走れる!? 何故あれほど自由自在に振り回せる!? なんなのだ、あの男は……!)
こうしている間も配下たちが次々と殺されていく。大斧を振るう男と自分たちでは、あまりに実力に差があり過ぎた。
おそらくあと数秒もすれば、この場から離脱する事も不可能になるだろう。そう考え、男は撤退の合図を出す。
「お……逃げんのか。まぁ追いやしねぇがな」
追手たちは完全にその場を離脱した。ダームは今さらながらに状況を整理する。
(助かった……で良いんだよな? しかしこの男は一体……)
結果を見れば自分は無事、ミニリスも怪我一つ負っていない。そして目の前には人の限界を超えた動きを見せた、謎の男。だがその男は斧を背に背負いなおした。
「無事かい?」
「……ああ、助かったよ。えーと……」
「ベインだ」
「ベイン。俺はダーム、この子はミニリス。いや、今回ばかりはもう駄目かと思ったよ。故郷の嫁さんと子供にもう会えなくなるんじゃないかってね」
3人は一旦その場を離れる。道すがらダームは事情を話していた。万が一の時は、ミニリスを託せると考えてのことだ。
「不思議な力を持つ子供を集めた実験施設ねぇ……」
「ああ。俺はそこでミニリスに助けられてな。この子の願いを聞いて、大陸に渡るつもりだ」
かつて帝都地下でハギリと戦い敗れたベインであったが、その命までは奪われていなかった。それだけハギリに余裕があった証左である。
そして信奉していたレクタリアの死を知り、失意のままかつて拠点のあったフォルトガラム聖武国に帰ってきていた。
生まれ故郷も既に存在しない。行くあてもなく、何するでもなく本当に足が向いただけなのだ。
「で、あんたはそんな怪しい施設に何で潜入していたんだ?」
「え……と。はは、参ったな。なんと言うか……」
「ああ、俺はこの国に縁はあるが、別に愛国心に溢れているわけでも何でもない。気にしなくていいぜ。大方、帝国がどこかのスパイだろ?」
ベインがただ者でないのは既に分かっている。それに命を助けられた恩もある。ダームは一度は諦めた命だと考え、正直に頷いた。
「ま、そんなとこだな。このままミニリスを帝都まで連れていってやりたいんだが……見逃してくれるか?」
ベインはミニリスに視線を向ける。だがミニリスはダームの後ろに隠れてしまった。
ついさっき、目の前で多くの人を殺したのだ。幼子にはショッキングな光景だったかと今さらながらに気付いた。
「……良いぜ。ガラム島にいる限り、また追手が来る可能性もある。乗り掛かった舟だ、大陸まで送ってやるよ」
「いいのかい?」
「ああ。こんな島、さっさと出て行こうと思っていたところだ。だが帝都まで一緒に行く気はないからな」
そして3人は島で唯一、対岸のカルガーム領までの船が出ている港へと向かう。
当然、この港町には多くの追手がいるだろう。それにどう船に忍び込むかという問題もある。
だがその時、偶然港には多くの軍船を含む船が並んでおり、一斉に大陸へ向かうところだった。
「どうやら王女様が大勢の使節団を率いて帝都へ向かうらしい。チャンスだ、使節団には雑用で雇われた民間人も多い。そいつらに紛れ込むぞ!」
そのタイミングは本当に偶然であった。かくして3人は上手く使節団の一員扮し、大陸へと渡る。
だがその追手として、幾人かの少年少女が迫っている事を知らなかった。
その秘密機関に所属する男、コードネーム名ダームは自分の優秀さを恨んでいた。
「ったく。まさかあんな施設を見つけてしまうなんてね……!」
ダームはフォルトガラム聖武国に潜入していた。同国における近年の陸軍拡大や主だった貴族の情報を収集し、それを本国に送るのが主任務だ。
少し前まではフォルトガラム聖武国にも幾人かの同僚が潜入していたが、数日前に帰還命令が出たため、既に全員出国していた。だがダームはある日、物資の流れから地図上で不審な地点を特定する。
(なんだ……この先は未開拓の森と馬鹿でかい湖があるのみ。だが確かに領主は物資を輸送している。一体何故……?)
ダームは1人ガラム島に残り、調査を行う。そしてその森の中でとある施設を見つけてしまった。
その施設に潜入し、多くの情報を得たのだが、そのどれもが信じられないものであった。そして潜入がばれて死を覚悟したのだが、その時に出会った1人の少女に匿われる。
施設からどうにか脱出し、その少女の手を握って森を駆け抜ける。その少女にお願いされたのだ。自分をここから逃がして欲しいと。このままでは自分も、人を殺さなければならなくなるからと。
帝都に同じ年頃の娘がいるダームは、少女の願いを聞く事にした。何より貴重な情報源でもあるのだ。帝国としても保護対象となる。
「ミニリス。水飲むか?」
「……ありがとう、おじさん」
「まだ若いつもりなんだがなぁ。いや、12才になる娘もいるし十分おじさんか」
森を抜け、2人は街を避けて南下する。港で適当な船に密航し、大陸に渡るつもりだったが、どうやってミニリスも連れていくかダームは頭を悩ませていた。
「ま、着いてから考えりゃいいか」
「……おじさん?」
「ああ、いや。何でもないよ。ミニリスには命を救われたからな! 安心しろ、このまま安全な場所まで連れていってやる!」
そして再びミニリスの手を引いて歩き始める。道すがらダームは不思議に思っていた事を聞いていた。
「なぁミニリス。お前たちが見せたあの力……あれはなんだ? 古に存在したという魔法なのか?」
「……分からない。私たちはあそこで生まれたし、この力も物心ついたと時には持っていたもの。……でも、お母さまが言っていたの」
「……お母さま?」
「うん。私たちは幻霊の因子を持った特別な子供。お母さまの娘、そして息子だって」
ダームはその施設で、子供たちが摩訶不思議な力を発現させているのを目撃していた。
もしかしたらフォルトガラム聖武国が抱える秘密研究所なのかもしれない。だが国がどこまで関わっているのかも定かではなく、確定的な情報は得られずにいた。
(……いや。国がやるにしてはへんぴな場所だし、施設の作りもどこか安っぽかった。領主が独自に何か研究してやがるのか……? どちらにせよ良い感じはしねぇな)
そこでは多くの少年少女たちが存在していた。だがその多くの者は目が死んでおり、実際に死んでいる者もいたのだ。
幼い子供を使った何かしらの実験をしているのは間違いない。そしてそれは他国とはいえ、決して良い気分になれるものではなかった。
「お母さまってのはどんな奴なんだ?」
「お母さまは……」
「……っ!」
ミニリスが何か言いかけたところで、ダームはその小さな身体を抱きかかえて真横へと跳ぶ。一瞬後、ダームたちが立っていた場所に複数の矢が飛んできた。
「ほう……よく躱したな。気配は消していたのだが」
「……! 追手かい……!」
気付けば周囲を複数の男たちによって取り囲まれていた。リーダー格の男は配下に指示を出す。
「矢はもう使うな。子供を盾に使われたら厄介だ」
「おじさん……!」
「くそ……!」
ダームも相応の訓練を受けた者だし、秘密機関に所属して随分経つ。だからこそ分かる。
自分たちを囲む者たちも相当な訓練を受けており、この状況から生き残れる確立は限りなくゼロに近いと。その脳裏に妻と娘の顔がよぎる。
「ったく……! この仕事を最後に、配置換えの希望を出そうと思っていたのによ……!」
「情報の照合、完了しました。対象の名はミニリス。タイプは顕者、幻霊クラスは2です」
「タイプ顕者のクラス2か……。最悪、死んでも構わんな。だが極力傷はつけるなよ」
「はっ」
徐々にその包囲を絞っていく。ダームは覚悟を決め、懐から短剣を取り出した。
「……悪いな、ミニリス。どうやら約束を果たせなさそうだ」
「おじさん……私……」
「ま、みっともなくても最後まであがかせてもらうがな……!」
ここを死地と定め、その瞳に覚悟の色を灯す。こうなった獲物は手ごわいと知る追手は、慎重な足取りで距離を詰める。そして。
「おいおい。久しぶりに戻ってきたら、とんでもない現場に出くわしたな。あんたら、寄ってたかってその子に何の用だ?」
「っ!?」
さらに響く第三の声。その声の主はダームたちの背後から届いた。
全員の視線がそこに集まる。そこには大斧を背負った男が立っていた。
「……一人か。我らに気付かれずにここまで近づけた腕は買うが。見られたからには生かしておく訳にはいかん。義侠心から姿を見せたこと、後悔するんだな」
「……はっ、義侠心ねぇ。確かにそんな気持ちがない訳でもないが、今さら格好付けるつもりもねぇよ。という訳でここはシンプルにいこうぜ。ここで去るなら追わない。去らないなら……分かるだろ?」
男は挑発する様な笑みを浮かべる。だが追手は男と会話をする気はなく、黙って指でサインを送った。その瞬間、複数の男たちが新たに現れた男に襲い掛かる。
(何者かは分からんが、警戒に値するのは確かだ。それに武装もしている。先にこちらを片付け、その後にミニリスたちを……)
今後の展開に思考を割く。しかし。
「かぁあっ!」
男は背に背負う大斧を取り出すと、目にも止まらぬ速度で真横に振るう。武器の重量を考えると、それは人では不可能な動きだった。
「…………!?」
その一振りは周囲に突風を巻き起こす。男に斬りかかった者たちは全員、身体が二つに裂けていた。
「ミニリス!」
そしてその光景を見たダームは、驚くよりも早く冷静に状況を判断する。
一瞬で追手が複数人死んだ事で包囲に穴が空いたのだ。ダームはその一瞬の隙を見逃さず、ミニリスを抱いて即座に移動する。
「お、追え!」
「させねぇって!」
だが大斧を持つ男の動きも速かった。彼はその場から想像を上回る速度で移動し、次々と追手たちを両断していく。
(ばかな……! な、なんだ、あの男は……! 何故あんな馬鹿でかい斧を持ってあれほどの速さで走れる!? 何故あれほど自由自在に振り回せる!? なんなのだ、あの男は……!)
こうしている間も配下たちが次々と殺されていく。大斧を振るう男と自分たちでは、あまりに実力に差があり過ぎた。
おそらくあと数秒もすれば、この場から離脱する事も不可能になるだろう。そう考え、男は撤退の合図を出す。
「お……逃げんのか。まぁ追いやしねぇがな」
追手たちは完全にその場を離脱した。ダームは今さらながらに状況を整理する。
(助かった……で良いんだよな? しかしこの男は一体……)
結果を見れば自分は無事、ミニリスも怪我一つ負っていない。そして目の前には人の限界を超えた動きを見せた、謎の男。だがその男は斧を背に背負いなおした。
「無事かい?」
「……ああ、助かったよ。えーと……」
「ベインだ」
「ベイン。俺はダーム、この子はミニリス。いや、今回ばかりはもう駄目かと思ったよ。故郷の嫁さんと子供にもう会えなくなるんじゃないかってね」
3人は一旦その場を離れる。道すがらダームは事情を話していた。万が一の時は、ミニリスを託せると考えてのことだ。
「不思議な力を持つ子供を集めた実験施設ねぇ……」
「ああ。俺はそこでミニリスに助けられてな。この子の願いを聞いて、大陸に渡るつもりだ」
かつて帝都地下でハギリと戦い敗れたベインであったが、その命までは奪われていなかった。それだけハギリに余裕があった証左である。
そして信奉していたレクタリアの死を知り、失意のままかつて拠点のあったフォルトガラム聖武国に帰ってきていた。
生まれ故郷も既に存在しない。行くあてもなく、何するでもなく本当に足が向いただけなのだ。
「で、あんたはそんな怪しい施設に何で潜入していたんだ?」
「え……と。はは、参ったな。なんと言うか……」
「ああ、俺はこの国に縁はあるが、別に愛国心に溢れているわけでも何でもない。気にしなくていいぜ。大方、帝国がどこかのスパイだろ?」
ベインがただ者でないのは既に分かっている。それに命を助けられた恩もある。ダームは一度は諦めた命だと考え、正直に頷いた。
「ま、そんなとこだな。このままミニリスを帝都まで連れていってやりたいんだが……見逃してくれるか?」
ベインはミニリスに視線を向ける。だがミニリスはダームの後ろに隠れてしまった。
ついさっき、目の前で多くの人を殺したのだ。幼子にはショッキングな光景だったかと今さらながらに気付いた。
「……良いぜ。ガラム島にいる限り、また追手が来る可能性もある。乗り掛かった舟だ、大陸まで送ってやるよ」
「いいのかい?」
「ああ。こんな島、さっさと出て行こうと思っていたところだ。だが帝都まで一緒に行く気はないからな」
そして3人は島で唯一、対岸のカルガーム領までの船が出ている港へと向かう。
当然、この港町には多くの追手がいるだろう。それにどう船に忍び込むかという問題もある。
だがその時、偶然港には多くの軍船を含む船が並んでおり、一斉に大陸へ向かうところだった。
「どうやら王女様が大勢の使節団を率いて帝都へ向かうらしい。チャンスだ、使節団には雑用で雇われた民間人も多い。そいつらに紛れ込むぞ!」
そのタイミングは本当に偶然であった。かくして3人は上手く使節団の一員扮し、大陸へと渡る。
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