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アデライアの覚悟 帰還した男
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ヴェルトの消えた部屋では激しい戦闘が行われていた。
いや、激しく動いているのは黒狼会の面々だけだ。レクタリアはその場から一歩も動くことなく、アックスたちを相手どっていた。
「ぐぅ……!」
氷の巨像の一撃がガードンの胴体に食い込む。並の人間であれば今ので身体がちぎれていただろう。そのあまりの威力にガードンはとうとう膝をつく。
「ガードンまで……!」
その場でまともに立てているのは、もはやディアノーラとアデライア、そしてハギリのみであった。
アックス、フィン、ロイ、ガードンは一時的な魔力ロスと巨像との戦いで大きく体力が削れており、リリアーナも体力の消耗から流聖剣ロンダーヴを振るえずにいた。
「僕の魔法が……! ここまで通じないなんて……!」
ロイは巨像相手には善戦していたが、レクタリアには全く敵わなかった。どれだけ高威力の魔法を叩き込もうが、自然とその軌道が逸れてしまうのだ。
「二回目は疲れるんじゃが……の!」
ハギリは全身に魔法の力を集中させた。ベイン戦同様に身体を若返らせて刀を構える。そこでレクタリアは初めてハギリに興味を示した。
「……あなた。ただの身体能力強化の魔法と思っていましたが……。かなり変わった魔法を持っていますね。そちらの方も三属性の魔法を使えましたし、あなたも姿を消すという魔法を持っていました。察するに、大幻霊石に捧げた名とは違う名をお持ちなのでは?」
「…………!」
ハギリはレクタリアの話を聞いて僅かに眉を上げる。魔法の特性から名前との関係を繋げる意味は分からなかったが、無関係ではないのだろうと考えた。
だが今はレクタリアと悠長におしゃべりする気はない。
「かっ!!」
俊足の移動術を以て一気に距離を詰める。あまりの速度にどの巨像もその動きを捉えきれない。
ハギリは瞬間移動の如く速さでレクタリアの側面へと回り込み、その首筋目掛けて太刀を振るう。
「……っ!?」
「我が氷壁の顕現よりも速く剣を振るうとは。驚きました、当代一といっても良い実力者でしょう」
ハギリの太刀は確かに氷壁で防がれることはなかった。だがレクタリアは何食わぬ顔で、素手でその太刀を掴んでいた。
(ばかな……!? しかもなんて力で掴んでやがる……! どれだけ力を込めても、刀を引き戻せない……!)
「全盛期の肉体に長年の生で得た剣技、そこに自身の魔法を組み込んだその実力。おそらく個人が到達できる領域としては最高クラスでしょう。あなたなら、波動も次のステージへと導いてくれるはずです」
ハギリは刀から手を離すと、そのままレクタリア目掛けて抜き手を放つ。
だが今度は氷壁によって食い止められた。氷壁はその体積を一気に増し、そのままハギリを押し戻す。
「く……!」
「じいさんっ!」
ハギリは何とか体勢を整えながら後退するが、その両側には2体の氷の巨像が回り込んでいた。
氷の巨像はハギリを間に挟むと、拳の連打を放つ。
「…………っ!」
身体能力の強化で瞬間的に防御体勢をとったものの、ハギリは大きなダメージを負ってしまった。そのまま巨像に腕を棍棒の様に振るわれ、壁際まで吹き飛ばされる。
「私がここで魔法の力を取り戻していなければ、最初の一太刀で終わっていたかもしれませんね」
レクタリアはハギリに対して素直な称賛を送る。だが当のハギリは元の姿に戻っており、床に伏せていた。
「さて……。我が次なる依り代、アデライアよ。ここに」
3体の巨像がアデライアの元へと向かう。だがディアノーラはアデライアの前に立つと剣を構えた。
出口は別の巨像に塞がれており、目前には3体の巨像。黒狼会でまともに起き上がれる者はいない。まさに絶体絶命の窮地であった。
(私の身に宿る力では、巨像の1体も難しいだろう。だが……!)
アルファース家に生まれた者の責務、そして誇りを思い出す。
約400年にも渡って、皇族を守護する一族としてその責を果たしてきたのだ。敵わない相手だからといって、剣を引く理由にはならない。
「はああぁっ!」
身体が熱い。覚悟が新たな力を呼び出したのか、これまでで一番と感じる剣が振るわれる。
だが相手は3体もの巨像だ。覚悟と勢いだけで倒せる相手ではない。
「くぅ……!」
巨像はそれぞれ互いに位置を変えながらディアノーラに拳を振るってきた。
だがディアノーラも完全に囲まれる前に距離を空け、ぎりぎりのところで一方的な展開にならない様に立ち振る舞う。
しかし満足に攻撃を振るえる機会もなく、回避と防御にその剣を振るわずにはいられなかった。
それでもよくもった方だろう。相手がその3体だけでなければ、またもう少し違う結果になっていたのかも知れないのだ。
「いたい……!」
不意に背後から聞こえるアデライアの声。ディアノーラが視線を向けると、そこには出口を固めていた2体の巨像がアデライアの両腕を掴み、その身体を持ち上げている光景があった。
「きさ……!」
視線に加えて意識までアデライアに向かう。そこに怒り、焦りといった感情まで混じり始め、ディアノーラに大きな隙が生まれる。
これまでディアノーラと対峙していた巨像の1体がディアノーラに覆いかぶさり、そのまま地面に倒れ込む。
「っ!?」
そうして腕を押さえ、地に組み伏せた。ディアノーラは力を入れにくい体勢でその質量をどかす事ができず、完全に動きを封じられてしまう。
「アデ……ライア様……!」
そしてその横を、アデライアの両腕を掴んだまま持ち上げている巨像が通り過ぎていく。もはや誰もその巨像の足を止められなかった。
巨像はそのままレクタリアの前まで移動する。
「ふふ。ようやく手に入りました。完全な波動制御因子を現在に発現させた神秘の巫女。次なる我が身体」
レクタリアは正面からアデライアの赤い眼を覗き込む。だがその目は怯えの色は少なく、抗う様な感情を見せていた。
「あな……たは。人を無理やり怪物化させて……! 何がしたいのです……!」
「我が目的は人を正しく導き、完全な進化をもたらす事。相応しくない者はレヴナント化するでしょう。ですがその代償に人は再び魔法という力を獲得し、誰もが負の感情から解き放たれるのです」
アデライアはレクタリアの言う事全てが理解できる訳ではない。だがこのままでは自分の見知った人たちがいなくなるという事は理解できた。
「素晴らしい世界でしょう? そしてあなたはその世界を幕開ける女神の転生体となるのです。人にとって、どれほど栄誉な事でしょうか」
そしてこの短いやり取りで、レクタリアは自分に陶酔していると感じとる。説得は無駄、自分にできる事も限られている。だから。
「……今に生きる人、全てがあなたのおしつける進化を欲しがっている訳ではありません」
「…………」
「私も魔法なんて欲しいと思いません。せっかく400年以上かけて世界に魔法のない秩序が生まれたのに、あなたはそんな過去の人たちの苦労や考えを否定しようとしている。私は……あなたの意思に抵抗します」
覚悟を決める。このままでは何かまずい事が起こる。だがそれを止める手段はあるのだ。
脳裏にレクタリアに敗れたヴェルトの姿を思い浮かべる。
(ヴェルトさま……どうか……)
「……まさか」
レクタリアがこれからしようとしている事。それに自分という存在は必要不可欠。ならば。
アデライアは静かに目を閉じ、自分の舌を思いきり噛み千切ろうと口を開ける。
「アデ……」
アデライアの考えを読み取ったレクタリアは、ここで初めて焦った様に目を見開く。
そして同時に、突如として祭壇に浮かぶ光球が部屋中を照らす様に輝きだす。そのあまりの眩しさに何も見えなくなった。
■
元居た部屋へと、身体が再構築されていく。
……ああ、くそ。ルードの野郎には騙されたな。レクタリアは鍵穴を出現させる事はできても、その扉を開くことはできなかったのだ。
それができるのはアデライアのみ。つまり意識の転写さえ防げば、波動はこの世界に満ちる事はない。
「…………!」
ゆっくりと目を開ける。そこにはレクタリアの目の前まで連れられているアデライアの姿が見えた。
(おいおい、ぎりぎり過ぎんだろ……! くそ、間に合え……!)
その瞬間、光と化した肉体は光線と化して巨像を撃ち貫く。
そのままアデライアを抱きかかえると、ディアノーラを押さえ込む巨像を蹴撃でかき消した。
「な……に……」
部屋に満ちていた光が収まる。レクタリアからすれば突然強い光が満ち、それが収まったら俺がアデライアを抱いてディアノーラの側に立っているのだ。そりゃ驚くだろう。
「ヴェル……ト、さま……?」
「おう。間一髪、間に合ったようで何よりだ」
「ヴェルト……!」
「ヴェルトか!? お前……!」
周囲を見渡すと、無傷で残っている奴は誰もいなかった。
だが幸い死人は出ていない様だ。どうやらみんなの頑張りで、ここ一番に間に合ったらしい。
俺はアデライアを降ろすとディアノーラに託す。
「悪いな、みんな。どうやら美味しいところは俺がもらう様だ」
軽くその場で跳躍する。その瞬間、俺の身体は再び光線と化し、その光の魔法で周囲の巨像を打ち消していった。
「…………!」
瞬き一回の時間で巨像が無力化される。ざっと見た感じ、意識がないのはじいさんくらいか。大丈夫……だよな。
一連の行動を見ていたレクタリアは、慎重に口を開いた。
「ヴェルト……ですか? その魔法は一体……。いえ、どうやって戻ってきたのです!? あの世界から帰れる術はないはず……」
「ああ。かつてアディリスを放り込んだもんなぁ。便利に使えるゴミ箱だと思っていた訳だ」
「……! なぜそれを……!」
やっと感情らしい感情を見せたな。
さて。これまで黒狼会を舐めてくれた礼をさせてもらおうか……!
いや、激しく動いているのは黒狼会の面々だけだ。レクタリアはその場から一歩も動くことなく、アックスたちを相手どっていた。
「ぐぅ……!」
氷の巨像の一撃がガードンの胴体に食い込む。並の人間であれば今ので身体がちぎれていただろう。そのあまりの威力にガードンはとうとう膝をつく。
「ガードンまで……!」
その場でまともに立てているのは、もはやディアノーラとアデライア、そしてハギリのみであった。
アックス、フィン、ロイ、ガードンは一時的な魔力ロスと巨像との戦いで大きく体力が削れており、リリアーナも体力の消耗から流聖剣ロンダーヴを振るえずにいた。
「僕の魔法が……! ここまで通じないなんて……!」
ロイは巨像相手には善戦していたが、レクタリアには全く敵わなかった。どれだけ高威力の魔法を叩き込もうが、自然とその軌道が逸れてしまうのだ。
「二回目は疲れるんじゃが……の!」
ハギリは全身に魔法の力を集中させた。ベイン戦同様に身体を若返らせて刀を構える。そこでレクタリアは初めてハギリに興味を示した。
「……あなた。ただの身体能力強化の魔法と思っていましたが……。かなり変わった魔法を持っていますね。そちらの方も三属性の魔法を使えましたし、あなたも姿を消すという魔法を持っていました。察するに、大幻霊石に捧げた名とは違う名をお持ちなのでは?」
「…………!」
ハギリはレクタリアの話を聞いて僅かに眉を上げる。魔法の特性から名前との関係を繋げる意味は分からなかったが、無関係ではないのだろうと考えた。
だが今はレクタリアと悠長におしゃべりする気はない。
「かっ!!」
俊足の移動術を以て一気に距離を詰める。あまりの速度にどの巨像もその動きを捉えきれない。
ハギリは瞬間移動の如く速さでレクタリアの側面へと回り込み、その首筋目掛けて太刀を振るう。
「……っ!?」
「我が氷壁の顕現よりも速く剣を振るうとは。驚きました、当代一といっても良い実力者でしょう」
ハギリの太刀は確かに氷壁で防がれることはなかった。だがレクタリアは何食わぬ顔で、素手でその太刀を掴んでいた。
(ばかな……!? しかもなんて力で掴んでやがる……! どれだけ力を込めても、刀を引き戻せない……!)
「全盛期の肉体に長年の生で得た剣技、そこに自身の魔法を組み込んだその実力。おそらく個人が到達できる領域としては最高クラスでしょう。あなたなら、波動も次のステージへと導いてくれるはずです」
ハギリは刀から手を離すと、そのままレクタリア目掛けて抜き手を放つ。
だが今度は氷壁によって食い止められた。氷壁はその体積を一気に増し、そのままハギリを押し戻す。
「く……!」
「じいさんっ!」
ハギリは何とか体勢を整えながら後退するが、その両側には2体の氷の巨像が回り込んでいた。
氷の巨像はハギリを間に挟むと、拳の連打を放つ。
「…………っ!」
身体能力の強化で瞬間的に防御体勢をとったものの、ハギリは大きなダメージを負ってしまった。そのまま巨像に腕を棍棒の様に振るわれ、壁際まで吹き飛ばされる。
「私がここで魔法の力を取り戻していなければ、最初の一太刀で終わっていたかもしれませんね」
レクタリアはハギリに対して素直な称賛を送る。だが当のハギリは元の姿に戻っており、床に伏せていた。
「さて……。我が次なる依り代、アデライアよ。ここに」
3体の巨像がアデライアの元へと向かう。だがディアノーラはアデライアの前に立つと剣を構えた。
出口は別の巨像に塞がれており、目前には3体の巨像。黒狼会でまともに起き上がれる者はいない。まさに絶体絶命の窮地であった。
(私の身に宿る力では、巨像の1体も難しいだろう。だが……!)
アルファース家に生まれた者の責務、そして誇りを思い出す。
約400年にも渡って、皇族を守護する一族としてその責を果たしてきたのだ。敵わない相手だからといって、剣を引く理由にはならない。
「はああぁっ!」
身体が熱い。覚悟が新たな力を呼び出したのか、これまでで一番と感じる剣が振るわれる。
だが相手は3体もの巨像だ。覚悟と勢いだけで倒せる相手ではない。
「くぅ……!」
巨像はそれぞれ互いに位置を変えながらディアノーラに拳を振るってきた。
だがディアノーラも完全に囲まれる前に距離を空け、ぎりぎりのところで一方的な展開にならない様に立ち振る舞う。
しかし満足に攻撃を振るえる機会もなく、回避と防御にその剣を振るわずにはいられなかった。
それでもよくもった方だろう。相手がその3体だけでなければ、またもう少し違う結果になっていたのかも知れないのだ。
「いたい……!」
不意に背後から聞こえるアデライアの声。ディアノーラが視線を向けると、そこには出口を固めていた2体の巨像がアデライアの両腕を掴み、その身体を持ち上げている光景があった。
「きさ……!」
視線に加えて意識までアデライアに向かう。そこに怒り、焦りといった感情まで混じり始め、ディアノーラに大きな隙が生まれる。
これまでディアノーラと対峙していた巨像の1体がディアノーラに覆いかぶさり、そのまま地面に倒れ込む。
「っ!?」
そうして腕を押さえ、地に組み伏せた。ディアノーラは力を入れにくい体勢でその質量をどかす事ができず、完全に動きを封じられてしまう。
「アデ……ライア様……!」
そしてその横を、アデライアの両腕を掴んだまま持ち上げている巨像が通り過ぎていく。もはや誰もその巨像の足を止められなかった。
巨像はそのままレクタリアの前まで移動する。
「ふふ。ようやく手に入りました。完全な波動制御因子を現在に発現させた神秘の巫女。次なる我が身体」
レクタリアは正面からアデライアの赤い眼を覗き込む。だがその目は怯えの色は少なく、抗う様な感情を見せていた。
「あな……たは。人を無理やり怪物化させて……! 何がしたいのです……!」
「我が目的は人を正しく導き、完全な進化をもたらす事。相応しくない者はレヴナント化するでしょう。ですがその代償に人は再び魔法という力を獲得し、誰もが負の感情から解き放たれるのです」
アデライアはレクタリアの言う事全てが理解できる訳ではない。だがこのままでは自分の見知った人たちがいなくなるという事は理解できた。
「素晴らしい世界でしょう? そしてあなたはその世界を幕開ける女神の転生体となるのです。人にとって、どれほど栄誉な事でしょうか」
そしてこの短いやり取りで、レクタリアは自分に陶酔していると感じとる。説得は無駄、自分にできる事も限られている。だから。
「……今に生きる人、全てがあなたのおしつける進化を欲しがっている訳ではありません」
「…………」
「私も魔法なんて欲しいと思いません。せっかく400年以上かけて世界に魔法のない秩序が生まれたのに、あなたはそんな過去の人たちの苦労や考えを否定しようとしている。私は……あなたの意思に抵抗します」
覚悟を決める。このままでは何かまずい事が起こる。だがそれを止める手段はあるのだ。
脳裏にレクタリアに敗れたヴェルトの姿を思い浮かべる。
(ヴェルトさま……どうか……)
「……まさか」
レクタリアがこれからしようとしている事。それに自分という存在は必要不可欠。ならば。
アデライアは静かに目を閉じ、自分の舌を思いきり噛み千切ろうと口を開ける。
「アデ……」
アデライアの考えを読み取ったレクタリアは、ここで初めて焦った様に目を見開く。
そして同時に、突如として祭壇に浮かぶ光球が部屋中を照らす様に輝きだす。そのあまりの眩しさに何も見えなくなった。
■
元居た部屋へと、身体が再構築されていく。
……ああ、くそ。ルードの野郎には騙されたな。レクタリアは鍵穴を出現させる事はできても、その扉を開くことはできなかったのだ。
それができるのはアデライアのみ。つまり意識の転写さえ防げば、波動はこの世界に満ちる事はない。
「…………!」
ゆっくりと目を開ける。そこにはレクタリアの目の前まで連れられているアデライアの姿が見えた。
(おいおい、ぎりぎり過ぎんだろ……! くそ、間に合え……!)
その瞬間、光と化した肉体は光線と化して巨像を撃ち貫く。
そのままアデライアを抱きかかえると、ディアノーラを押さえ込む巨像を蹴撃でかき消した。
「な……に……」
部屋に満ちていた光が収まる。レクタリアからすれば突然強い光が満ち、それが収まったら俺がアデライアを抱いてディアノーラの側に立っているのだ。そりゃ驚くだろう。
「ヴェル……ト、さま……?」
「おう。間一髪、間に合ったようで何よりだ」
「ヴェルト……!」
「ヴェルトか!? お前……!」
周囲を見渡すと、無傷で残っている奴は誰もいなかった。
だが幸い死人は出ていない様だ。どうやらみんなの頑張りで、ここ一番に間に合ったらしい。
俺はアデライアを降ろすとディアノーラに託す。
「悪いな、みんな。どうやら美味しいところは俺がもらう様だ」
軽くその場で跳躍する。その瞬間、俺の身体は再び光線と化し、その光の魔法で周囲の巨像を打ち消していった。
「…………!」
瞬き一回の時間で巨像が無力化される。ざっと見た感じ、意識がないのはじいさんくらいか。大丈夫……だよな。
一連の行動を見ていたレクタリアは、慎重に口を開いた。
「ヴェルト……ですか? その魔法は一体……。いえ、どうやって戻ってきたのです!? あの世界から帰れる術はないはず……」
「ああ。かつてアディリスを放り込んだもんなぁ。便利に使えるゴミ箱だと思っていた訳だ」
「……! なぜそれを……!」
やっと感情らしい感情を見せたな。
さて。これまで黒狼会を舐めてくれた礼をさせてもらおうか……!
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