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乗っ取り 水迅断の幹部たち

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「な……! なんだ、てめぇらは……!」

 突然の出来事に誰もが驚いた。男たちが姿を見せた会議室の壁は今、完全に消失している。

 5人の男たちは何に遠慮することなく、ずかずかと部屋に入ってきた。

「初めまして、水迅断のみなさん。俺はヴェルト。黒狼会のボスをやっている」

「!!!!」

 ヒアデスや一部の幹部たちは、黒狼会の名を聞いて僅かに目を細めた。

 最近城壁外で潰れた二つの組織を短期間でまとめた黒狼会。その名は情報屋を通して聞いてはいたのだ。

「てめぇ……! 新参のクズどもが、俺たち水迅断に随分と舐めた真似をしてくれたじゃねぇか……!」

「ここを水迅断の本拠地だと分かってんのかぁ!?」

「おい、何してる! 誰かこいつらをつまみ出せ!」

 幹部たちが大声で自分たちの連れてきた護衛を呼ぶ。しかし部屋には護衛どころか、屋敷にいるはずの私兵を含めて誰も来なかった。

「無駄だ。別室にいた護衛を含め、主だった者たちは既に床に転がっている。中には二度と起き上がれない者もいるがな」

「…………!!」

 ここにきてヒアデスたちは、今がどれほどの異常事態だったかを悟り始める。

 屋敷には相当数の私兵がいたはずだ。だというのに、ほとんど騒ぎを聞くことなく、その大半が既に戦闘不能状態になっているというのだ。

 さらに壁一面が燃えたと思えば、今はその炎も消えている。タイミングとしては、ダグドが喚き始めた辺りだった。

 ヒアデスは考える。そうだ、そして自分の私兵が1人、突如現れた少女によって殺されたのだ。

「まさか……! ダグド、てめぇ……!」

「はは。鋭いですな。そうだ、私は黒狼会に寝返ったんだよ!」

「な……!」

「彼らは私が護衛として連れてきたのだ! はは、ははははははは!!」

 部下の裏切りを前に、ヒアデスは眉間に深いしわを作る。

「ダグドォ……! お前、生きてこの屋敷から出られると思うなよぉ……!」

 しかしこのヒアデスの怒りに答えたのは、黒い甲冑の男ヴェルトだった。

「ダグドは正しい判断をしたに過ぎん。今日潰れる組織に残るメリットなど、何もあるまい?」

「あぁ!?」

「幹部がそろっているのも都合が良い。水迅断は今日から俺たち黒狼会のものだ。文句のある奴はいるか?」

「ふざけるな!」

「そうだ! てめぇ、この帝都で安全に歩けると思うなよ!」

 ダグドを除いた7人の幹部の中で、最初に態度を鮮明にしたのは2人だった。ヴェルトは素顔の見えない兜をダグドに向ける。

「あの2人は?」

「ガイツとローランです。2人とも幹部の中ではそれなりの力を持っています」

「そうか……」

 ヴェルトは僅かに首の角度を変え、後ろに控える二人の男に兜の奥から視線を向ける。その瞬間、ガードンとハギリの二人が動いた。

「あががががあ!?」

 ハギリは瞬き一度の速さで、幹部の一人の背後に移動し、その腕を捻り上げる。

 ガードンはその大きな一歩で距離を詰め、同じく幹部の一人の胸倉をつかむと、そのまま足が付かない高さまで持ち上げた。

「な!? おい、何してる! こいつらを殺せ!」
 
 ヒアデスは残った9人の護衛に命じる。直ぐに動いたのは7人だった。

 7人はそれぞれ二手に分かれてハギリじいさんとガードンの元へと向かう。しかしここで動いたのがアックスとフィン、それにロイだった。

 フィンは元々持ち込んでいたナイフで、アックスは指先から伸ばした水糸で相手を切り裂く。ロイは手刀を放った様に見せかけて、風の刃を抜き放つ。

 どれもが絶命必至の必殺技。7人中6人はまともに武器を振るう間もなく、崩れ落ちていく。そして残りの1人は。

「……ふんっ!」

 ヴェルトの腕撃を受け、部屋の壁を貫いて吹き飛ばされていった。

 護衛の男とて相当な重量のある大男だ。それをただの拳の一撃で、大きく吹き飛ばした。

 誰がどう見ても人外の膂力。ヴェルトたちは全員、武器を持っていないというのに、ものの数秒で護衛たちを倒してしまった。

「……な」

 ここにきてようやく、ヒアデスを含む幹部たちはヴェルトたちの異常さを正しく理解した。
 
 護衛たちは、水迅断の武闘派の中では間違いなく最高クラスだった。それがまったく相手にならない。むしろ赤ん坊と戦士くらいの差を感じる。

 ヒアデスは大量に汗をかきながら、残った2人の護衛にも唾を飛ばした。

「何している! お前ら、あいつらを殺せ!」

 しかし初めから動かなかった2人は、互いに苦笑いしながら視線を合わせる。

「……ヒアデスさん。悪いがあんたとの契約はここまでだ」

「なにぃ!?」

「話が違う。ありゃ帝国騎士を集めてもそう簡単には止められない。こんなやばい奴らがいるなんて、聞いてなかったからな」

 2人は目の前で元同僚たちが無残に殺されたが、顔色一つ変えずにヒアデスに答えた。その声色には緊張も見られない。

「な……な……!」

「なぁヴェルトさん。俺たちは金で雇われていただけで水迅断とは関係がない。ここは……」

「ああ、構わない。さっさと行け」

「お、ありがたい」

 2人はヴェルトに許可をもらうと、さっさと部屋を出て行った。これで残ったのは床に散らばる死体とヒアデス。そして水迅断の幹部たちのみ。

「さて。うるさいのが消えたところで話し合いを進めようか。ヒアデス、水迅断は今日から俺たちが貰うが……構わないよな?」

「てめぇ……! こんな真似して、冥狼が黙っていると思うのか……!? 冥狼だけじゃない、水迅断は影狼にも……!?」

 ヒアデスは叫びながら、右腕に冷たい何かを感じた。だが冷たい感触は直ぐに熱を持ち始める。

 ゆっくりと視線を右腕に移すと、その肘から先が床に落ちていた。

「ぎ……! ぎゃあああぁぁぁあああ!?」

「うるさいなぁ、ちょっと黙ってよ」

 腕を切り落としたのは、誰にも気づかれずに距離を詰めたフィンだった。フィンはさらにヒアデスの左腕を切り落とし、流れるような動作で右目も突く。

「が、あああああ!」

 ヒアデスは溜まらず床に尻をついた。痛い、熱い、苦しい、血が止まらない。何故水迅断のボスたる自分が、こんな目にあっているというのか。

「ダグドに聞いたよぉー。あんたも相当悪いことしてきたんだってねぇ。あんたに借金作って、自殺していった人も多いらしいじゃない。私たちもたくさん人を殺してきたけどさぁ。さすがに一般人をそこまで嬲る様なことはしなかったなー」
 
 ヒアデスは両腕の無くなった身体を引きずり、ゆっくりと後退する。だがフィンは笑みを浮かべながらヒアデスに距離を詰めた。

「あ、やめ、ぎゃあああ! いたい、いたいいぃぃ!」

 そこからフィンは、幹部たちの前でヒアデスを徹底的にいたぶった。

 幹部の中にはその凄惨な光景を前に、途中で目を伏せる者もいた。やがてその悲鳴も聞こえなくなる。ヒアデスだったものの近くには、その肉片が多く飛び散っていた。

「あれ。死んじゃった」
「ま、外道に引導渡したのが外道なんだ。これでいくらか報われた人もいるだろ」

 ヴェルトはそう言うと、ヒアデスの座っていた椅子に座る。そして今もガードンとハギリに身柄を拘束されている2人の幹部に顔を向けた。

「どっちがガイツだ?」

「ガードン様が捕まえている方です」

「そうか。ガードン」

 ガードンは胸倉を掴んでいた男の左肩に手を置く。そして。

「ぐぎゃあああああああ!?」

 その肩を力任せに砕いた。ガードンの魔法は身体能力の強化であり、主に防御力に特化したものになっている。しかしその腕力も当然、強化の対象だ。

「うるさいぞ。これくらいの事、お前もこれまで部下にさせてきただろう」

 ガードンは肩に終わらず、指の一本から丁寧に折っていく。その度に部屋にはガイツの叫びが響いた。

「あ……! も、もう……! た、たすけ……!」

「ふん……」

 全身の骨という骨を砕かれ、ガイツは息も絶え絶えになっていた。そして最後に、ガードンによって首を反対側へと回される。こうしてガイツは静かになった。

「ご苦労、ガードン。さて次はローランの番だな」

 自分たちに助けはこない。そう確信したローランは必死の思いで叫ぶ。

「まま、待ってくれ! 分かった、俺もダグド同様あんたたちに降る! だから助け……!」

「じいさん」

「あいよ」

 ローランの叫びも空しく、指示を受けたハギリはその肩を外す。

「ぎゃああああああ!!」
 
 残った幹部たちは、ローランがヒアデスとガイツ同様、これから時間をかけて痛ぶられることを悟り、恐怖で冷や汗流した。

 そして予想通り、ローランもたっぷり時間をかけられた後、声を出せない状態にされてしまう。

「さて……これで今度こそ静かになったかな。諸君、改めて挨拶でもしようか。さっきも名乗ったが、俺は黒狼会のボス、ヴェルトだ。今日はここに水迅断の乗っ取りに来た。反対を表明したガイツとローランは、皆も見たとおり説得が通じず、残念なことになった」

 見たとおりも何も、説得など初めからしていない。ヴェルトは初めから反対を表明した者はできるだけ惨たらしく殺すつもりだった。   
 
 理由は逆らう者と従う者で、はっきりと差をつける者であることを示すためだ。

「しかし水迅断の規模はそれなりだし、今日までこの組織を大きくしてきた幹部の者たちの能力も評価しているつもりだ。現にダグドには、一部方針は変えてもらうが基本的にこれまで通りにしてもらうし、黒狼会の定める掟の範疇であれば好きにしてもらっても構わないと伝えている。俺とて素直に降ったダグドを簡単に切るつもりはないし、ヒアデスの様なバカに絡まれているなら助けてもやるさ」

 暗に自分たちの武力が後ろ盾になる事を伝える。これだけ異質な力を見せつけられた直後だ、幹部たちは自分たちに向かってくれば脅威だが、後ろ盾になるのなら心強いと感じ取った。

「さて。今日この時よりこの椅子は俺が座るが……。この中で反対の者はいるかな?」

 ヴェルトは静かに問いかける。だが張り詰めた静寂の中、声をあげる者は誰もいなかった。

 残った者たちに初めから選択肢などない。一体どこの誰が、今この屋敷を支配する6人に逆らえるというのか。ダグドは音頭を取る様に席を立つ。

「私は黒狼会と、最高幹部たる6人に忠誠を誓います。私の持つ力を存分に役立ててください」

 ダグドの宣言がきっかけとなり、他の幹部たちも忠誠を誓い始める。

「わ、わたしも……!」

「俺もです……! 喜んで黒狼会のために働きます……!」

 ここでダグドに続かなくては、次は自分たちの番だ。そして一度でも逆らう姿勢を見せれば、どれだけ命乞いをしても決して助からない。

 これまで帝都で暴力恐喝などを行なってのし上がってきた彼らだったが、全てを黙らせる圧倒的な暴力に、心から屈したのだった。
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