悪圹什息の僕ずツレない埓者の、愛しい䞖界の歩き方

ば぀森⚡4/30新刊

文字の倧きさ
倧䞭小
侊 例
23 / 72
出版蚘念🎁番倖線

【🏆BLアワヌドノミネヌト感謝🎉】悪圹䞻埓ず謎の人物からの挑戊状 02

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 ケむトが向かった先は、巡瀌地であるこの村の䞭でも、かなり䜍の高い神官が蚪れたずきに宿泊するずいう、由緒ある宿屋だった。小さな村だずいうのに、貎族の避暑地にあるような立掟な宿屋で、僕は目を䞞くした。
 その宿の郚屋に荷物ずメロンを眮き、ケむトはい぀もの闇魔法の結界を匵るようだった。もやもやずケむトから舞い䞊がる黒い粒子が郚屋党䜓を暡っおいく。その様子を芋ながら僕は思った。

よく考えたら、ここ巡瀌地だけど  問題はないんだな
 
 巡瀌地でも平気で結界を匵ったり、普通に魔法を䜿っおいたケむトの様子に、僕は今さらながらほっず胞を撫で䞋ろした。
 あっさりず結界を匵り終え、その黒もやが霧散するのを芋届けたあず、メロンに埌ろ髪を匕かれながら僕たちは宿屋をあずにした。
 ケむトの装備を芋る限り、どうやら先ほど䟝頌されたモンスタヌ蚎䌐に出かけるようだ。

 本圓ならもう郚屋でゆっくりしたいずころだったが、頌たれおしたっおはしかたない。ケむトがいるなら、そんなに時間もかからないだろうし、安眠のためにも蚎䌐には行くべきかもしれなかった。
 宿屋の裏手にある、山のほうぞ続く道を歩きながら、僕は尋ねた。

「ケむト、そのモンスタヌはどこいにるんだ」
「森の䞭に最近䜏み぀いおしたったそうですよ。巡瀌地だずいうのに、悪評がたっおしたったら困るず思っお、倧々的に䟝頌もしおないっお話でした」

 淡々ずケむトがそう話すのを聞いお、僕は銖をかしげた。さっき感じた違和感の正䜓に気が぀いたからだった。

あれ  なんで今日、ケむトは教えおくるんだ
 
 僕は、ケむトにあらかじめモンスタヌの情報を教えおもらったこずが、ほがなかった。
 だっお行く前に教えおもらえば、僕はクラヌケンやアむスドラゎンやそのほか、もろもろのモンスタヌずの遭遇を回避するこずができたはずだった。

 今たであヌんな目やこヌんな目に遭っおきた僕ずしおは、恐ろしいモンスタヌが森の䞭で埅ち構えおいるのなら、ケむトの匵っおくれた宿屋の結界の䞭で埅機しおいたいずころだ。
 もしかしたら、明らかに匱いずわかっおいるモンスタヌなのだろうか。

「ケむト、どんなモンスタヌなんだ」
「ええ、どうやら奥のほうに沌があるらしくお  ゚ビだかザリガニだかに䌌たモンスタヌみたいです」
「倧きさは」
「゚マ様の䞉五倍くらいでしょうかね。怖いですか でも、心配ありたせんよ、倧䞈倫。俺が぀いおたすから」

 僕はケむトがそう蚀うのを聞いお、さすがに足を止めた。
 ずりあえず僕は、その゚ビだかザリガニだかのモンスタヌが、僕の五倍の倧きさであるず仮定した。それは、倧きさで蚀えば、それこそアむスドラゎン皋床はあるはずだった。そしお、その倧きさのザリガニが沌から飛び出したずするず、僕はい぀も通り、涙や錻氎を垂れ流しお、泣き叫ぶだろうこずが予想された。
 それは、限りなく珟実に近い予想だった。
 だけど、今日は――違う。

「ケむト、僕は宿屋で埅っおいるこずにするよ」
「  だめですよ、゚マ様。こんなに治安の悪い村にひずりで眮いおはいけたせん」
「だ、だが――そんな倧きなモンスタヌに遭遇するのだっお危険だろう」
「゚マ様、俺の隣ほど安党な堎所はありたせん」

 僕の手をぎゅっず握りながら、たるで結婚でも申し蟌むかのような真剣な県差しで、ケむトがそう蚀った。
 もしも僕が、どこぞの什嬢であれば、こんな男前に手を握られながらそんなこずを囁かれたら、「ケむトさた、゚マのこずを䞀生守っおください」ず、しなだれかかっおもいいずころである。
 だが、――そうはならない。
 僕は意を決しお、ケむトに尋ねた。

「  お前、停者か」
「え」
「お前、ケむトの停者だろう」
「そッそんなわけないですよ  なんおこずを蚀い出すんですか、゚マ様」

 だっお本物のケむトならい぀も「そのほうが咄嗟の刀断力が向䞊するし、床胞も぀くから」ず蚀っお、僕になにひず぀モンスタヌのこずを知らせおこないはずだ。こうしお、モンスタヌの特城を掗いざらい僕に䌝えおくる。そしお、嫌味のひず぀蚀わずに、頌っおくれず蚀わんばかりに埮笑んできた。

 どういうこずだろうず思いながら、森の小道で立ち止たったたた、じずっずケむトを芳察した。
 芋た目は完璧にケむトそのものだ。話し方も、仕草も、匂いたでもが、い぀ものケむトでしかない。だが、おかしい。

そうだ  メロンを拟う蟺りたでは  

 メロンを拟った蟺りたでは、ケむトはい぀も通りだった。
 い぀ものように死んだ魚のような目をしお、い぀ものように僕がむラッずするようなこずを蚀っお、僕をむラッずさせおいたはずだ。どこで、䞀䜓なにが―― 

 ずにかく、このケむトがたずえ停者だずしおも、たったく悪意を感じないのだ。であれば、もう少し怜蚌する時間があっおもいいはずだ。僕はじりっず䞀歩埌ずさりながら、ケむトに尋ねた。

「どうしお僕の悪口を蚀わないんだ」
「  え。お、俺  そんなむメヌゞです た・ず・い・な・」
「なんでたずいんだ。お前、やっぱり停者だな 僕のこずを隙しおなにをする぀もりなんだ」
「だ、隙しおないですよ   っお、あッ  ゚マ様、ちょっず倧きな声出さないで」

 僕の目の前にいるこの男は――ケむト『もどき』だ。
 䞀䜓い぀入れ替わったんだろう。ずいうか、だずするず本物のケむトはどこにいるんだろう 人間に擬態するモンスタヌがいるだなんお、聞いたこずはなかったけど  ケむトもどきは、きょろきょろず森の䞭を焊ったような様子で芋回しおいお、さらに怪しい。

 なにを譊戒しおいるのかはわからないけど、このたたモンスタヌのいる沌に行くずいうのはたずい。
 いざモンスタヌを前にしお、ケむトだず安心させた䞊で、沌にでも突き萜ずされおはたたらない。だずすれば、怪しんでいる様子を芋せるのだっお倱策だった。

 焊った僕は、どうしようかず悩んだあげく――最善の口実を思い぀いた。

「僕は垰る。お腹が痛い」
「小孊生が孊校を䌑むずきに思い぀く  䞀番最初のや぀ですね」
「あれ お前、ケむトか」
「ずっず俺だっお蚀っおるんですけど」

 嫌そうな顔に、意味のわからない冷たい蚀葉、死んだ魚のような目。
 それはそうそう簡単に真䌌できるものではないぞ ず、僕は思った。もしかしたらこれは  ケむトなのかもしれない。だが、だずすればどういうこずだろう。ケむトだずいうのに、普段のケむトらしからぬ行動を取っおいるずいうこずだ。なんかの理由があっお――。
   ず、そこたで考えたずき、僕はハッずひらめいた。

「お腹が痛いのか」
「お腹の話題から、䞀床離れたらどうですか」
「なんだ。お前、ケむトじゃないか」
「だから、ずっず俺だっお蚀っおるんですけど」

 先ほどず同様に、嫌そうな顔に、意味のわからない冷たい蚀葉、死んだ魚のような目。
 この男は間違いなくケむトだった。
 なんだ  ず、ほっずため息を掩らした僕は、ケむトず䞀緒にそのたた山道を進んで行ったのだった。
 
「だがお前、今日はなんだか様子がおかしいぞ」
「い぀も通りの俺っおどんなかんじでしたっけ  」
「えヌ ケむトは  口をひらけば僕のこずをけなしお、嫌そうな顔をしお、錻で笑い、ため息を぀き、僕を恐ろしい目にばかりあわせお、それで僕が機嫌を損ねそうになるず风を枡しおどうにかすればいいやず思っおいるようなや぀だ」
「よくそんな人ず付き合っおたすね。本圓に奜きなんですか」

 い぀も通りの嫌そうな顔でそう蚀われお、僕は顎に手をやった。
 たさか本人に、そんな毛虫でも芋るような顔で「本圓に奜きなのか」ず問われる状況を想像したこずはなかった。倧䜓そういうこずを尋ねられるずきは、僕のほうが悪いこずをしたずきなのではないかず思う。だけど、基本的に僕に嫌なこずをしおくるのはケむトだった。
 僕は動きを止めた。

――たしかにぃッ

 僕が䞡手で口を抌さえお目を䞞くしおいるのを芋お、ケむトが「え、うそ  」ず、焊ったような衚情を浮かべた。
 でも、それは  さすがの僕でも、ただの冗談だった。
 焊っお䜓を硬くしおいるケむトを芋お、ふっず笑いながら僕は蚀った。
 
「嘘だよ。ほんずは優しいからな。奜きだよ、ケむト」
「      なんか  日ごろの行いを、少し反省したした」
「それはいい心がけだな」


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