引きこもりの俺の『冒険』がはじまらない!〜乙女ゲー最凶ダンジョン経営〜

ばつ森⚡️4/30新刊

文字の大きさ
上 下
108 / 119
2-1 魔法学園の編入生

105 招待状を平民のあなたに♡

しおりを挟む


だぁれだよぉ、お前! とか言いたくなった。

そんなセリフ、俺が言ったのか。

顔から火が出そうだ、朝っぱらから。

「学校行きたくねぇ」

まさかの理由で登校拒否したくなると思わなかった。

学校に行きたくないのは、あいつとした会話のこともそうだけど。

「…………はあぁぁーーーーー」

俺がやった行動が、俺的に大問題。

でも作家的にはナイスだったらしい。

しかも、あやうく車の中で18禁に突入するきっかけを起こされかかってたっていう……。

恋してんだろうなと神田に囁いた時、そのまま耳の後ろにわざとリップ音をたてながらキスをしてた俺。

「うあああああああ」

恥ずかしい!

そんなこと、絶対しない! お・れ・な・ら!

夢を見るように、自分がしたことを、作家曰く脳内再生でエンドリピってやつで知らされた。

その内容の中で、作家が俺がやめてくれ! って思うような展開を途中まで書いたりもして、何度か車内で時間の巻き戻しみたいな感覚があった。

自分が女を口説くところを、後々自分で鑑賞するハメになるって、どういう事態だよ。

俺の行動と発言のどこからどこまで、俺は干渉できるのか…いまだつかめていない。

どうにかして、最悪の事態は免れたい。

「この場合の最悪って、どこまでのことだろうな」

最近ため息ばっかりだ。

昨日のやり直しめいたことがなきゃ、彼女の耳裏にキスをした後、そのまま助手席を倒して。

「最後までとはいかずとも、服の上からあいつの……」

自分が意識していないところで触れて、書き直して、違う展開にして。

ってやったはずなのに、この手のひらに残っている気がして朝から頭の中がふしだらだ。

胸だけだったとはいえ、あいつの体に触れた。

展開が変わったはずなのに、あいつの口からもれた…女のアノ声。

どこか照れが混じった、決して普段聞くことがないはずの声。声っていうか、吐息?

それが耳について、離れない。

「……………………デカかったな」

手のひらに収まらなかった。

手のひらにも、その感触が残ってる。

「あぁ、もう」

もてあます歯がゆさに、頭を抱える。

たとえきっかけがどこぞの作者がよこした恋なんだとしても、俺があいつに対して好意を持っていることを消したいと思えない。

俺自身、もう…。

「好きになってんだろ」

最近増えたため息の理由わけは、あいつ一択。

それを不快に感じていない。

学校で自分がやらなきゃいけないことを順番に片していったとしても、サブリミナルみたいにあいつの顔や声や言葉が俺の中に必ず存在しつつある。

忘れないでと言われているような、自分に気づいてほしがっているような。

ノイズっぽい感覚もある。

今自分が置かれている状態が小説の中ってわかっていなきゃ、自分の中で何が起きているのかわからなくて、混乱してどう動いていいのかわからなくなっていただろう。

誰かに相談したかもしれない。

同期の保険医に聞いたかもしれないな。

俺の体がなんか変とか口走った可能性がある。

それをきっと笑われて終わっていたかも。

「そういや」

俺以外にも、この世界が二次小説って言われている場所だって知ってるのかな。

知ってて、自分が望む方にどうにかしようとするんだろうか。

とはいえ、異常なことではあるから、聞きまわるわけにもいかない。

「……それは、さておき」

やっぱり学校に行きたくない。

「会ったら、どんな顔してりゃいいんだ」

なんてボヤきつつ、タバコに手を伸ばした時だ。

「う…あっ」

目の前の景色が歪んだ。

見覚えのある景色。

(またかよ)

抗えなかった、今回も。

「先生ぇー、おはよ」

俺は学校の門のそばに立っていて。

「センセ、寝不足? 俺らより歳なんだから、無理すんなよ?」

「それな!」

「あっはははは」

見慣れたバスケ部のやつらに、からかわれていた。


しおりを挟む
ばつ森です。
いつも読んでいただき、本当に本当にありがとうございます!
更新状況はTwitterで報告してます。よかったらぜひ!
感想 31

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

ド平凡な俺が全員美形な四兄弟からなぜか愛され…執着されているらしい

パイ生地製作委員会
BL
それぞれ別ベクトルの執着攻め4人×平凡受け ★一言でも感想・質問嬉しいです:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion 更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

糸目推しは転生先でも推し活をしたい

翠雲花
BL
 糸目イケメン。  それは糸目男性にのみ許された、目を開けた時とのギャップから生まれるイケメンであり、糸那柚鶴は糸目男性に憧れていたが、恋愛対象ではなかった。  いわゆる糸目推しというものだ。  そんな彼は容姿に恵まれ、ストーキングする者が増えていくなか、ある日突然、死んだ記憶がない状態で人型神獣に転生しており、ユルという名で生を受けることになる。  血の繋がりのない父親はユルを可愛がり、屋敷の者にも大切にされていたユルは、成人を迎えた頃、父親にある事を告げられる── ※さらっと書いています。 (重複投稿)

処理中です...