引きこもりの俺の『冒険』がはじまらない!〜乙女ゲー最凶ダンジョン経営〜

ばつ森⚡️4/30新刊

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1-3 ラムレイ辺境伯領グレンヴィルより

50 朝(フェルト視点)・前

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※※フェルト視点です
※※フェルトは受けです




「昔、犬を拾ったんだ……捨て犬で、飼いたくて……必死にお願いしたけど、血統書がないから……だめだって――」


 あのあと、狂ったように唇を重ねながら、レイと俺の陰茎を合わせて扱いた。レイはもう一度吐き出して、すぐにすうっと寝てしまった。
 昨日はいろんなことがあったから、疲れてたんだと思う。安心しきって眠るレイの顔を見ながら、きゅうっと胸が締めつけられた。
 よく考てみたら、レイが外に出るのはまだ2回目だった。それなのに……なんだか俺の勝手で、いろいろ無理をさせてしまった気がする。

 でも、俺の手に握られて、気持ちよさそうに感じていたレイは……今思い出しても……

(すごい……えっちだった……)
 
 扇情的っていうんだろうか。洩れる吐息や、切なげに寄せられた眉は……今まで想像してみたどんな女の子よりも淫らで、美しくて、このまま無理矢理体を暴いてしまいたいだなんて……浅ましい欲望を俺に抱かせた。

 それから、俺の髪の毛を優しく撫でながら、ぽそりと『犬』の話をして、レイは悲しそうな顔をした。
 いつか自分だけの犬を見つけてきれいな首輪をつけたいって、寂しそうに笑って――それから、寝てしまった。多分眠かったからだけど、舌ったらずで甘えるような言い方は、ほんとに小さな子みたいに聞こえた。

 レイは基本的に寒がりだ。
 浄化の魔法をかけて軽くタオルでも拭いてあげたが、寒そうにすり寄ってきたので、ずうずうしくも……同じ布団に入らせてもらった。
 レイが眠ってしまったあと、何度も胸にすりすりと頬を寄せてくるので、ドキドキして……全然寝られなかった。

 寝たり起きたりと、浅い眠りを繰り返していたら、もう朝の日差しが差し込んでいた。
 一体どういう仕組みなのかはさっぱりわからないが、このダンジョンの中にある居住区には、天窓のようなところから、太陽光が取り入れられている。
 外の景色が見えるわけではないから、まさか本当に穴が開いているわけではないだろうが、本当に不思議な場所だ。

「……レイ」

 小さく口に出してみれば、染み渡るような、美しい名前の響き。
 俺より3つ年下のきれいな青年。

 俺の腕の中にすっぽりはまり、すうすうと無防備に寝息を立てている。滑らかな絹糸みたいな髪をいじっていたら、さらりと指からすり抜けた。
 考え方も、行動も、性癖も……なにひとつ俺の常識に当てはまらないのに、笑った顔とか無邪気に子どもと遊ぶ姿、寂しそうな顔を見るたびに、ただ……目が離せない。

 アンバランスって言葉がすごくしっくりくる。
 なにかを我慢しなくていけなくて、なにかを諦めて、その中で得られるものを得て、誰よりも強くあろうとしてるみたいで。たまに、背伸びをしないといけない子どもみたいに見えて、ほっとけない。

 たまには――弱音を吐いてくれたらいいのに。

 あんなひどいことをされたのに、なんでそんなこと思ってるんだろう……って、ほんと複雑だけど。シルフィも「お人好しすぎる」って、死んだ魚みたいな目で俺のことを見てたけど。
 
 でも、あんな汚い盗賊たちに、レイの手が触れるのも嫌だった。
 ていうか……レイは冒険者だの傭兵だの、いたぶって楽しんでいるつもりらしいけど、たしかにひどいこともたくさんしてるけど、だんだんレイを見る彼らの目の色が変わっていってるのを……知ってるのかなあッ!
 本人はいたぶっているつもりかもしれないけど、あんなモニター越しにもわかる、恋してるみたいな表情の人たちのこと……はっきり言って、レイは理解してないと思う! 自分がひどいことしてるって自覚はあるみたいだけど正直――、彼らにとってそれがひどいことなのかどうかは……微妙だ。レイには、それほどの価値があると思う。

 あんな盗賊とこんなに綺麗なレイが性交なんてしたら、そんなのひどいことでもなんでもなくて……ご褒美みたいなものだよ……。オリバーに渡された鞭を手渡してみたけど、やっぱり叩くだけじゃなくてなんかしようとしてたし。
 あれは、させちゃだめだったはずだ。いや、――ていうのはもしかしたら言いわけで、レイの言う通り本当はああやって……

(俺が……レイに触られたかったのかもしれない、けど……)

 そこまで考えて、俺は両手で顔を押さえて固まってしまった。全身の血がぶわっと沸騰したみたいに熱くなる。昨日の自分のしたことを鮮明に思い出してしまった。
 
 わ、わ、わ、恥ずかしい! お、俺はなんてことを……!
 踏まれて射精するなんて……へ、変態みたいなことを!!! どうしよう、まさか……変態って移るのかな。誰が見てるわけでもないのに、顔を隠したまま動けない。
 しばらく、ぷるぷると小刻みに震えていたけど、ふと思い出した。「あ」と思わず小さく洩らす。でも、そうだ。

(……キス、はじめてだって言ってた)

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