引きこもりの俺の『冒険』がはじまらない!〜乙女ゲー最凶ダンジョン経営〜

ばつ森⚡️4/30新刊

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1-2 騎士団員フェルト

33 町に行こう・後

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「飯! 飯を食おう!」

 だめだ! 俺の冒険が止まらない! 俺のファンタジーがやばい!(まだなにもはじまってない)
 俺はきょろきょろしながら、飯屋っぽいのを探す。
 さっきのソーセージも捨てがたいが、あんまり冒険者ギルドにいてボロが出ても困る。

「レイ様、なに食べたいんですか?」
「肉!!!」
「レイ様って……男らしいですよね。ほかになんか注文あります?」
「安くてうまい人気のあるとこ」

 安くて美味いとこ以上の正義はない。
 人気あるとこ……というのは、情報収集したいからだ。ほんとは穴場的なとこでもいいんだけど、今回は目的があるので仕方ない。なんと言っても異世界初飯屋! 活気があるところも、きっと楽しいはずだ。





「わ、ワイバーンステーキ!」

 オリバーが連れてってくれたのは、入った瞬間にジュウジュウ肉を焼く音の聞こえる、『冒険者御用達』ですよ! ていうかんじの飯屋だった。
 店は扉がなく、屋外から厨房までテーブルが並んでいて、まあ……よく言えばオープンカフェ的な? なんつーか屋台の前にテーブルが並んでいるようなイメージだ。
 メニューは厨房のところに書かれてあって、『ワイバーンの肉』なんていう、絶対日本じゃ食べられないものを頼んだ。
 
 当たり前だッ!!!
 
 そこにドラゴンの肉が売ってれば、絶対食べるだろ。ファンタジーバンザイ!

 しっかし、目の前に置かれたステーキの分厚さにびっくりする。
 脂の乗った、5cmくらいの厚みがあるうまそうな肉。衛生的な観点があるのか、一応ミディアムレア……なんてことにはできないようで、ウェルダン。
 にんにくみたいないい匂いもして、まじでよだれが垂れる。

「うっまーッ!!!!」

 ひと口食べると、肉汁がじゅわじゅわっと口の中に広がった。
 厚みもあるのにウェルダンになってたから、固いんじゃないかと思ったけど、溶けるようなやわらかさだった。
 どうなってんだワイバーン! あんな固そうな外殻してて、腹の中はぽよぽよなのか?? 霜降りじゃねーか。

「ワイバーンの肉が出回るなんて、なんかあったのかな」

 とか言いながらも、フェルトもちゃっかりワイバーンの肉を注文していた。
 オリバーはもそもそと、子羊のように……子羊の肉を食ってた。非常にオリバーっぽい。

「そうですね。俺も滅多に見たことないです。ここは国境が近いですからね。もしかしたら、小競り合いにでも巻き込まれたんですかね?」
「お、兄ちゃん詳しいね。良い線いってんだが、ちょっと違うんだよ。実は最近、国境の近くにダンジョンができたって噂があってさ」

 隣の席に座っていたおっさんが教えてくれたことによると、なんとワイバーン……ゴブリンをエサにしているんだとか。そんで、俺のダンジョンができてゴブリンが大量に移り住んだものだから、エサのゴブリンがいなくなって山からこの辺に降りてくるようになったらしい。

 あれッ! 俺のせいだった。

 でもワイバーン自体はそんなに大きくないらしく、冒険者たちに討伐されて、レンベルグに肉が出回るようになったんだとさ。
 俺はおっさんにエールを1杯頼んでやった。
 人間はちょっとでも報酬をもらえたほうが、口が軽くなる生き物だ。

「お、サンキュなー。坊主のくせに気がきくな!」
「おっさん、そのダンジョンってどんな? 最近できたってことは、まだそんなに階層もないんだろ?」
「ああ、多分な。でもなんか冒険者が全然戻ってこねえってんで、噂になってる」
「戻ってこねえって?」
「ゴブリンとかスライムとか、出てくるモンスターはそんな強くはないらしいんだが、それでも帰ってこねえんだよ」
「なんだそれ、気持ち悪いな」
「特殊個体がいるとか、突然変異だとか、言ってるやつもいる。最近では、王都から調査団も来てたんだぜ?」
「調査団? おっさんすげー! なんでも知ってんなー!」

 だけど、調査団は戻って来なかったと。
 いつもはなにも動きなんてないくせに、どういうわけだか今回に限り、領主が動いて冒険者ギルドに依頼したらしい。

「調査団の捜索依頼。金貨50枚。まじかよ」

 ちーんと残念な鐘の音が頭の中に響く。
 
「わりとピンチですね、レイ様。でも話を聞く限り、貴族の依頼でみんな及び腰だってことだし、今んとこ大丈夫ですかね」
「確かに貴族の依頼だと思うと、下手に失敗できないかんじがあるかも」
「この町に、そんなに強いランクの冒険者がいないっていうのもありますね」

 俺たちは肉を食べ終えて、ベラんちに向かって歩いていた。

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