36 / 119
1-2 騎士団員フェルト
33 町に行こう・後
しおりを挟む「飯! 飯を食おう!」
だめだ! 俺の冒険が止まらない! 俺のファンタジーがやばい!(まだなにもはじまってない)
俺はきょろきょろしながら、飯屋っぽいのを探す。
さっきのソーセージも捨てがたいが、あんまり冒険者ギルドにいてボロが出ても困る。
「レイ様、なに食べたいんですか?」
「肉!!!」
「レイ様って……男らしいですよね。ほかになんか注文あります?」
「安くてうまい人気のあるとこ」
安くて美味いとこ以上の正義はない。
人気あるとこ……というのは、情報収集したいからだ。ほんとは穴場的なとこでもいいんだけど、今回は目的があるので仕方ない。なんと言っても異世界初飯屋! 活気があるところも、きっと楽しいはずだ。
「わ、ワイバーンステーキ!」
オリバーが連れてってくれたのは、入った瞬間にジュウジュウ肉を焼く音の聞こえる、『冒険者御用達』ですよ! ていうかんじの飯屋だった。
店は扉がなく、屋外から厨房までテーブルが並んでいて、まあ……よく言えばオープンカフェ的な? なんつーか屋台の前にテーブルが並んでいるようなイメージだ。
メニューは厨房のところに書かれてあって、『ワイバーンの肉』なんていう、絶対日本じゃ食べられないものを頼んだ。
当たり前だッ!!!
そこにドラゴンの肉が売ってれば、絶対食べるだろ。ファンタジーバンザイ!
しっかし、目の前に置かれたステーキの分厚さにびっくりする。
脂の乗った、5cmくらいの厚みがあるうまそうな肉。衛生的な観点があるのか、一応ミディアムレア……なんてことにはできないようで、ウェルダン。
にんにくみたいないい匂いもして、まじでよだれが垂れる。
「うっまーッ!!!!」
ひと口食べると、肉汁がじゅわじゅわっと口の中に広がった。
厚みもあるのにウェルダンになってたから、固いんじゃないかと思ったけど、溶けるようなやわらかさだった。
どうなってんだワイバーン! あんな固そうな外殻してて、腹の中はぽよぽよなのか?? 霜降りじゃねーか。
「ワイバーンの肉が出回るなんて、なんかあったのかな」
とか言いながらも、フェルトもちゃっかりワイバーンの肉を注文していた。
オリバーはもそもそと、子羊のように……子羊の肉を食ってた。非常にオリバーっぽい。
「そうですね。俺も滅多に見たことないです。ここは国境が近いですからね。もしかしたら、小競り合いにでも巻き込まれたんですかね?」
「お、兄ちゃん詳しいね。良い線いってんだが、ちょっと違うんだよ。実は最近、国境の近くにダンジョンができたって噂があってさ」
隣の席に座っていたおっさんが教えてくれたことによると、なんとワイバーン……ゴブリンをエサにしているんだとか。そんで、俺のダンジョンができてゴブリンが大量に移り住んだものだから、エサのゴブリンがいなくなって山からこの辺に降りてくるようになったらしい。
あれッ! 俺のせいだった。
でもワイバーン自体はそんなに大きくないらしく、冒険者たちに討伐されて、レンベルグに肉が出回るようになったんだとさ。
俺はおっさんにエールを1杯頼んでやった。
人間はちょっとでも報酬をもらえたほうが、口が軽くなる生き物だ。
「お、サンキュなー。坊主のくせに気がきくな!」
「おっさん、そのダンジョンってどんな? 最近できたってことは、まだそんなに階層もないんだろ?」
「ああ、多分な。でもなんか冒険者が全然戻ってこねえってんで、噂になってる」
「戻ってこねえって?」
「ゴブリンとかスライムとか、出てくるモンスターはそんな強くはないらしいんだが、それでも帰ってこねえんだよ」
「なんだそれ、気持ち悪いな」
「特殊個体がいるとか、突然変異だとか、言ってるやつもいる。最近では、王都から調査団も来てたんだぜ?」
「調査団? おっさんすげー! なんでも知ってんなー!」
だけど、調査団は戻って来なかったと。
いつもはなにも動きなんてないくせに、どういうわけだか今回に限り、領主が動いて冒険者ギルドに依頼したらしい。
「調査団の捜索依頼。金貨50枚。まじかよ」
ちーんと残念な鐘の音が頭の中に響く。
「わりとピンチですね、レイ様。でも話を聞く限り、貴族の依頼でみんな及び腰だってことだし、今んとこ大丈夫ですかね」
「確かに貴族の依頼だと思うと、下手に失敗できないかんじがあるかも」
「この町に、そんなに強いランクの冒険者がいないっていうのもありますね」
俺たちは肉を食べ終えて、ベラんちに向かって歩いていた。
73
いつも読んでいただき、本当に本当にありがとうございます!
更新状況はTwitterで報告してます。よかったらぜひ!
お気に入りに追加
816
あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?


糸目推しは転生先でも推し活をしたい
翠雲花
BL
糸目イケメン。
それは糸目男性にのみ許された、目を開けた時とのギャップから生まれるイケメンであり、糸那柚鶴は糸目男性に憧れていたが、恋愛対象ではなかった。
いわゆる糸目推しというものだ。
そんな彼は容姿に恵まれ、ストーキングする者が増えていくなか、ある日突然、死んだ記憶がない状態で人型神獣に転生しており、ユルという名で生を受けることになる。
血の繋がりのない父親はユルを可愛がり、屋敷の者にも大切にされていたユルは、成人を迎えた頃、父親にある事を告げられる──
※さらっと書いています。
(重複投稿)

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ド平凡な俺が全員美形な四兄弟からなぜか愛され…執着されているらしい
パイ生地製作委員会
BL
それぞれ別ベクトルの執着攻め4人×平凡受け
★一言でも感想・質問嬉しいです:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion
更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です
X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる