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1-2 騎士団員フェルト

27 今後のことを話し合おー・後

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「……先輩たちは、無事なのか」
「平民の奴らは、牢屋みたいなとこに転がしてある。怪我は治した。貴族のやつはこれから繁殖場だ」

 フェルトは、繁殖場??? と疑問符を頭に浮かべていたが、コンコンとノックがあって、オリバーが服を持って来た。
 リングが外されていないフェルトの局部を見て、なんとも言えない顔をしていたが、下着とズボンを着せてくれた。上は、後ろ手の拘束を解くわけにはいかないので(オリバーも俺も戦闘力はほぼないので)、シャツを羽織らせる。
 俺の部屋のテーブルに、オリバーが2人分のお茶を用意してくれた。フェルトの分まで出してやってるとこが優しい。

「ま、聞きたいことは色々あるだろうけど、とりあえず質問に答えとけ」
「とりあえずは、国の今後の動きですね」

 聞きたいことしかねーよッ! という顔でフェルトは俺を睨みつけていたが、俺がにこにこ微笑んでいるだけなのを見て、はあ、とため息をつくと話し始めた。

「相手が誰だろうと、たかが『平民』の騎士1人のために国が動くことはないよ。こんな辺境なら尚更」
「あの貴族の親が国に働きかけることはないのか?」
「基本的に貴族は体面を重視するから。息子ができたばかりのダンジョンで失踪したなんて、身内の恥を国に晒すことはしないと思う」

 それはよかった。ということは、目下気にしなくてはいけないのはラムレイ家自体の動きだ。
 息子があの性格なら、親も大概だろう。家族愛がどの程度のものなのかにもよるが、どんな手に出るのやら。

「で、お前のことだけど。お前強いの?」
「はあ?」
「昇進予定だったんだろ? お前、国の中でどれくらい強いの?」
「な、なんで知ってるんだよ! ……ゴブリンに負けて一階層も突破できないやつに、強いもなにもない」
「自己評価は聞いてねーよ。お前、なんかの加護持ちだな?」
「……風の精霊と契約してる」
「レイ様。あの戦い方、精霊を使役してるかんじはしませんでした。少なくとも『加護』は持ってると思います」
「お前さあ、今嘘ついていいことある? 先輩もちんこも握られてんだぞ」
「ちッ! ち!? はあ!?」

 口をはくはくと開閉させて、フェルトは真っ赤になって黙りこんだ。
 なんだろ、反応がいちいちかわいすぎる気がする。
 しばらくなにやら葛藤している様子だったが、覚悟ができたのか、ペニスを捨てることはできなかったのか、フェルトは口をひらいた。

「くそッ…………風の精霊王の、加護がある」
「せ、精霊王の!? い、愛し子……それは……ッ!」
「なにそれ」
「この世界には、火、水、風、土、光、闇の精霊がいて、契約している人間は結構いるのですが、精霊のほうから加護が与えられるのはかなり稀です。その中でも精霊の王たる『精霊王』の加護を受けた人間なんて……歴史上、一人二人、いるかいないかというとこだと思います」
「強いの?」
「正直、一階層で打ち負かすことができたのは、奇跡としか……」
「ふうん。じゃ、ある意味、あのバカ貴族は俺の命の恩人か。お前、そんな強えーのついてんのになんで負けたの?」
「…………修行不足」
「だから、自己評価は聞いてねーんだよ」
「シルフィがちょっと……その、ラムレイ先輩と相性が悪くて。精霊の国じっかに帰ってるんだ……精霊たちは周りにいたけど」

 フェルトは、がっくりと肩を落として項垂れた。
 ダンジョンの調査が、こんな結果になるとは思っていなかったんだろう。運が悪いとしか言いようがない。

「随分とムラのある『いとし』方してるんだな」

 フェルトは「でも、結局は俺の修行不足だから」と、ぶつぶつ言っていた。
 しかし、そうなると、どうしたものかな。モンスター以外に強い手駒が手に入るのなら、それに越したことはない。ただでさえ、オリバーや俺は戦闘要員ではないし、ダンジョンを作り込む以外の自衛の手段も確保したいと思っていた。

 神経をいじって洗脳するというのを試してみてもいいんだが、最大限に実力を引き出すためにも、できるならそのままの人格で手元に置いておきたい。だけど、下手にひどいことをして、反抗心を芽生えさせられても困る。
 もうやっちまったけど。

 それに、なんだかよくわかんないけど、精霊王? とやらが力を出したり、文句を言ってきたら面倒だ。
 となると、――フェルトの大事なものでゆするしかないか。

「オリバーがさ、あの貴族が失踪した状態でお前らが帰還してもいいことないって言うんだけど、どうなの?」
「あ、――ああ、ラムレイ先輩は貴族の中でもかなり貴族らしい人だから。死罪はないかもしれないけど、除隊されて厳罰、ひどければ投獄かも。はあ」
「どういう状態がお前たちの幸せなのか考えたんだが、たとえば顔を変えて家族と逃げるとか……そういうのはどう?」
「顔を変える?? ああ、焼いたりするってこと? うーん……本人たちに聞いてみないとわからないけど、俺は身寄りないから顔を焼いて他国で冒険者でもいいかもしれない。少し離れたミレニア帝国とかも、立身出世の国だし……って俺たち解放されんの??」
「ふうん。俺があの貴族を解放する気がなければ、帰るっていう選択肢はない?」
「ラムレイ先輩が解放されないなら、俺たちだけ帰ってもひどい扱いを受けるだけだ。場合によっては……家族も」

 フェルトの表情に影が差す。
 オリバーから聞いてはいたが、この国の貴族制度はかなりひどいようだ。

「わかった。じゃあお前さ、平民の騎士たちを無事に帰してやるから、俺のために働けよ」
「――は?」
「ああッ! それいいですね、レイ様。恩を売れるでしょうから、このダンジョンの情報を流されることはないですし。なにより、彼、かなり強いですもんね」
「はあ?? なんで俺がッ!! 俺、昨日こいつに……さ、最低なことを……!」
「女々しい男だな。お前のケツと先輩たちの命とどっちか選べよ。ほら、淫乱なフェルトのおしりを犯して下さいご主人様って言わせてもいいんだぞ」
「~~~~ッッ!!? さ、最低だ……!!! な、なんて最低な奴なんだ!!!」
「レイ様……も、もうちょっと言い方が。ほら、せめて、か、体とか……ろ、労力とか、ほら」

 フェルトはわなわなと怒りで震えながら、顔を真っ赤にして叫んだ。
 なんて言ったらいいのかわからないのだろう。ただ鯉のように口をパクパクと開けたり閉じたりしている。
 あれ……反感買わないように、かなり優しい条件出したつもりだったけど間違ったか?? あれ、これって断られたら、どうなるんだっけ。
 と、考えていると、オリバーがすんごいことを言い出した。

「どうしても嫌なら、奴隷っていう手もありますけどね。隷属契約させて、騎士として使役させるんですよ」
「!!!!!」

 オリバーの発言にフェルトの顔が真っ青になった。
 だけど――え? 奴隷っていう状態の騎士……? それって――……

「ど……奴隷騎士……ッ!?」

 きゅうううううんと胸が高鳴った。

 心臓がぎゅうっと締めつけられるような感覚がして、俺はバッと胸に手をやり、Tシャツ(仮)を握りしめた。
 ハアハアと息が荒くなる。や、そんな、ど、奴隷騎士なんて――そんなありえないミラクルな職業が!?
 そんな、そんな破廉恥な職業があるだなんて、ファンタジーがえぐい。

(まじか……)

 ずっと発情した状態で射精管理されて、卑猥な言葉を口にさせられ、体もえろく調教されて……だけど命令されたら、どんな命令にも逆らえなくて、犬みたいな扱いを受けて、それでも体はとろんとろんになっちゃって、一生懸命俺のペニス舐めたり、必死で腰振ったりでろでろになるまでイカされて、それで敵と戦わされる……みたいな、こと?!?! 敵と戦って死ぬことで、やっとその呪われた運命から解放されるみたいなこと?!?!

 どうなんだ?! ……そうなのか!?

 今まで生きてきて、こんなに心臓の音が速まったことあった? 俺。
 俺は血走った目でフェルトの顔を見ていたが、俺はたまらなくなってバッと両手で顔を隠した。
 多分顔は真っ赤だろう。悶え死ぬ。やばい、勃起しそうだ。
 
 きゅうっと下唇を噛むと、俺は膝を抱えて身を小さく縮こまらせた。もじもじと足の指が動いてしまう。もう何百人も奴隷騎士を侍らせたいし、騎士同士で戦わせてもいい。
 勝ったほうだけがご褒美とかだったら、死闘を繰り広げてくれるかもしれない。
 どうしよう。

(夢……広がる……!)
 
 今まで生きててこんなに興奮したことなかったかもしれない。
 もうあの騎士たちもみんなうちで奴隷騎士にしてしまえばいいのでは? フェルトも嫌がってるなら、まとめて奴隷騎士にしてしまおう。それがいい。
 もう俺のペニスは完全に勃起していて、爆発しそうになっていた。

「ハアハアハア………」

 俺の荒い息だけが、部屋に響いていた。
 沈黙を破るように、フェルトが言った。

「……こいつ、頭おかしいの?」
「そうですね。頭のおかしさで言うと、かなり飛び抜けてると言えます」


「ハアハアハアハア……」


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