引きこもりの俺の『冒険』がはじまらない!〜乙女ゲー最凶ダンジョン経営〜

ばつ森⚡️4/30新刊

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1-1 異世界での目覚め

16 黒幕はオリバー

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「おおー これは、なんていうか、見事ですねー」
「だろ? 結構自信ある」


 俺はオリバーと一緒に第二階層に来ていた。

 一階層は元あった洞窟と半分融合しているので天然っぽい部分もあるが、地下二階となる第二階層は来てみれば、全部が土壁で覆われた迷路のようになっていた。なんとなく殺風景な土壁が嫌で、草や苔を洞窟内に張り巡らせることにしたのだ。

 オリバーが「ファイアなどで火をつけられたら植物系は一網打尽にされてしまう」と言うので、急遽、燃えにくい植物モンスター(水草(改:アクアアイヴィ))の品種改良と、逆に火に反応して爆発するという植物モンスター(自爆草(改:ポムポム))を生成した。

 〝ダークアイヴィー〟という蔦みたいな弱いモンスターを改良したが、生殖速度をかなり上げてあるので、栽培を始めてから一週間ほどで第二階層はほぼ緑に覆われた。

 〝ムーンライトグラス〟という月明かりを灯す草があると聞き、なんとなくそれきれいっぽいなと思って、ところどころに配置してみた。そのおかげで第二階層は、まるで精霊でも住んでいそうな夜色の緑の洞窟となり、幻想的な雰囲気を出している。
 だが、モンスターはかなり凶悪なものを混ぜている、というギャップがポイントだ。

 ちなみに一階は〝ゴブリン〟や〝 スライム〟など、いわゆる弱いとされるモンスターを主に配置し、土壁もむき出しのままで油断を誘う方針。だが、配置されている彼らの数はかなり多く、その上、そのゴブリンやスライムたちも中身を地味に強化している。

 つまり「雑魚ばっかりか、大したダンジョンじゃねーな」→「大量に来たところで俺の敵じゃねえ」→「あれ、妙に疲れてきたな」→「くそ、数が全然減らねえ」→「ぜえぜえ、どうなってんだ」的な流れになったところで、わりと強めのモンスター(ゴブリンソルジャー、ゴブリンウィザード、ゴブリンナイト、ゴブリンロード)などが、顔を出し始めるっていう仕組み。
 休憩をしようとすればすぐに敵が現れ、休憩ができたとしてもシャドースライムが影から忍びよる。

 無意識のうちにじわじわと疲れを蓄積させ、気づいたときにはくたくたで休憩もできず、打ち取られる。という、結構えげつない作りになっている。
 ちなみに通路もかなり作り込んであり、分断されたり追い込まれるような道も多々ある。

 そして最終的には、モンスターたちの追撃にあい、回復する間もなくそのままボス部屋に到達する。
 ボスは、武士だ。武士。サムライゴブリン。作った。
 日本の文化は伝えていかねばなるまい。

「二階層は大分違う印象ですね。モンスターも植物と虫メインですか?」

 元からこの洞窟に住んでいた、蜘蛛のモンスターやミミズみたいなモンスターがうじゃうじゃいたので、かたっぱしから改良した。

 周りが緑に覆われているので、保護色を合わせることから始まって、ポムポムとアクアアイヴィとの兼ね合いなど、二階層を作るのには、わりと時間がかかった。
 でもその分、完成度はまあまあだ。

 全体的に緑に覆われているせいで、目印がつけづらく、視覚的にずっと同じ場所をぐるぐるしている気になり、体力を消耗する。
 一階と同じで、同じ敵ばかり出て来ると思えば、徐々に強さが増していたり、突然強敵(殺人蜘蛛(改:アサシンスパイダー)、(猛毒ミミズ(改:ポイズンウォームなど))が紛れこんでいたりする。
 休憩できそうな木を見つければ、偽木(改:ミミックツリー)、鬼木(改:オーガメープル)、悪桜(改:ナイトブラッサム)というモンスターだったりする。

 ボスは紫蜘蛛(改:ナイトメアスパイダー)。俺がオリバーに会ったときに連れていたオシャレ蜘蛛な。

「ゴブリンの繁殖が、冒険者のおかげでかなり進んでますからね。このままゴブリン推しなのかと思ってました」
「冒険者のおかげ? お前のおかげだろ」
「…………それは言わないで下さいよ」



 ――というのも先日、新しく捕まった冒険者を、仕事場に連れていき、バイブやらオナホやらを設定していたときのことだった。
 オリバーがおもむろに言ったのだ。

「それにしても、この壁から生えている振動する棒の設置……面倒ですね。角度が難しいんですよ」
「そうだな。でもどうしてもこの格好が効率がいいんだよな。仰向けにして単体型をぶっこむのも考えたんだけど、毎回自分の精液まみれになるのも汚ねーし」
「まあ、それは、そうですけど。そもそも……なんで棒なんですか?」
「は? どういうことだ」
「だって、どうせ穴を犯すっていうことなら、ゴブリンやオークにやらせたほうが繁殖もできて便利じゃないですか。ただでさえ彼ら、繁殖力低いからって村で女性を襲うんだから」
「…………………………お、オリバー、お前…………」
「………………あッ」



 ――と、いうことがあり、それからは一部の男に妊娠機能を作り、壁穴形式を取ることになった。
 俺も大概だが、オリバーも大概このダンジョンに染まっている。つーか、むしろあいつが黒幕だ。
 冒険者の敵は、モンスターでも俺でもねえ。


 オリバーだ。


「でもレイ様が言うとおりなら、エネルギー?が貯まれば、このまま階層って増えていくんですよね?」
「その予定だな」
「そしたら、俺の部屋とかイザベラの部屋とかって、どうなるんですか?」
「ああ、それな。最近、冒険者も増えて来て、あいつ1人でうろついてると危ないだろ? だから転送陣みたいなのを設置したんだよ」
「転送陣ですか。たしかに。ダンジョンですもんねー」
「オリバーとベラを生体認識したら、入り口からあのリビングへ転送できるようにしたから」
「生体認識。すごい。個体を識別できるんですか? もう……なんて言ったらいいか」
「まーな。あと、位置も階層が増える度に、下にずらすからな」

 俺という存在について、一体ベラがどう認識してるのかはよくわからないが、性懲りもなくダンジョンに通って来る。
 新しいモンスターがうじゃうじゃいるので、新しい素材という意味でもダンジョンに興味がつきないらしい。あと、俺がもう十分だと思えるほどのスウェットも、彼女が言うにはまだ『スウェット(仮)』らしく、未だに熱心に改良も続けてくれている。
 オリバー同様に、俺と普通に接してくれるかなりの逸材である。
 大事にしなければなるまい。

「じゃあもう第二階層も解禁ですか?」
「だな。階段とつなげてオープンしよう。なんか懸念点ある?」
「そうですねー……せっかく虫がいるんですから、女の人が嫌いそうな虫とかも入れてもいいかもしれませんね」
「ああ、多足類みたいなかんじとか?」
「うーん、そうですね。あの、モンスターって大概サイズも大きいじゃないですか。でもせっかく虫なんで……逆に小さいのがいたらすごく怖くないですか? 服ん中入っちゃったら、それがなんであろうと、うひゃあってなるし。防具とか全部外さないと取れないので、脱ぐしかないし。特に騎士とか甲冑着てたりなんかしたら悪夢ですよ。そんな慌ててるところを襲われたら、ひとたまりもない」
「…………………………お、オリバー、お前…………」



「………………あッ」





――――――――
読んでくださってどうもありがとうございますー!
次回ようやく受けのフェルトくんが出てきます。おたのしみに!
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ばつ森です。
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