引きこもりの俺の『冒険』がはじまらない!〜乙女ゲー最凶ダンジョン経営〜

ばつ森⚡️4/30新刊

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1-1 異世界での目覚め

10 オリバーの受難(オリバー視点)・後

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「レイ様。その、剣ゴブリンってゴブリンソルジャーのことですか? それとも、ゴブリンナイト? というか……そ、その、け、ケツ穴とか、――め、め、め………す、穴とかって、一体な、なんの話をしてるんですか」
「え? あー俺が作ったんだよ。ほら、生活すんのにいろいろ必要だし。スライムって形状的になんか便利でさー」
「ええッ! あれ、全部レイ様が作ってるんですか???」
「や、違う。大元を作ったら、あとは繁殖してもらってるから」

 俺は驚愕に目を見開く。
 目の前にいる、今の俺の新しい主人が前に言っていたことを信じるなら、彼は人間ではなく、自衛のためにモンスターと共存しているということなのだ。だからそのために、モンスターたちの強化を行っているらしい。
 俺は会ったことないが、この世界にはモンスターテイマーと呼ばれる、モンスターを使役する人間がいるという。そういう人間に仕えているモンスターたちは、成長し、色々な技能が芽生えたりすることもあるらしいが、レイ様が言うように、故意にその成長を促すというのは、前代未聞だ。
 現状、彼がダンジョンの主である以上は、人類の敵という位置なんだろうが、もし友好的な関係を築けることができれば、世界はすごい発展を遂げそうである。

「いや、普通にすごいことですよ! ただ……」
「ただ?」
「その名前どうにかなりません? なんかもっと、その、――ちゃんとした名前というか……」
「えー? わかりやすいだろ」
「いや、でももし自分が、あ、穴スライムとか呼ばれてたら、ちょっと悲しいというか……あッほら、紛らわしいじゃないですか。さっきも言ったけど、剣ゴブリンだと、ゴブリンソルジャーなのかゴブリンナイトなのかわからないし」
「あはは! 穴スライムとか呼ばれてたら、なんかすげー名器のビッチ野郎みたいだな」
「ちょっと! 話の本筋はそっちじゃないんですよ!」

 ぎゃははと笑っているレイ様は、本当に下品だ。
 俺は白い目でそれを見ながら、ずずっとお茶をすする。

「んじゃ、お前それやれよ」
「は?」
「リスト化して名前つけといてくれ。そういうの得意そうじゃん」

 今まで様々な人間にこき使われてきたが、まさか自分がモンスターの種族を命名することになるとは……。
 普段の作業はびっくりするほど雑なのに、意外にも非常に研究熱心なレイ様が開発しまくった膨大な量のモンスターたちが、各種1匹ずつ、廊下にきちんと整列しているだなんてこのときの俺は想像もできなかった。



 後日――。



 かなりの量のモンスターを1つ1つ結構悩んで命名したのに、「えー」と言った末、結局レイ様は自分のつけた名前で呼んでいる。
 まあ、でも俺の作ったリストは、後々役に立つんじゃないかな、と俺は思っている。このダンジョンがもう少し認知された際に、ギルドからおそらく生息モンスターの調査クエストが出るだろうから、金にもなるだろう。
 こんなかんじのリストだ。


 スライム目

 スライム:スライム
 グリーンスライム(旧:掃除スライム)…壁や窓などを掃除する・除菌
 レッドスライム(旧:変態スライム)…衣服を好んで溶解する
 パープルスライム(旧:えろスライム)…催淫効果のある液体を分泌する
 パラスライム(旧:穴スライム)…生物の腸内に住みつき、排泄物を糧にする
 ピンクスライム(旧:雌穴スライム)…生物の腸内に住みつき、排泄物を糧にする、催淫効果のある液体を分泌する
 シャドースライム(旧:影スライム)…影に潜み、対象の呼吸器官に入りこみ溺死させる
 etc
 ・
 ・
 ・


 スライムだけでも50種類近くいて、本当に大変な作業だった。
 レイ様の名づけは、本人の性格が非常によく出ている。本当に開けっぴろげで大雑把な人だ。
 だけど、この調子の名前のつけ方で50種類近くも記憶しているのは、ある意味、才能とも言える。色をわけて作ってくれたことだけは、本当にありがたいと思った。
 本人は「は?見た目変えなきゃわかんねーだろ」と言っていた。
 いや、そうなんだけど……! そうじゃなくてッ! 適当そうなのに、そういうとこだけはしっかりしててよかったってことだ。

 まあこんなかんじで、俺の日常は進んでいる。
 ひどい格好で拘束された冒険者たちが、管から栄養液を注がれているのを見ると、良心が痛むが、だんだんこのダンジョンにも馴染んで来てしまった。
 今まで雑巾のようにボロボロにこき使われていたのを考えると、わりと快適な日常なのだ。
 冒険者たちのことは、本当に申しわけなく思っている。

 それに、最近なんて給与も出してもらえるようになった。
 自分で準備しなくてはいけないものの、3食・住みこみ個室つき。しかもなんと自室に、取っ手をひねると適温のお湯が流れる『シャワー』という道具がついているのだ。貴族の家には、炎と水の魔法をくみこんだ、湯をわかす魔道具があると聞くが、俺みたいな平民は見たこともない。
 勤務時間は朝7時から夜7時までだが、便利な道具のおかげで、特にすることがない時間も多い。
 これから冒険者たちが増えたら、そうもいかないだろうが。

 あ、給与といえば――最近、もう1つ特筆すべきことがあった。
 それは、ある日「お前、服飾関係の知り合いがいるな」とレイ様が言い出したことに発端する。
 確かに1人だけ心当たりがあり、「なんでわかるんですか?」と聞いたら、また「勘」と言われた。まあ、そんなこんなで、いろいろあって……


 —— イザベラ・ビアズリー嬢が、このダンジョンに通うようになったのだ。
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