【BL】異世界転移をしたい腐女子の妹は、その妄想のすべてに陰キャの兄が巻きこまれていることを知らない

ばつ森⚡️4/30新刊

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第二章 NOAH

38 閑話:とある妹の目覚め

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 さいきん、お兄ちゃんのまわりに、お兄ちゃんの友だちが、よく、いっしょにいるようになった。
 私のクラスの山田くんの、お兄ちゃんだ。

 べつになにが気になるのかって。きかれても、よく、わかんない。でも、なんか、気になる。どうも、お兄ちゃんを見る目が、あやしい。
 私にはわかる。

(お兄ちゃん…ねらわれてる気がする)

 私は、小さい頃から、かおが、『はで』らしい。
 お人形さんみたい、げーのー人みたい、なんて、まわりの大人の人たちに、言われてきたけど、私のことをよくない風に言う人は『はで』だと思ってるらしい。
 でも、このかおのせいで、ゆうかいされそうになったことも、ある。でも、私はかしこいので、ぼうはんブザーを持っているから、大丈夫。
 それに、私をねらってくる人は、なんか、わかりやすい。げへへ、みたいな、かんじの、おじさん。そういう人は、目を合わさないように、ちらちら見てくるので、もう、私は、先にブザー押しちゃう。そうすると、すぐにげてく。
 やっぱり、『やましい』ことがあると、ブザーの音、こわいみたい。

 うちのお兄ちゃんは、私みたいに『はで』なかおではない。
 でも、見ていると、ふわっと、いい気もちになるような、そんな、やさしいかおだと、思ってる。それに、中みも、やさしい。
 お兄ちゃんは、私とちがって、わかりやすい『へんたい』には、好かれない。
 でも、私にはわかる。

(お兄ちゃんを見てるのは、みんな。ぼうはんブザーを押しても、「大丈夫?」って、さわやかに笑いかけてくるようなやつ…)

 お兄ちゃんは、『にぶい』。
 そういう人に近よられても、ふわっと笑って、「ありがとうございます」してしまう、たいぷ。そういう人の、目が笑ってないことに、気がつかない。
 だけど、───
 山田くんのお兄ちゃんは、ぜんぶ、気がついているみたいで、学校からかえってるお兄ちゃんたちを見かけると、山田くんのお兄ちゃんは、まわりをすごくよく見てる。それで、私があやしいと思ってたやつらが、どういうわけだか、お兄ちゃんのつうがくろから、いなくなっていった。
 もしかして、山田くんのお兄ちゃんが、やっつけたんだろうか。
 そして、私は思った。

(あいつ……やるな!)

 でも、ふと、見かけたのだ。
 いつもあんまり笑わない山田くんのお兄ちゃんが、なんだか、大好きなものを見るみたいに、やさしいやさしい目で、お兄ちゃんのことを見て、うれしそうにしていたところを。
 それで、私は気づいた。

(あれ。もしかして、あいつがいちばんやばいんじゃない!?)

 それからは、山田くんのお兄ちゃんは、『ようちゅういじんぶつ』として、私は、けいかいしている。
 それで、今日、───三年生が、私に『ちょっかい』をかけてきたのを見て、お兄ちゃんと、山田くんのお兄ちゃんが、それを止めようとして、ちょっともめた。三年生は「男のくせに女みたいなかおしやがって」とか、お兄ちゃんに言ってて、さいてーなやつだなと、思った。
 でも、もんだいは、その後の、ことだった。

 私は、山田くんのお兄ちゃんと、お兄ちゃんが歩いている後を、歩いてた。でも、公園の前まできたとき、お兄ちゃんたちは、公園ではなしがあるから、先にかえってて、と、言われた。
 家は、もうすぐそこだから、もちろんかえれる。私は、「うん」と言って、それで、かえるふりをして、さっとしげみにかくれた。
 山田くんのお兄ちゃんは、どうやら、ひっこししてしまうことを、お兄ちゃんにつたえたみたいだった。お兄ちゃんは、泣きそうなかおで、ぴたっと止まってしまって、うごかない。
 でもそのとき、山田くんのお兄ちゃんは、そんなお兄ちゃんを見て、よくわかんないことを、言って、とつぜんおこり出した。

「お前、いつになったら、前髪伸ばすんだよ!」
「え???」
「前髪!伸ばせよ!」

 お兄ちゃんは、泣きそうなかおのまま、だけど、そのいみがわからなくて、えっえっと、目になみだをためて、こんらんしていた。とつぜん、なかよしの友だちがおこりだして、どういうこと?と、また泣きそうになってるのがわかる。
 それを見て、私も思った。

(───え。どういうこと)

「え、、前がみ、の、のばした方がいいかな??なんか、変だった?」
「…………………チッ。そういうことかよ」
「えっえっ??」
「あーくそ…………だから!そばかすが!変だから、隠しとけって言ってんだよ!!」

 山田くんのお兄ちゃんは、大きな声で、叫んだ。
 ぼろっとお兄ちゃんの目から、涙があふれるのを見て、私はあわてた。てっきり、お兄ちゃんのことがすきだと思ってたのに、なにがおきてるんだ?と、ポケットのハンカチを探しながら、ちらっと山田くんのお兄ちゃんのかおを見たら、───

(わ……すごい、まっか……………あっ…そっか、そういうことか……)

 ひっこしで、近くにいられなくなるから、それでか、と、私は思った。やっぱり、山田くんのお兄ちゃんは、お兄ちゃんのことがだいすきなんだなあ。
 だけど、うちのお兄ちゃんは、そんなの言葉のまま、うけとっちゃうと、思った。見てたら、やっぱり、ぼろぼろ泣いてて、少しだけ、山田くんのお兄ちゃんが、『ふびん』だと思った。でも、───

「泣くなよ。でも、隠しとけって」
「へっへんって……み、みんなにはないなって、おも、思ってた、けど…」

 お兄ちゃんは多分、山田くんのお兄ちゃんがひっこしていなくなっちゃうのと、ちょっと気になってたそばかすのこと言われて、すごいびっくり!ていうかんじ、なんだろうな、と思う。ぽろぽろ涙をこぼしているお兄ちゃんを見て、山田くんのお兄ちゃんは、困ったような、『ふくざつ』そうなかおで、もう一度言った。

「変だから、───だから乃有。俺が戻ってくるまで、そばかす、隠しとけよ」
「うっうっふぇえ」

 全くつたわってないっていうのは、私に、すごいつたわってきた。
 お兄ちゃんは、そういうの、わからない、たいぷ。
 でも、───

 さらにはげしく泣くお兄ちゃんのほっぺを、両手でつつんだ山田くんのおにいちゃんは、すごくこまったかおで、「だからそんな泣くなよ」ってもう一かい言った。
 それから、かおをあげたお兄ちゃんに、見たこともないような、やさしい、やさしいかおで、わらった。

 なんでかはわかんないけど、心ぞうが、どきどきしはじめていた。
 山田くんのお兄ちゃんが、お兄ちゃんのことを好きなことは、知ってたけど、それって、もしかして、ぱぱと、ままみたいな、好き……なの?
 私は、まっかになりながら、お兄ちゃんと、山田くんのお兄ちゃんを、すごい見てた。
 そしたら、山田くんのお兄ちゃんが、───言ったのだ。


「        」


 思わず、小さく「えっ!」と、びっくりした声をあげてしまった。
 お兄ちゃんは、なんのことだかわかんなかったみたいで、目をぱちぱちさせていた。

(え?え?お兄ちゃん、おとこの子なのに!おとこの子、どうしなのに?!え?え?)

 私は、その日、人生ではじめて、はなぢを出した。
 それで、しばらく、どきどきして、ねむれないよるを、すごすことになった。

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