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二章 接吻

8 どうしてあのとき

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※両思い、対面座位、擬音、中出し、闇落ち。


 そびえる熱杭をまたがらされ、支える手の力がゆるめられれば、あとは男の意のままに、落とされるまま、挿入(い)れられる。ふっくらと蕩けきった可憐な花は、慎ましくも貪欲に、濡れた怒張を咥えこんでいった。

 ぬ、ぷ、ぢゅぅう……。

「んぁぁああああああッ───」

 どんなに濡れても、狭いものは狭い。大きいものは大きい。
 ぎちぎちと小さな蜜道をいっぱいにして、足らず、押し広げる。

 ぎち、ぎち、ぎち。

「ああっ、あああっ、ああああああっ、~~~っ!!」

 侵入してくるものの凶暴さに、身体は無意識に、上に逃げる。
 許さず、落とし込まれて、眼裏に星がとんだ。

「ひ、あっ、っっ……!」

「くっ、うっ、ああ……」

 男の掠れた嘆息が、娘をどくりと沸騰させた。

 ただでも熱くやわらかい蜜襞が、さらにふっくらとふくらみを増し、男の欲を包み込む。やさしく、そして貪欲に。濃やかなひだひだを一斉にさざめかせ、招き入れ。
 男はつりこまれて総毛立ち、一気に熱を増して、蜜壁をこねくった。

 どつっ、どつっ、どつっ、ざりざりざりっ、ぢゅぷっ。

 もう、外も中も、知り尽くしている。
 好きなところも、弱いところも、もっと本当に弱いところも。
 どうすれば啼き、どうすれば焦れ、どうすれば堕ちるかも。

「あっ、あっ、あっ、ああああんっ、いやぁっ」

 ぢゅっ、ぢゅっ、ぢゅっ、ざりりりっ。

 向かい合って座してつながり、持ち上げて降ろし、下からも突き上げる。
 この角度なら、抽挿のたびに陰核がこすれる。

 ぞくぞくっ、ぞくぞくぞく──

「ああああっ、あんっ、あんっ、ああああああぁぁぁ」

 経験したことのない、きもちよさだった。
 きもちよすぎて、おかしくなる。

「これっ、あっ、うそっ」

 ぞくぞくと這い上がる快感が止まらない。
 いつ果ててもおかしくない。なのに、まだ高まる。怖い。どこまで連れていかれるのか。

「あ、あ、あ、……っ」

「まだだ。もっと奥へ、入れてくれ」

 どんんっ、と、最奥から、さらに奥の口へと突き上げられた。
 息が止まる。
 きっともう全部、串刺しにされたのだ。
 打ちこまれた楔が脳天まで届いて、身体の中を、すべて埋め尽くしている。

「ああああああああぁぁ」

 なのにまだ尚、くりかえし、突く。

 ど、ど、ど、ど、ど、ど──。

「あっ、あっ、これっ、だめっ、あっ、あっ」

「だめ? なぜ。好きだろう?」

 どんっ、どんっ、どんっ、どんっ、どつどつどつ、どんんっ──。

「やっ、だって、だめに、なるっ、あっ、や、はや、あ、あ、ああああっ」

 ぞわわわわわ……──。

 だめ、と言いながら。白い裸体は、しなやかに伸び上がり、快感を追った。快楽でねじ伏せられて犯し潰されたあの夜とは違って、いまは素直に、ただ素直に、歓びを享受していた。

 だから、男が「あ」と思ったときには、もう全力で懐きに懐いていて。
 次の瞬間には、二人して目の前が真っ白に弾けていた。

 びゅびゅびゅっ─── びゅるるるるるるるっ── どぷっどぷっどぷっ──

 熱く注がれて娘がふるふると身を震わせ、それに煽られてまた吐精し、受けては高みに達して締めつけ、熱杭にえぐられて、また達する。灼けた鉄柱はいつまでも鎮まることを知らず、これ以上ないほどにやわらかくふくらんだ内襞と子宮は満たされる悦びに打ち震え、互いに求め求められて果てがなく、貪り合う二人はいつまでも離れられなかった。

 はあ、はあ、はあ、と荒い息をつきながら、また唇を重ね、貪りあう。
 甘い。
 舌をからめ、唾液をまぜあわせて、もう何もかもが甘い。

「だめになればいい。お前が言ったのだ、壊してほしいと」
「あ、んっ……」
「望み通り、してやろう」

 背筋を撫であげられて、ぞくぞくぞくっと粟立った。

 くらくらと、視界がまわる。
 真っ黒と真っ白が、次々と入れかわり、頭の芯がじぃんと痺れる。

 おじさま、と、首筋に顔をうずめた。
 あの匂いに包まれる。
 かなしみが押し寄せる。

「そうしなければ、お前は私から逃げるというのだから」

 ぎくりと、娘が身を弾ませた。

「隙をみて家を出るだと? させるものか」

 一気に体が冷える。
 くつくつと、酷薄な笑みをこぼす男は、あの夜の義父の顔に戻っていた。
 どうして?

「蕩けきってよがり狂うお前の口を割らせるなど、造作もない」

 いつ?
 ぞくりと。
 さっきまでとは種類の違う戦慄におそわれた。
 指先がつめたく震える。

──そんなの無理よ。
──なぜ? 
──だって、私はあの人の妻だもの。おじさまの、娘になってしまったのだもの。
──私よりも、あれを選ぶというのか?
──どうして今さらそんなひどいこと、言えるの。
──今さらではない。今だから言えるのだ。
──だって! だってそれならどうしてあのとき私を拐ってくれなかったの?
──……。
──選べない。もう、どちらも選べないの。お義父さま。
──……。
──だからもう、私を放して。

「ならばあれの妻でいるがよい」

 蜜のように甘い声でそう告げ、男は恋しい娘の手をすくいあげた。

「お前が私のものであることは変わらぬ」

 そう言って、ひたと見つめて、目を合わせたまま。

「あれの妻で、私の愛人。それでよい。二人分の愛をその身で受け止めよ」

 神々しいほど優雅に、跪かんばかりのうやうやしさで、白い手の甲に口づける。

「壊れるまで喰らい尽くすか、壊してから喰らい尽くすか。どちらにせよ、すべてお前の望むとおりに」

 そして声が、すうっと低まった。

「それでよいな、お前も」

 ふ、と、男の視線が後ろに流れたその先に、影が揺れる──。

 声の投げられた方へ目をやって。
 娘の喉を、声にもならない悲鳴が、切り裂いた。

 彼女の夫が、暗い目を爛々と燃やして、うずくまっていた。
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