【R18】今夜、私は義父に抱かれる

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二章 接吻

6 抱きしめて

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※キス、ディープキス、フレンチキス。


 泣き濡れた瞳がゆっくりと開いていく。
 眩しそうに目を細めて、懐かしそうに色をくゆらせて。

 世界が眩しい。
 目に映るすべてが、初めて見るように、新鮮だった。

 最初に目に入ったのは、その人の顔。
 美しく整った造作に、深い陰影。甘くとろける、熱いまなざし。
 艶めく双眸には、彼女の姿が揺れている。
 その深い湖に、どこまでも吸い込まれてゆく。

 唇が動いている。むろん、聞こえない。
 どうやら彼女の名前を呼んで、さらに何かを言っている。

 声も言葉も聞きたい。
 だが、それよりも欲しいものがあった。

「ほどいて」

 まず手が解放された。続いて足の拘束が外される。
 脚を結わえた布をほどく男に、娘の手がのびる。

「おじさま」

 頬を包み、鼻筋をたどり、顎を撫で、頭を挟む。
 まるで盲いた人がそうするように、指先で、掌で、義父の、否、初恋の男(ひと)の姿をたしかめ、写しとっていく。

 無心に見上げる大きな瞳は、怖いほどに澄んでいた。
 ひとしきり撫でつくし、すらりと細い二本の腕で、男の頭を掻き抱く。

「抱きしめて」

 言い終える前に、身体をさらわれていた。
 精悍な腕に力強く抱きしめられる。

 ぎゅうっと抱かれて、奥底から、震えが走った。

 びくん──!

「あっ」

 がくんと腰が砕ける。
 脱力した己の一切を、逞しい胸に預けた。

 すり、と。
 指の背が頬を撫で、唇が重ねられる。
 やわらかく、あたたかい。
 割り入ってきた舌も、やわらかくて、あたたかい。

 歯列をたどり、奥へと進む舌先の動きはやさしい。
 触れた瞬間びくんと跳ねた不慣れな舌に、強いることなく、ゆっくりと近づいていく。

 急激な記憶の再生に、娘は混乱していた。
 だが、いくつもの矛盾する気持ちに戸惑いながら、無心に応えようとしている。
 けなげとも、無垢とも、危ういとも、淫らとも。
 その脆さ、儚さが、男を駆りたて、たまらなく煽る。


 長い長い口づけを交わした。
 合間、合間に、濡れたまなざしを絡ませて。
 互いを呼ぶ名は、互いの唇に吸い込まれて、声もなく。

 やわらかな舌を、強く絡めることなく、ゆっくりとなじませていった。
 やさしい口づけは、幼い少女だったかつての娘の哀しみを、溶かしていった。
 記憶を封印して、恋しい人の息子と結ばれてしまったひずみに、沁みわたっていった。
 犯された傷痕を、愛された記憶に、塗りかえていった。

 どれだけそうして接吻を交わしていたか、わからない。

 すっかりとろけた舌を、やさしく甘やかに、ただ重ねて、合わせて、たしかめあって。
 これまでが嘘のように、静かで深い口づけを。
 飽きず、とろけ落ちるまで、交わしつづけた。
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