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一章 初夜

10 白闇

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 ずるりと抜かれる感覚に、ぶるぶるぶるっと震えが走った。

「あ、あ……」

 無惨なまでに散り敷かれた花唇が、ひくん、ひくん、と生き物のように収縮する。その脈動に合わせて、こぽ、こぽ……と。混じりに交じった体液が、いつまでも吐き出され続ける。

 ぞくっ── ぞくぞくっ。

 後から追いかけてくる身震いが止まらない。

「あ、あ、あぁ……」

 義父の手が、ぐいと両脚を押し開いた。

「は」

 開かれて、とぷん、とぷん、と、尚もぬるみあふれ、小さな川をつくって流れ出た。
 男はそれを、満足げに目を細めて見つめている。

 若妻は、ぼおっとした頭で、ふと不思議を感じた。

 早く子供が欲しいと願う彼女の夫は、子種が流れ出るのをいつも惜しんだものだった。営みが終わった後も、そのためにしばらく彼女の中に留まることを好んでいた。そうして静かに抱き合っている優しい時間を、彼女も愛していた。

 花唇の痙攣はなかなかおさまらない。繰り返し達しつづけた余韻が、長く続く収縮をもたらしている。男の手で開かされたままの脚の間からは、とぷり、とぷり、と、男の精と女の蜜がいつまでも吐き出される。

 孕めと言いながら、こうして子種を流させるのだ。

 そのうえにも、蜜壺を、外から軽く押されて、またコポ…と溢れ出た。

「もう、ぱんぱんだな」

「んっ」

 何度も何度も何度も何度も犯され、中に吐精された。
 そのたびに、限界まで感じさせられ、限界をこえて泣き叫んでも、気を失っても、止めてもらえない。
 全身いたるところに悦楽と所有のしるしが刻まれた。あるいは淡く、あるいは濃く。もはやその全てが彼女の弱点になっていた。

 押された下腹部から、甘い快感が全身に響き渡る。

「ふ、あぁ、んんんっ!」

 とろけた声が鼻から抜けていく。子猫がじゃれつくいじらしさで。愛撫をねだるあどけなさで。

「まだ欲しいのか?」

 凄艶な笑みをうかべて、ねっとりと腹を撫でる。
 整った顔立ちの妖艶な表情は、ぞくぞくするほど蠱惑的で。
 溶けた鋼のようなまなざしに舐められると、なすすべもなく身を晒すしかない。
 腹に円を描く掌の熱さに、また中がとろけた。

 こぽ…、こぽ……。

「構わぬ。いくらでもこぼせば良い。こぼしただけ、また呑ませてやる」

 ぞくん──。

 それでは永遠に終わらない。
 そう思った瞬間、身体の芯がビイィンと痺れた。

 ひく……。

「あ、あぁ」

 こわい。
 もう戻れない。
 途方もなく堕ちていく。
 途方もなく甘やかな、白い闇。

「今度はお前が上だ」

 ぐいと腕を引かれた。

「おいで」

 なまめかしい声に低く囁かれて、引き上げられた身体は腰から崩れ落ち、仰向けになった義父の腹上にまたがっていた。

「ひぁっ」

 やわらかい寝台に沈む萎えた膝では、身体を支えられない。逞しい胸についた両手と、腹にべちゃりと音をたてた内腿に、軽いとはいえ体重のすべてがかかる。

「上でしたことは?」

 あるはずがない。
 素直にふるふるとかぶりを振る。
 だが、そうした後でにわかに湧き上がった羞じらいが、乳白の頬をぽっと染めた。

 義父の屹立を体前においていなかったことは、彼女にとって幸運だったろう。
 あまりに愛らしい反応を前に、男の怒張は一気に猛った。
 白い臀部の後背で、ぬんと伸び上がって、待ち遠しそうに打ち震えている。

「煽るな」

「?」

「手を、しっかりついておけ」

 そうして、蜂腰を軽々と持ち上げ、己の上に落としていった。

「ん、あっ、あっ、ああ、ふ」

 腕ががくがくと震え、力が抜けそうになる。
 汗やら何やらですべりもする。

 だが、腕の支えを失ってしまえば、ただ一点のそこで全身と全体重を受け止めることになると、身体が本能的に悟っていた。

「次は自分で挿入(い)れてもらうが、最初だからな」

「えっ、や、これ、こわい、あっ」

 いつどう落とすかは男の両腕次第だ。
 もし手を離されでもしたら……。

 じゅぷ……。

 ゆっくりと、太い杭が白い裸身を貫いていく。

 ずちゅっ── ずちゅっ──

「心配しなくていい。もうぜんぶ入る」

「え」

 ぢゅっぷ。

「ああ、いい眺めだ」

 豊かな胸を突き出し、艶のある髪を散らす、可憐な若妻を仰ぎ見る。
 男は眩しそうに目を細めて、小さく微笑んだ。

「そのまま、手をついていろ」

 とん……。

「あん」

 とん、とん、とん、とん、とん、とん──。

 上に跨がらせたまま、小さな律動を下から撃ち込みはじめた。
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