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第二話 焦熱~繭の戯れ

#10 聞いてません

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 指で奥を慰めながら、丁寧に丁寧に舐めつくされた。熱く、柔らかく、いやらしく。
 花の頭の中はもうぐちゃぐちゃだ。目の前が真っ白になりかけている。

「あっ、あっ、あっ、あん! あぁ……」

 Dの顔がへそから下へ降りていく。
 その口が陰核に近づくのを感じて、花はびくりと跳ねた。

 そこは、指を挿入する前にはたっぷり舐められ、吸われ、魔性の口淫の洗礼を存分に受けた。が、それ以降は触れられていなかったのだ。

(うそ)

 胸でも無理だったものを。
 それとそれを同時は、本当に無理だ。

「だめ、待っ……~~っ!!」

 待って、と言う隙を与えず、Dは容赦なく芯芽にしゃぶりついた。

「ひぁ…」

 白い身体が、がくんと大きく痙攣する。

 もしもそれがそのまま続いたならば、一瞬にして達するか、完全に意識が飛んでしまうかしていただろう。もしかしたら失神していたかもしれない。

 だが──。

「蝶子」

 ささやく小声で、しかしはっきりと、Dはそう呼んだ。
 赤い女芯を口に含み、艶やかすぎる濡れた瞳で彼女の視線を奪いながら。

(えっ?!)

 そして、呼び出されるや、悔しいほど素直に、“蝶子”は出てきてしまった。

(待って、嘘でしょ? そんないきなり、何よそれっ?!)

 狼狽のあまり、されたことのない呼び捨てだったことも、するりと流してしまった。

 ぬろ……──

「う、そっ……!」

 いまだかつて経験したことのない禁断の口淫。
 それは、蝶子にとっても未知の快楽だ。

 さっきは“花”越しだったが、今は違う。
 むきだしの“蝶子”自身が、封印を解かれた超絶技巧をじかに受けていた。

 ずずずずずずっ──

 ぞわぞわぞわっと吸い上げられて、目の奥がちかちかした。

「馬鹿……! こんなの、聞いてないっ!」

 ずぅぅぅぅっ──

「ひぅ……!」

「今日だけですよ? 僕はクンニはしないんですから」

「そうじゃなくてっ」

(それもあるけど!)

 Dの瞳は、この上なく甘い蜜で覆われて、熱く切なく濡れていた。
 蝶子は赤面した顔を背けて、喘ぎまじりに抗議する。

「こんな、あっ、話が違……あんっ!」

 性にも快感にも不慣れな、青い身体の娘、“花”。
 そんな処女になりきってのシチュエーションプレイだったものを、いきなり生身の蝶子を引きずり出すなど、反則にもほどがある。

(馬鹿馬鹿馬鹿! Dの馬鹿っ!)

 “花”ならば、何も考えずにいられた。
 頭も意識もぐちゃぐちゃに吹っ飛んだまま、わけもわからず翻弄されていればよかった。
 だが蝶子では、もろに受けてしまうではないか。
 蝶子自身は、“花”の奥に隠れているつもりだったのに。

 しかし、それを素直に白状するのも、悔しかった。
 悔しいと思えるほどには、正気が残っていた。

「今日は、玩具でって……言ったでしょっ」

「だって、貴女が嫌がったから。オモチャより僕のがいいって、泣いてねだったのは貴女でしょ?」

「それは花! 私じゃないわ」

「ああ、そうでしたっけね」

 れろろろろろろ、ぢゅぅっ──

 ぬけぬけと、とはこういうさまを言うのだろう。

「よくもそんな……あああああっ!」

 舌先で細かく嬲られ吸われて、言葉を失う。

「人間“吸うやつ”ですよ。やっぱり蝶子さんはオモチャより生がよさそうですね」

──無粋な吸引はクンニの代わりにはほど遠いし、バイブとしてはものぐさすぎる。同じ場所で震えてるだけなんて、ただのでくのぼうじゃない。

 以前、蝶子がそうくさした殿堂入りの玩具を、口と手で再現したとでも言いたいのだろうが。

(悔しいけど、これ、すごすぎ……)

 指は、いつのまにか二本に増えていた。

「蝶子さん、目線」
「?」
「目を離さないでって、言ったでしょ?」
「それ、もっ、花っ……!」
「そうでしたっけ?」

 ぐっぢゅ、ぐっぢゅ、ぐっぢゅ……──

「んあああああっ……!」

 柔襞をかきまぜ、奥の口をノックし、こりこり、とんとんと子宮をうかがう。
 そうしながら、口と舌は奉仕しつづけている。

 ずずっ、ずずっ、ずずっ、ずずっ、ずずずずずっ──

 ただ、吸い方が、ひどく淡い。核の周囲をすっぽりと口に閉じ込めてはいるが、肝心のところにはどこも触れていない。触れそうで触れないまま、ぢゅっ、ぢゅっ、ぢゅっ、ぢゅっ、ぢゅっ、ぢゅっ、と、延々と吸って吸ってをくりかえす。

「あああああああああああああああああああああああ」

 おかしくなりそうだ。

 こんな風に舐められたことはない。
 こんな口淫は経験したことがない。
 気持ち良すぎて、おかしくなりそうだ。
 熱すぎて、上手すぎて、もどかしすぎて、何より甘すぎて、勘違いしてしまいそうになる。

(なんて目で見るのよ……)

「蝶子さん」
「馬鹿っ、……喋んない、でっ」

 女のもっとも弱いところを、吸いたおす合間に咥えたまま喋るなんて、どれだけ悪魔なのだろう、この男は。

 言ったそばから、くすりと笑みこぼして、また喋る。

「可愛い」
「………!!」

 それでもまだ蝶子が絶頂を迎えないのは、指も舌も唇も、絶妙に刺激をセーブされているからだった。
 蝶子の身体のことなら、Dはよくよく知っている。
 弾けないぎりぎりで、上げたり下げたりして、焦らしているのだ。

(こんなの、知らない…!)

 もう降参してしまいたい。
 でも、それと同じくらい、ずっとこうしていたかった。

「蝶子さん、まだいける?」
「え?」
「こっちも、足してみよっか」
「?」

 絡み合った手が、胸の頂を転がした。

「ああああああっ!」

 蝶子の手の甲とDの指が、かわりばんこに乳首を擦る。

「ひ!あ!っ!んあっ…!~~~かはっ」

 ゆすられる手の下で、真っ赤に勃った乳首が右に左にといいように転がされて、信じられないほど乱れてしまう。吹き飛ばされる。

「やっ、だめっ!!」
「だめ? どうして?」
「馬っ、だから喋っ……ひぁ!!」

(無理無理無理! こんな三所責め、ほんと無理っ)

 高い嬌声はまもなく涙声になり、いつしか掠れた呻き声になっていった。



次ページへ続く
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