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#7 禁断の口づけ

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 今日は何のタブーもない。
 全身くまなく撫で、舐め、愛で尽くす。

 店では禁忌の技も躊躇なく使い、蝶子の秘められた花唇をたっぷりと舐めあげた。

「ああああっ」

 溢れ出る蜜をかき分けて核を吸い出し、舌先で転がしては舐め上げ、上下左右になぞって、優しく追い込みつづける。超絶技巧すぎて女を狂わせると仕事では封印された、禁断の口淫だ。

「あっ、あっ、やっ、あん、ああんっ」

 罪な舌技を惜しげもなくふるわれて、蝶子はあっというまに溺れた。

 しかも、そうしながらつぷりと挿入された指は、狙い定めていいところを可愛がりにかかっている。内側から腹に向かって押し擦られれば、外からと中からの熱が渦をまいて、もう頭が真っ白にスパークしてとまらない。

「あっ、いいっ、ひあっ、だ、だめっ、だめだめだめ、待ってお願い…っ」

「何がだめ?」

 とろけるような甘い目と声。脳みそまで溶かすほどの。

「だって。こんなの、すぐダメになっちゃう」

「ダメになってください。今夜くらい」

「……」

 わけもなく涙腺がゆるみそうになった。

 これは“ごっこ”だ。わかっている。言い出したのは自分なのだ。
 だからわかっている、はずなのに。

「ね、俺が全力であなたを溺愛する。だからぜんぶ任せて。ダメになって。どこまでも甘やかしてあげるから」

 こんなの困る。無理だ。
 感じるたびにときめいてしまう。とめられない。

 びくん、びくんと、身体が暴走しはじめた。

「あ、あ、あ、あ、あああっ」

「可愛い。蝶子、愛してる」

 ちがう。これは本心じゃない。
 そういうプレイだ。
 勘違いしてはいけない。

 でも、とまらない──。
 どんなに言い聞かせても、気持ちが暴走してしまいそうだ。

「ッ───!!!」

 堪えようもなく快感が弾けた。
 余韻に震え、脱力していく蝶子を、甘い視線が見つめている。

(あ……)

 視線が熱い。熱くて、くすぐったい。

 甘やかされるって、なんてくすぐったいんだろう。
 そして、なんて気持ちいいんだろう。

 蝶子は震える手で相手の肩に触れた。

「ね、座って?」
「え?」
「いいから」

 ベッドに腰かけさせ、自分は床に膝をつく。

「蝶子さん、それは」

 意図を察したDが、珍しくも狼狽した。
 ちょっと気分がいい。

「そんなことしなくていい」
「いいから。させて」
「ちょ、……っ!」

 猛々しくそびえ、先走りで濡れる男根に口づけると、ぴくりと震えて、少し大きくなった。素直な反応が愛おしい。

 ぢゅっ──

 音を立てて吸いつき、裏筋を下から舐めあげる。
 亀頭の先まで登りつめたところで、小さな口に入るだけ受け入れた。

「う、く……」

 熱い。弱い上顎をごりごりと刺激されて、腰のあたりにじぃんと甘い痺れが走る。

「ん、はっ、っ……」

 何もせずとも息があがる。
 舌を使うとまた口じゅうが暴れる熱杭に嬲られ、溢れた唾液が顎を伝って、したたった。

「はっ……」

 涙目になって、手を添える。
 見上げると、目で犯さんばかりの熱視線に射抜かれた。

 かしずいた女が健気に尽くす、そんな姿がどれほど雄の征服欲をくすぐり、劣情を猛らせるか、冷静なときなら思いいたらない媟子ではない。なんとなれば、彼女の書く官能小説にはそんな扇情シーンが何度でも登場するのだ。

 だが今は、そんな余裕は一切なかった。
 ただただ夢中だった。

 口の中には雄の匂い。
 熱のこもる腰がひとりでに揺れ、胸の先は人肌恋しく凝って疼く。

「あ、ふ、ぅ……」

 膨らんだ頬が掌に包まれた。外からそっと撫でられているだけなのに、口腔内がぞくぞくと粟立って、何も考えられなくなっていく。

「ほんとに弱いよね、口」

 吐息まじりで愛おしそうに目を細め、両手で蝶子の頬を手挟んだ。
 くるむように外から撫でる動きひとつが、まるで中を掻き回すのと変わらないほど蝶子を追い詰める。

「んっ、んっ、ん、う」

 どこにも逃げ場はない。口じゅうが彼のものに征服され、支配される。だが、それも自らすすんでのこと。

 なおも口を開き、もっと奥へと受け入れた。

 うぐ、と息が逆巻いて、生理的な涙が溢れる。

「はっ、あ……」

 壊れる。壊されてしまう。必死に守ってきた殻を打ち砕かれて。着込んだ鎧を剥ぎ取られて。
 粉々のプライドのなかにこうして跪く、こんな隷属の悦びを蝶子に教えたのは、Dだった。

「あぁ」

 背中の筋をずるずると抜き出されたように力が抜けて、知らず手が、己の秘所にのびていた。

「だめだよ」

 はっしと腕が掴まれた。

「させない。俺がいてそんなこと」

 ちゅっ、と額に触れるだけのキス。

「おいで」

 それだけで達しそうな濡れた声と共に、ふわり、身体が引き上げられた。
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