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王妃様と七人のドワーフ

【1コマ目】王妃様の毒林檎

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七人のドワーフは、森の奥にぽつんとある一軒家に暮らしています。
白雪姫がここに来て、もうどれだけ経ったでしょう。
月が欠けては満ち、満ちては欠け、そして季節が巡ってゆきました。

ある日、七人が仕事を終えて帰ってくると、ひとりの怪しい女が家のまわりをうろうろしていました。
黒いマントのフードを深々とかぶり、まるで魔女のように腰が曲がっています。

ですが、フードの中の横顔は宝石のように美しく若々しく、きらきらと輝いているではありませんか。
きっと身分の高い人に違いありません。

「高貴なお方。わが家に何か?」
「俺、このひと知ってる。お城のお妃さまだよ」
「そのような方がなぜこんなところに?」
「しかもなぜそのようなお姿で?」
「そのリンゴは?」

お妃様がもつカゴには、真っ赤なリンゴがいくつも入っていたのです。

お妃様はびっくりした顔で振り返り、その拍子に、曲げていた腰がしゃんと伸びてしまいました。
白百合の肌に空色の瞳、そこに蜂蜜のまつげが神々しいほどの輝きを添えています。
さくらんぼの唇と茜色の頬にはまだあどけなさが残り、まるで少女のよう。
ほっそりと長い首に、華奢な肩。マントやフードでは隠しきれない、若さと儚さと麗しさでした。

「おやおや、これはこれはお美しい」
「白雪ちゃんを殺そうとしたってホント?」
「しかしなんともお美しい」
「思ってたのと違わぬか?」
「うむ、陰謀や策略を弄されるような方ではなさそうな」

王妃様はカゴをマントの下にしまいこみました。
じつはリンゴには恐ろしい毒がたっぷり塗られていたのです。

王妃様はそしらぬ顔をし、威厳ある声をつくってドワーフを問いただしました。

「そなたらは?」
「森に住むドワーフでございます」
「そなたらが白雪を助けたのか?」
「まあ、そういうことになりますかね」
「ここにかくまっておるのか」

王妃様の眉がキリリと険しくなりました。

「けしからぬ」

七人は、王妃様を取り囲みました。
ドワーフといっても、必ずしも体が小さいわけではありません。
ここの七人は普通の人間とまったく変わらぬ身の丈をしていました。
いえ、むしろ中には普通より背の高い者もいるほどです。
しかも、シワシワでも年寄りでもありません。
皆、たいそう見目麗しい少年、青年、壮年ばかり。
そんな七人の男に取り囲まれると、華奢な王妃様は、まるで狼の群れの中のうさぎでした。
王妃様は、肩をいからせて、自分を取り囲む七人を見回しました。

「あれはこの国に害なす者。妾が処刑を命じた者じゃ」

いちばん年長の凛々しいドワーフが、優雅に一礼して言いました。

「美しい王妃様、お怒りをおおさめください」
「そのようなお顔をなさっては、お美しさが台無しです」
「な、何?!」
「怒るとシワができちゃうよ」
「せっかくそんなに綺麗で可愛いのに」
「綺麗で可愛い? 妾が? そなた、真実そう思うのか?」
「神かけて」
「白雪より?」
「あたりまえじゃん」

即答したのは、いちばん年若の、くりくり巻毛の少年でした。

「白雪も美人なんだろうけど、僕はああいうおっかないのはタイプじゃないんだ。あなたほど綺麗で可愛くてそそる女性(ひと)は初めてだよ。ねえ、飴をもらってくれる?」

「ズィー、王妃様に対して無礼であろう」

最年長のドワーフが諌めましたが、ほかのドワーフも末っ子の味方をしました。

「よいではないか。おもてなしせねば」
「リンゴをお持ちくださったのだから」

長髪のドワーフは、そう言って、マントの下からカゴを奪いとりました。

「あっ」
「ありがたくいただきましょうぞ」
「そ、それはっ」
「何か?」
「い、いや、その」

まさか毒入りとは言えません。

ドワーフはにっこり微笑んで、カゴを高く掲げます。

「ではこれは置いておくとしましょう。それより飴をさしあげますよ」
「飴?」
「うん、僕らの飴だよ」
「きっとお気に召します」

いちばん大柄なドワーフが王妃様のフードをはねのけました。
「な、何を」
長髪の優美なドワーフはマントをほどいて肩に手を置き、ズィーと呼ばれた青年が王妃様の腰に手を回しました。
「あっ」
王妃様の腰は折れそうに細く、片手にも余るほどでした。

「そ、そなたら一体」
「美しい王妃様。あなた様に我らの飴をさしあげましょう」
「ドワーフの飴はひと味ちがうからね」

耳元でささやく声に、王妃様はぞくぞくと身を震わせます。

「あ…」

「味わってください」

そう言って七人は王妃様を家の中に連れ込みました。

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