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白雪姫と鏡の精
【1コマ目】鏡の精
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お城を逃れた白雪姫がドワーフの小屋で暮らし始めて、三月が経ちました。
ある日、白雪姫は納屋で一枚の鏡を見つけました。
ボロ布で何重にも包まれた、古い小さな手鏡でした。
「まあ」
この家に来て初めて見る鏡です。
以前ドワーフに尋ねたときには、「うちに鏡はない」と言っていましたが、それは間違いだったようです。
白雪姫は、思わず話しかけてしまいました。
「久しぶりね、鏡さん」
すると、鏡面がかげろうのように揺れはじめました。
そして、鏡の中に黒い影がゆらめくではないですか。
「こんなところにいたのか、白雪」
「あっ、あなたは」
そうです、鏡の精です。
「お城に住むあなたが、どうしてこんなところに?」
「私は城に住むのではない。鏡に棲む。すべての鏡は私に通じる」
鏡の精の姿が、今やくっきりと像を結んでいます。
夜色の髪に黒曜石の瞳。肌は磁器のようになめらか。
白雪は、彼ほど美しい人をこれまで見たことがない、と、こうして見るたびに思うのでした。
「もう会えないと思っていたわ」
「鏡があれば、そこに私がいる」
「ねえ、どうしてあなたはあんなことを言ったの」
─ ─この世でいちばん美しいのは誰?
─ ─それは白雪姫です!
「嘘はつけないからな」
でもそのせいで、白雪はお城を追い出されてしまいました。
「殺されそうになったのよ」
「無事でよかった」
「大変なめにあったわ」
「かわいそうに」
「……ひどいひと」
白雪の目から大きな水晶のような涙がひと粒こぼれました。
「かわいそうな白雪。なぐさめてやろう。こっちへおいで」
「いや、行けないわ」
「なぜ?」
「だって私」
「いいからおいで。こちらで話そう」
「むりよ」
「またあの頃のように、ふたりで遊ぼう」
「でも」
「君の好きな当てっこもしよう」
「……」
「気持ちよくしてやる。好きだろう?」
「だめ。だって私もう……」
抗いながらも、白雪はふらふらと鏡に入ってしまいました。
「つかまえた」
鏡の精が白雪姫を抱きすくめました。
やわらかな体は、鏡の精のしなやかな腕に捕えられてしまいます。
「さあ、いつもの当てっこをしよう。久しぶりだな。はじめるぞ?」
彼の指が、ミルクの頬をつつきます。
「ここはどこ?」
「ほっぺ」
「ここは?」
「おでこ」
「ここは?」
「鼻」
「ここは?」
「くちびる」
鏡の精は、次々と白雪にふれていきます。
「ここは?」
「くび」
「ここは?」
「えっと、くび?」
「のどだよ。次はここ」
「…のど?」
「鎖骨だな。じゃあここは?」
「あ…」
「ここは?」
「む、胸…?」
「あたり。じゃあ、ここ」
「胸」
「ここは?」
「また、胸…」
「ここはどう?」
ささやく声が、ふいに低くなりました。
「っ」
「言ってごらん?」
「胸……」
「ほんとに? ここだよ?」
「し、知らな…っ」
「勃ってきたな。可愛い」
「あっ」
「お前のいちぼん好きなところだ」
「ああっ」
「なるほど、服の上からでは足りぬのか」
「ひあっ」
鏡の精は、白雪姫の服の紐をするするとほどいてしまいました。
ある日、白雪姫は納屋で一枚の鏡を見つけました。
ボロ布で何重にも包まれた、古い小さな手鏡でした。
「まあ」
この家に来て初めて見る鏡です。
以前ドワーフに尋ねたときには、「うちに鏡はない」と言っていましたが、それは間違いだったようです。
白雪姫は、思わず話しかけてしまいました。
「久しぶりね、鏡さん」
すると、鏡面がかげろうのように揺れはじめました。
そして、鏡の中に黒い影がゆらめくではないですか。
「こんなところにいたのか、白雪」
「あっ、あなたは」
そうです、鏡の精です。
「お城に住むあなたが、どうしてこんなところに?」
「私は城に住むのではない。鏡に棲む。すべての鏡は私に通じる」
鏡の精の姿が、今やくっきりと像を結んでいます。
夜色の髪に黒曜石の瞳。肌は磁器のようになめらか。
白雪は、彼ほど美しい人をこれまで見たことがない、と、こうして見るたびに思うのでした。
「もう会えないと思っていたわ」
「鏡があれば、そこに私がいる」
「ねえ、どうしてあなたはあんなことを言ったの」
─ ─この世でいちばん美しいのは誰?
─ ─それは白雪姫です!
「嘘はつけないからな」
でもそのせいで、白雪はお城を追い出されてしまいました。
「殺されそうになったのよ」
「無事でよかった」
「大変なめにあったわ」
「かわいそうに」
「……ひどいひと」
白雪の目から大きな水晶のような涙がひと粒こぼれました。
「かわいそうな白雪。なぐさめてやろう。こっちへおいで」
「いや、行けないわ」
「なぜ?」
「だって私」
「いいからおいで。こちらで話そう」
「むりよ」
「またあの頃のように、ふたりで遊ぼう」
「でも」
「君の好きな当てっこもしよう」
「……」
「気持ちよくしてやる。好きだろう?」
「だめ。だって私もう……」
抗いながらも、白雪はふらふらと鏡に入ってしまいました。
「つかまえた」
鏡の精が白雪姫を抱きすくめました。
やわらかな体は、鏡の精のしなやかな腕に捕えられてしまいます。
「さあ、いつもの当てっこをしよう。久しぶりだな。はじめるぞ?」
彼の指が、ミルクの頬をつつきます。
「ここはどこ?」
「ほっぺ」
「ここは?」
「おでこ」
「ここは?」
「鼻」
「ここは?」
「くちびる」
鏡の精は、次々と白雪にふれていきます。
「ここは?」
「くび」
「ここは?」
「えっと、くび?」
「のどだよ。次はここ」
「…のど?」
「鎖骨だな。じゃあここは?」
「あ…」
「ここは?」
「む、胸…?」
「あたり。じゃあ、ここ」
「胸」
「ここは?」
「また、胸…」
「ここはどう?」
ささやく声が、ふいに低くなりました。
「っ」
「言ってごらん?」
「胸……」
「ほんとに? ここだよ?」
「し、知らな…っ」
「勃ってきたな。可愛い」
「あっ」
「お前のいちぼん好きなところだ」
「ああっ」
「なるほど、服の上からでは足りぬのか」
「ひあっ」
鏡の精は、白雪姫の服の紐をするするとほどいてしまいました。
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