不死の妖

アリエッティ

文字の大きさ
上 下
8 / 11

斬裂の風

しおりを挟む
 山頂、もはや死の淵と化したこの場所で息を忘れた妖達が談笑に耽っていた。

 「鵺がやられたらしいなぁ..」

 「はぁ? アイツ死んだワケ!?
結局クチだけじゃない、喧嘩売るだけ売ってさ~。」

「相手はいつもの連中か?」

「他に誰がいる」

「..まぁ、それもそうだな。」
妖同盟はあくまで同志の集い、仲間や絆といった強固な繋がりは無い。味方が死のうが斬り刻まれようが〝知り合いの葬式〟程度の感覚である。

「次は誰が行くんだぁー?」

「アタシがいくわ、丁度新しい力を試したくてウズウズしてんのよ!」

「鎌鼬《かまいたち》か、本体は鎌か? 鼬なのか?」

「どっちでもいいでしょっ!」
安価な捨て台詞吐きながら山を降りていく。仲間意識の無い妖共は味方同様人にも関心が無く、手頃なエサもしくは遊び道具としての認識程度しか無い。

「待っていなさい侍共。
アタシが八つ裂きにしてあげる..!」
よって人を殺める事も、餓鬼の遊びと変わらない。


「よっ、帰ってきたか大将。」

「..無事のようだな、お前達」

「無事って訳でも...無ぇんだけどな」「..ほう」
早助と吾太郎は、お互いに起きた出来事を話した。
唯の一つ目が傷を受けて巨大化した事、鵺が地形を変えた事。

「てぇ事はあれか?
その鵺ってのは戦いやすい場所を...」

「己で創り上げた。」
現実の地形に幻想の地形を
死という概念を超越した事で力の際限が無くなり妖力が最大限の展開をするようになった。

「何でそんな事が出来るんだ?」

「..おそらくだが、奴等は既に死んでいる
死者に底なし、縄を切られた荒れ狂う暴獣と化しているのだろう。」

「嘘だろ...そんな事、だが不思議としっくりくるな」
強靭な鬼、力有る一つ目..どれもタガを外したように目一杯の腕力を奮っていた。恐れも無ければ心も無くただ暴れるだけの文字通りの化け物のようだった。

「一体誰がそんな事を?」

「確か..」

『そんなの誰だっていいじゃないっ!』
頭上から声が聞こえる。甲高く、酷く耳障りな声。

「誰だてめぇっ!?」

『また質問? 好きね質問、アタシは大っ嫌い!』

「..鎌鼬、今度は貴様か。」

『何よ、知ってるヤツいるじゃない!
そうアタシは鎌鼬! 操るのは風、受けてみてよ!』
両手に鎌を大きく振るい、隊を巻き込む竜巻を発生させる。巻き込まれた隊士と隊長達はバラバラの方角へ吹き飛び四方へ放たれた。

『キャハハハッ!! さぁてと、この中で面白そうなのは~..アイツとアイツッ!!』
視線の先には隊長と副隊長、早助と吾太郎だ。

『ヌエを殺したのはどっちかなっと..こっち?』
勘を働かせ、早助の方角へ転換する。

『そっちはお願いね風ちゃん!』
吾太郎の方角へは小さな竜巻を幾つか飛ばし、二人の方角を大きく囲うように己の戦場を展開する。

『逃がしゃしないわよ? 
後の連中はどーでもいーけどー。』
隊士は何組かに分けゴミのように適当に捨てた。山の住人が不法投棄とは笑えない暴挙であるが、住処をどう使おうが家主の勝手である。

「イテテ...おい、起きろ!」

「...俺たちどうなっちまったんだ?」
何でもない山道の飛ばされる者達

「おい..小屋まで戻されてるぞ...!」
来た道を還される者達

「.......ん...」


『…ケケッ..!』

「....おい、嘘だろ..?」
妖の住処に誘われた者。
流れ着いた先は正に様々である。

『ケケケケッ..!』

「待て、待てぇ~っ!!」
(なんで俺だけ河童の群れに!?)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

未来から来た美女の俺

廣瀬純一
SF
未来から来た美女が未来の自分だった男の話

日本昔話村

たらこ飴
SF
 オカルトマニアの唐沢傑は、ある日偶然元クラスメイトの権田幻之介と再会する。権田に家まで送ってくれと頼まれた唐沢は嫌々承諾するが、持ち前の方向音痴が炸裂し道に迷ってしまう。二人が迷い込んだところは、地図にはない場所ーーまるで日本昔話に出てくるような寂れた農村だった。  両親が若い頃に体験したことを元にして書いた話です。

裏切りダメ、絶対。

胸の轟
SF
幼なじみの描く未来に、私は存在しなかった… ※望まない行為を強いられる描写があります

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】永遠の旅人

邦幸恵紀
SF
高校生・椎名達也は、未来人が創設した〈時間旅行者協会〉の職員ライアンに腕時計型タイム・マシンを使われ、強引に〈協会〉本部へと連れてこられる。実は達也はマシンなしで時空間移動ができる〝時間跳躍者〟で、ライアンはかつて別時空の達也と偶然会っていた。以来、執念深く達也を捜しつづけたライアンの目的とは。

処理中です...