Metropolis

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番外編

白桃メリフルアス*

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「桃?」
「ええ。地球産ですよ」
「へぇ、それは美味そうだな」

同じモーテルに滞在している間に、アベルが顔馴染みになったマルシェの女主人から、桃を貰ってきた。紙袋に入っている時から既にそれは甘い香りを放っていて、部屋には熟れた果実の匂いが漂っている。

シンクに立つアベルは、寸分の狂いも無く桃の皮をナイフで流れるように薄く剥いていく。僕は後ろからその様子を眺めていた。

「はい、どうぞ」

まるで芸術みたいな姿で皮を剥いたアベルは、掌で切り分けた桃のひとつを指先で摘んで僕に寄越す。僕はアベルの指からそのまま桃を口内へ入れて、甘い果汁で濡れたアベルの指先を舐めた。口の中で桃は果汁を溢れさせ、甘く溶けるように喉を通った。

「美味しい」

眼を細めて言うと、じっとこちらを見つめていたアベルはもう一切れ白い桃を寄越した。また同じようにそれを口に含んだ時、アベルが僕の口内へ桃ごと指を深く侵入させた。そのまま愛撫するように粘膜を撫でて、舌を嬲られる。

「ん…はぁっ…甘い…」

アベルの指を引き抜いて僕がそう笑うと、アベルは微かに口端を上げる。瞳の色が妖しく揺らめいたように見えた。

「誘ってるんですか?」
「アンドロイドでも煽られたりすんの?」
「さあ、どうでしょう…でも、桃より貴方の方が甘そうだ」
「甘さなんてわからないくせに」
「プログラムが知っています」

アベルは眼を細めてそう言うと、僕の唇を塞いだ。今度は舌で口内を撫でられて、なにも食べることの出来ないアベルと、けれど確かに甘さを分け合った気がした。アベルの左手が桃を落とす。シンクでぐしゃりと潰れた。果汁に濡れたアベルの指先が、僕の肌を撫で上げるのを感じて、僕はアベルの首筋へ腕を回した。

肌に唇付けられながら、衣服が乱されていく。シンクの台へ腰を預けて、愛撫される性器の感覚から身体の奥へ熱が溜まっていくのを感じていた。

アベルが僕のいちばん好きなやり方で敏感な肌に触れる。扱かれて芯を持つそれが、熱を弾けさせるまで。

「あ、あぁっ…!」

吐息と声が混ざって漏れて、性器はアベルの手を濡らした。
アベルはその手を拭かずにシンクで潰れたままの桃を掴む。
粘着質な音を立てて掴み上げられた桃は、片脚を台へ載せられて、壁へ押し倒された僕の中へ押し込まれる。

「やだ、アベル…!」
「大丈夫ですよ」
「あっんぅッ! 大丈夫じゃな…あっ…はぁ、ん…」

激しい水音を立てながら、桃の果肉を絡めたアベルの指先が出入りする。滑らかすぎて溶けるような感覚に、腰から甘い痺れが広がっていく。漂う香りはまるで媚薬だ。

「あっ…はぁ、あっ…んッ…」

アベルの指の心地良さに、吐息が漏れる。
前立腺を指先で刺激され、滑り込まれた奥を拡げられ、くるりと指を回されると背が反って涙が滲んだ。

やがて欲しいと強請る前に、アベルの性器が僕の中を侵していった。アベルの性器を食べるみたいに、粘膜はそれを包み込む。

「あ、あ、、んぅ~…!」

ずっと奥の、深いところまでアベルの熱が入り込む。
桃に濡れた中で、性器はすぐに抽送を開始した。指よりも熱く僕の中へ馴染むそれは、悦いところばかりへ擦り付けられる。

「あ、あぁぁ…はっ…ぅ、んッ…!」

突き込まれる奥がたまらなく熱い。快楽の神経を、直接弄られてるみたい。溶けるように混ぜられる粘膜の壁も、心地良くて意識が白くなる。

「アベル…アベル、」
「なんですか、カイン…」

アベルは桃よりも甘く妖艶な声を出す。機械的なあの喋りはどこへ仕舞ったんだろう。アベルのセックスは、とびきり甘い。僕はすぐに溶かされて性器を濡らしてしまう。

「もっと…もっと掻き混ぜて」

耳元へ囁けば、僕の腰を引き寄せて性器の上へ乗せてしまう。

「あ! あぁ、うっ…んんぅ~…!」

細い身体からは想像のできない力強さで、アベルは軽々僕を持ち上げられる。壁へ擦り付けるように性器を熱っぽく回されて、前立腺を引っ掛けては激しく出し入れする。

「や、あっ…! あ、あぁ、はぁっ!」

激しい抽送をしては、僕の性器をくちゅくちゅと擦り、先端を弄る。

「あぁぁッ! あっ、ん…アベル!」

もうイッてしまいたくて、助けを求めるみたいにアベルに訴えた。腰を掴むアベルの手に、力が入った。

「あっ!」

両手で腰を掴まれて、激しく上下される。

「う、あッ! あぁぁ…ん、ぁッ! や、イッちゃ…!」
「イキたいんでしょう、カイン…」

そしてアベルは抜けかけの性器を突き立てて、前立腺を掠めて僕の奥へ貫いた。

「ふ、あ、あぁぁッ!」

びしゃりと僕の性器が白濁の欲望を吐き出すと、床へ果汁のように滴が落ちた。

アベルは僕の唇に甘く噛みつき、舌へ軽く歯を立てる。

「甘い、」

離された唇から、アベルの言葉がひとつ。

濡れた桃の香りに満たされた空気はひどく甘く、僕等に纏い付く。
溢れた吐息まで桃の香りで、僕の中身はまるで蜜にそっくり変わって、アベルに掻き混ぜられたみたいだ。





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