Metropolis

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Metropolis 13*

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「ん、はぁっ…んんっ…」

唇を重ね合わせると、柔らかい感触。絡め合う舌は、熱かった。ちゃんと、熱く熱を持って造られているそのニセモノの粘膜。溶けていくように、滑らかな摩擦。歯列を辿って、舌の根を絡み上げる。上顎も舌の裏も、全部を撫で合わせる。意識も甘く溶けていくようなキスだ。

抱いて欲しいと、思っているからだろうか。僕はこんなに、やめたくないキスなんか知らない。

「ふ…はぁ…ぁ、んっ…」

それでも呼吸が苦しくなると、アベルは僕の下唇を自分の唇で挟んで、少しだけ引っ張るみたいなキスをして離れた。アベルの唇を眼が追ってしまう。それが通じたのか、アベルはすぐにもう一度唇を重ねてくれる。口内からすぐに身体へ広がった熱を辿るように、アベルは僕のシャツを脱がせて脇腹を撫で上げた。たったそれだけに感じてしまうほど、アベルの指先は悦ばせ方を知っていた。今までの誰よりも。

思わず仰け反ったせいではぐれた唇。アベルの唇は僕の首筋を辿り、耳に舌を這わせて、鎖骨を甘く噛んだ。その間にもパンツが下ろされて、インナーも取り払われる。剥き出しになった僕の性器は、もう反応を見せていた。アベルはそれを掌で包んで、優しく上下させる。

「んんっ…ぁ…はぁっ…んっ…」

バニラのように溶ろける甘い愛撫。背骨を駆け上がる快楽。すぐに濡れ出してしまう先端を、指先で擦られる。その刺激がたまらなくて、身が震えた。目蓋を閉じて耐える。だけど久しぶりの快楽だ、長くは持たない。

「や、あっ! アベルッ…あぁっ…!」

アベルの顔が視界から消えると、吐き出したがってるそこに熱く濡れた感触。アベルの口の中で、一気に追い上げられる。

「う、あっ…あぁっ…!」

アベルの口に吐き出してしまうと、アベルはそれを掌に吐き出し、白濁に濡れた指先を舐めた。僕を見つめながら。それが不思議と熱っぽく見えて、けれど裏腹に鋭い硝子球の冷たさも併せ持っていて、射抜かれる。

「アベル…」
「カイン、綺麗ですよ」
「え?」
「貴方のイクところ…すごく綺麗だった」
「…!!」

自分の顔が一気に赤くなったのが解った。こんなこと、いくらだって言われてきたのに。アベルがそんなことを、言うなんて…。やっぱりセクサロイドはそういう台詞がプログラムされているんだ…。

「う、ぁ…アベル。やめろよそういうの」
「どうしてです?」
「だって…」
「事実なのに」
「~~! もういいから! 僕もしてあげる」
「カイン?」

僕はアベルの脚の間に顔を埋めて、ファスナーを口で下ろした。そして、生殖機能を持たない性器を取り出し口に含んだ。セクサロイドはどちらにも回れるんだ。機械反応だとしても、感じることができることに変わりはない。

「カイン…そんなこと、貴方がしなくても」
「やらせて。僕だって、男娼、なんだから」

言うのが、すこし辛かった。いつから辛くなった? そんな慣れ切った当たり前なこと。でもどこかで認めたくなかった、いつだって。それでもアベルがそうであるように、僕も、始めから、そうだから。そう造られているから。

僕の気持ちに気付いたみたいに、アベルは僕の頬をそっと撫でた。そんなはず、ないのに。労わるように髪を梳かれて、僕を見下ろすアベルの瞳は、優しく見えた。

僕はアベルの性器をもう一度口に含んで、舌を這わせた。裏筋を舐め上げて、先端を潰すように擦って、横からも、睾丸も、唇や舌で愛撫した。気持ちよくなってほしいと、思った。アベルは気持ちいいって、感じるのかな? いったい何なのか、オイルではないはずの粘液が、口内に漏れ出してくるのがわかった。

「…はぁッ……」

どんな運動をしようが乱れることのないはずのアベルの吐息が漏れた。熱を含むようなその微かな吐息に、僕が目を上げると、アベルは少し眉根を寄せて切なそうな、堪えるような表情をしていた。

「…アベル…」
「…はい」
「挿れて。僕の中でイッて…」
「カイン…」

アベルにシーツへ押し倒され、背を向けさせられる。アベルが服を脱ぐ気配がしていた。それから、奥へ濡れた指を差し挿れられた。

「う、んっ…なに、」
「ローションですよ」
「ローション…?」
「私の精液です」
「あ、あっ…ん…そう、か…それ…ローションなんだ…」

アベルの性器から出ていたのは当然本当の精液なわけがない。ローションとは実用的だ。難なく入ったアベルの指先に、早く解してほしくて溜息が漏れた。膝と肘をついて待つ僕は、アベルに奥まで丁寧に解された。

「アベル、」

催促するために呼びかけると、よく理解しているアベルは、機械仕掛けの性器を僕に押し込んできた。

「んっ…はぁ…う、んん」

息が詰まる。久しぶりの圧迫感。前は毎日だったから、あまり感じなかった。なんとか呼吸を整えようとしながら、アベルを奥まで受け入れる。アベルは僕の髪を撫でたり、背中にキスをしながら馴れるのを待って、ゆっくり動き出した。

「ふっ、あっ…あぁっ…うう、んっ…はぁ…」
「…カイン…」

細波のような快楽に身を委ねていると、熱が身体のいちばん奥へ溜まっていって、欲望が濃くなっていく。そのぶん頭の中は痺れて、何も考えられなくなる。

「アベ、ル…あっ、あぁっ…!や、う、あぁぁ!」

もっと欲しいと強請る前に、アベルは狙ったように僕の前立腺を迷わず的確に刺激した。緩やかに動いたり、小刻みに刺激したり、抜きかけて奥まで貫いたりした。堪らなかった。こんなに、イイところばかり刺激されたら、息もできない。

「うあぁっあぁぁ! あぁぁアベ、ルッ…ダ、メ…そこ、あっあぁっ、んんッ…!」
「ダメ…どうして…? こんなに、良さそうなのに…」
「はっ、あぁっ、あ、んぅ…あぁ、やぁっ…くる、し…」
「でも、気持ちいいでしょう? カイン…」

熱っぽく囁かれて、なにがなんだか解らなくなる。口から勝手に悲鳴みたいな声が出ていく。あまりに的確な愛撫を、前にも後ろにもされて、耳元や首筋にキスされ舌を這わせる。アベルは今までと別人みたいな顔をして、感じてるみたいに、たまに吐息を漏らす。

「ふ、ぁ…! あぁぁッ…!」

僕の身体を丁寧に横倒しにして、脚を掴み上げて腰を掴んだ。強く揺さぶって、奥を貫かれる。激しい抽送に啼けば、今度は優しく舌や指先で肌を撫でられる。

「カイン…」
「あっ! あぁぁ、んっ! くっ…はぁ、あっ!」

抜きかけた性器で、前立腺を掠めて勢い良く奥まで突き上げられると、強すぎる刺激に僕は嬌声を上げて涙と一緒に熱を吐き出した。加速した鼓動に連動するように、性器が震える。意識が甘く痺れる。どろどろに溶けた体で、眼で、アベルを抱き締めた。至近距離のアベルの顔がもっと降りて、優しいキスを繰り返される。心地良すぎて、死んでしまいそうだった。白い意識が倦怠感に溶けて、無くなっていく。アベルのきれいな声で、僕を呼ぶ優しい声が、聞こえた。

ああ、僕。もうアベルにしか抱かれたくない。
男娼だったのに。抱かれたく、ないな。
ずっとふたりで、埋め合っていたいな。



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