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Metropolis 04
しおりを挟む「でさ、金が要るだろ。それに乗り物も要る。うんと速いやつさ」
4時間ほど眠り、復活した僕はそう言ってアベルと一緒に路地裏に出た。
繁華街まで歩くと、ネオンの中をいろいろな人間が行き交っている。派手な服を着た女性が目立つけど、良い仕事をしてそうなスーツやコートの男達が多い。僕はその中から金を持っていそうで誰も連れていない奴を選び、さっそく声をかけた。
「ねえ、叔父さん」
高そうな靴を履いた男の腕を引き声を掛け、小首を傾げて僕は見上げた。
「僕たち今すごく…困ってるんだ」
男は訝しげな瞳をしているが、その中に明らかな手応えを僕は感じた。僕も伊達にそういう育ち方をしていないし、なんせアベルの綺麗さは人外だ。ゆったり笑んで見せて、距離を詰める。
「奥が疼くのに…どっちもネコなんだ」
耳元へ囁けば、簡単だった。人気ない狭い路地裏に連れ込むと、僕が男へ口淫をしている間にアベルが財布を盗る。僅かばかりの慈悲でイカせてやって、力の抜けている間にすぐに身を引いて逃げる。
これを2回ずつやって場所を変え、僕等は数時間で随分の額の現金を手にした。
+ + +
「この店で一番速いやつ」
僕等はモーターバイクショップでそう言って、結構な額の二人乗りバイクを買った。これは旧式のアナログバイクと戦闘機を足したような形態の乗り物で、タイヤは無し。普通に宙を浮くタイプだけど、カプセルカーよりスリムで路地裏に向いている上に、スピードも申し分ない。
僕等はそれに乗り込むと、最初から飛ばして南を目指した。乗り物に乗るのは初めてだったけど、僕は途中から手動運転に切り替えた。せっかく乗るなら全自動に任せきりじゃなくて自分でも運転してみたい。だけど僕ってもしかして素質があるかもしれないな。こんなに速くたって障害物を楽に避けられるし、なんていうかすっごく、気分が良い。こんなの初めてだ。
ネオンが直線みたいに視界の隅を伸びていく。色とりどりの光を擦り抜けて、僕等は闇の中を走った。バイクのライトを纏って、まるで流れ星になったみたいに。
思えばあのビルから飛び降りてから、まるで全ての事が初めてだ。あの部屋を出たら、僕には全部が新鮮なのかもしれない。僕は、なにも知らないんだから。
この夜を抜けて、僕等はきっと昼に辿り着く。
明るいってどんな感じだろう。この街には、夜しか無い。
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