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Blue Earth 05
しおりを挟む「ソウー、ここの問題がわからないんだ」
「ソウ、今度の観測一緒に組まないか?」
はぁ。溜息。
愛琉ちゃんはあんなこと言ってたけど、ソウが寂しい思いをしてるなんてことは無いだろう。
改めて観察する間でもなく、ソウはいつも人気者だ。人当たりも悪くないし頭が良いから、解らないことがあるとみんなソウを頼る。特にテスト前なんかになると、ソウは大忙しだ。みんなソウを当てにしてるんだ。
僕は放課後や昼休みは行動を共にしてるけ
ど、他はあまり一緒に居ないようにしている。だって僕がソウを独占するわけにはいかないから。ソウにはソウの付き合いがあるし、僕だってソウにしがみついてるわけじゃない。他の友達とも楽しくやってる。
そう、僕等にはなんの問題もない。いい距離感でやってるんだ。……なんて、いったい誰に言い訳をして言い聞かせてるのか。
休み時間が終わり、クラスは席に着く。僕はソウから少し離れた席で、ソウの横顔を眺めた。すっと通った鼻筋に、聡明な瞳。真っ直ぐ教師に向けられた視線は、とても模範的なものだ。こういう何かに集中している時のソウは、普段以上に凛としていて近寄り難い。ソウの本質は排他的なんじゃないかとすら思える。僕はソウから視線を外し、窓の外を見た。校庭の桜の木は綺麗な緑の葉を揺らし、僕を眠りに誘う。僕は抗うことなく瞼を閉じた。子守唄は勿論、教師のつまらない解説だ。
「起きろ、ハル」
「うーん?」
「ハル、もう放課後だぞ」
「………ソウ?」
ぱちり。目を開けると、閑散とした教室の景色があった。誰も居ない。
「ごめん、寝てた」
「見ればわかる」
ソウに言われて苦笑する。だけど僕は、なんだかここにソウが居たことに、やけに安心していた。このとても静かな教室の中で、ソウだけが居る。僕を待っていてくれたんだ。
「べつに先に帰っても、良かったのに」
なのに、心にもないことを、口が勝手に喋った。
「他の友達と、帰ったってさ…」
「ハル?」
ソウに訝しげな視線を向けられて、僕は首を振った。なにを女々しいこと言ってるんだ僕は。
「…ごめん、なんでもないよ。ありがとう、待っててくれて。帰ろうか」
僕等は誰も居ない教室を出た。これじゃまるで、僕が寂しいみたいじゃないか。バカげてる。ソウと一番長い時間一緒に居るのは絶対に僕だ、それは間違いない。何を考えてるんだろう。こんな拗ねたようなこと言ったりして。そんなことより早く、次のアンドロイドを探さなくちゃ。
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