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Dune 14*
しおりを挟む「んっ…はぁ…」
深いキスをして、舌を絡ませただけで頭がじんと痺れた。冷えた強張った心も身体も、甘く溶けていく気がした。
指先で解いたフォービアの軍服の下には、傷だらけの肌があった。切り傷や銃創の痕をなぞって、掌で触れた左胸の下には、確かな鼓動が脈打っていた。フォービアの存在が俺の傍にあると感じた。俺は今、彼の命に触れている。
フォービアは、俺の剥き出しの肌を見て、昏い瞳をした。眉根を寄せて、辛そうに俺の手を取り、傷の残る手首にそっとキスしてくれた。
フォービアの掌が俺の肌を撫でて、指先がそっと敏感なところを辿っていく。唇が首筋に触れ、控えめに耳朶を舌が這う。
ベッドの上で見下ろされても、フォービアの深い瞳を見ればなにも怖くなかった。
「んんッ…ぁ…」
甘く溶かしていくゆったりとした愛撫は、やがて熱を帯び始めた場所に触れた。温めるような掌に包まれて、奥底からじんわり快楽を引き出された。その優しい温度に、大切にされているのだと安堵できた。俺は、道具じゃない。男と寝る為の道具なんかじゃ、ない。
「トゥルー、怖くないか」
「大丈夫…気持ち、いい…」
甘く零れる吐息の合間に答えると、あの壊れ物に触れるようなやり方で、頬を撫でられて唇を重ねる。下を刺激されながら、少し息苦しいキスを続けた。徐々に高められていく熱に浮かされて、唇を離すと濡れた声が漏れた。
「は、あぁっ…」
フォービアの手の動きが早くなる。快楽の波が熱を上げていき、腰に力が入った。
「トゥルー」
「んっ…イ、ク…フォービア…!」
「ああ。出していい…」
優しい愛撫が強くなって、感じるところを激しく擦られた。吐き出してもゆっくり上下されて、その手に快楽を搾り取られるように、身体の芯が痺れて熱の残滓をどろりと溢れさせた。
「はぁっ…は…フォー、ビア…」
「トゥルー…眠ってもいい」
甘い倦怠感の中で、フォービアが俺の額にキスしてそう囁いた。たしかにこのまま眠っていけたら、とても気持ち良さそうだった。でも。俺はフォービアと繋がりたい。そうでなくちゃ、意味がないんだ。俺は首を振る。
「来て…フォービア…中へ」
「トゥルー…」
「ちゃんと、感じたい…フォービアのこと」
「…わかった。辛かったら言えよ」
髪を梳いてくれるフォービアに微笑い掛けて、俺は頷いた。そして、俺の吐き出した精液で濡れた指で、長すぎるくらい丁寧に中を解された。俺がずっと触れて欲しいと思っていた、あの指が中に入ってるんだと思うと、どうしたって俺は中を締め付けてしまう。
「はぁ…ぁ…ん…」
「平気か?」
「ぅ、ん…大丈夫…」
「指、増やすぞ」
粘膜を傷つけないよう、フォービアはゆっくり擦って拡げていく。やさしく回すように、キツい中を溶かしていく。
「あっ…! んッ…あっあッ…!」
乱れてしまう箇所を探り当てて、フォービアは俺を翻弄する。触れて欲しいのにやめてほしいような、慣れない快楽の強さに、フォービアの服を握り締めていた。
「あぁ、ぁ…う、あ、んんぅ…!」
気持ち良くて、もうイッてしまいそうで、俺はフォービアに縋り付いて強請る。
「フォービア…もう、」
「イッていい」
「ちが、う…フォービア、中にほしい。はやく、きて…」
「トゥルー、本当に大丈夫なのか…?」
「大丈夫だから、お願い…」
俺はフォービアの性器を服の上から弄った。
「トゥルー、わかったから」
フォービアはやさしく囁いて、俺の手を制しシーツに縫いとめると、片手でベルトを外した。俺の瞳を見つめながらそうするフォービアは、俺の見たことのない熱を孕んだ顔をしていて、腰がじんと疼いてしまい、思わず俺は目を逸らした。その間にスキンを付けたフォービアは、俺の脚を拡げて引き寄せると、昂った性器を押し当てた。
「う、あっ…あぁっ…んッ…!」
「…はッ…トゥルー…」
「フォービア…!」
「キツい、な…ごめんな。痛いだろう…」
「大、丈夫…フォービア…」
やっと中へ挿れてくれたフォービアの首へ腕を回して抱き締める。繋がりが深くなって苦しかったけど、苦しくったって痛くたって良かった。
ああ、俺は。こんなにこの人に焦がれてる。
「フォービア、フォービア…好き…」
「俺もだよ、トゥルー」
「愛してる…」
「俺も愛してる」
詰まりそうな呼吸の中で、それだけは伝えたかった。言わずにはいられなかった。
額を合わせて吐息と共に囁かれた言葉と、身体のいちばん奥に宿る熱は、俺が夢見た瞬間の全てだった。
身体よりも心で求めていた、フォービアと繋がること。
「んっ…も、動いて…」
そう強請ると、俺の掌をフォービアが握ってくれた。指を絡めて、温かく握り締める。
そうして始まった突き上げは、意識が細切れに飛ぶくらい悦かった。
「あっあっ…はっあぁっ…や、あぁぁっ!」
すぐに覚えられた俺の反応するところを、フォービアが強く突く。甘く溶かすように中を回したり、ゆっくり壁を前後に擦ったりして、強弱を付けて俺の中を熱くしていく。
「う、あ、あぁぁ…あ、あぁ…はぁ…んんッ…!」
フォービアは手前から奥に何度もストロークして、敏感な場所を小刻みに突いた。焼けるような熱で中を掻き回されて、嬌声が喉から押し上げられていく。
全然、ちがう。
シリルにされたのとは。
甘く溶けてしまいそうな快楽と、微睡に似た意識の浮遊感。
俺に腰を打ち付けて揺さぶるフォービアが息を詰めて、堪えるような吐息を漏らすのを耳元に感じると、たまらなく熱が上がった。
「…んッ……」
「フォービア! あっあぁっ…や、あぁ」
「トゥルー、」
「…んっ…イイ…気持ち、い…あぁっ…!」
打ち付ける波はどんどん激しくなっていって、溜まっていく熱が高みへ駆け上っていく。甘い快楽が背筋を駆けていって、涙が零れた。
「もっあぁっ…! フォービア…!」
「あぁ…いこう。トゥルー…」
「んっイク…あッ…イって…俺の、中で…!」
「トゥルー…!」
「あ、あぁっんッあっ…や、あ、あぁぁッ…!」
感じる場所をぐりぐりと強く刺激されて、いちばん奥へ性器を突き刺される。あまりの快楽に耐え切れずに、熟れたそこから熱が弾けた。締め付けた中へスキン越しにフォービアの熱を感じると、甘い充足感に俺は眼を閉じた。フォービアの体温を感じながら、俺はとても満たされた思いで、意識を手放した。
+++
「フォービア。次はいつ、発つの…」
「お前を置いていけない」
フォービアの腕枕で俺がそう訊くと、フォービアは枕にされた手で俺の髪を梳きながらそう答えた。
こんな、甘い時間を過ごしているなんて、まるで嘘みたいだ。夢みたい、だ。夢なら醒めないでほしい。けど、
「ううん。いいんだよ。フォービア」
「トゥルー…?」
「俺、待ってるから。だから。行ってきて」
本当は。
行かないでと縋り付きたい。毎日ベッドで抱き合っていたい。フォービアの温度に溺れていたい。ずっとそうして過ごせたらいいのにと、思う。なにもかも忘れて放り出して。
「フォービアが、軍人を辞めないって。あんな通信寄越したの、理由があるんだろ。なら、俺の為にそれを捨てることない」
「トゥルー、」
「フォービアの腕が、今までもきっと誰かを守って救ってきたんだろ。フォービアの腕は、人を救える腕なんだ」
俺が独り占めするわけに、いかない。
「フォービア、俺はまだ大人じゃないけど、でも、男だよ。大丈夫。待てるよ。フォービアが俺のこと、ちゃんと愛してるって言ってくれたから。だからもう大丈夫」
もう、あんな足場のないような不安はないから。俺の想いが伝わっていないような、フォービアが俺をどう思っているのかも曖昧なような、そんな不確かなものじゃないから。
凄惨なはずの戦場なんかに行くほどの想いを、俺の為に投げ出すことはない。引き返せないと言ったフォービアにはフォービアのやらなくちゃならないことがきっとあって、そういうフォービアを切り捨てて俺の為だけの存在に成ることはない。俺がここに、縛り付けていいわけない。
「だけど必ず帰って来て。それだけは約束して。」
「ああ、必ず帰って来るよ。お前だけが、俺の帰るところだ、トゥルー。」
どんなことがあっても。たとえもし、またなにか、酷いめに遭ったとしても。フォービアが帰って来てくれるなら、俺は平気だ。もう、耐えていける。
手足が震えても。言葉をなくしても。俺の心も、フォービアに帰っていくから。繋がっていると、信じられるから。
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