蒼い桜

ニュイ

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非常事態宣言

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そもそもこんな事態になったのは、
今年になってからのことだった。

昨年学校が終わるころには
「来年、また皆んなで初詣にいこうねー!
良いお年を!」

と笑い合っていたはずなのに、
年明けそうそう世間は騒がしくなってしまった。

最初はとある地域の人たちが、
謎のウィルスに罹患して倒れていく映像が流れた。

それもテレビではなくて、YouTubeの映像で流れた。
もしかしたら、都市の情報は隠蔽されていたのかもしれない。

「わたしは真実を伝えたい…」
そうして勇気ある記者たちが深刻な表情を浮かべながら、
流す都市の映像はまるで廃墟と化した街のようで、
両親とわたしは震えあがってしまった。

いま世界で起きていることは、タダごとではない。

どれだけ病院がベッドを用意しても、患者はすぐに埋まってしまう。

両親は顔を見合わせて
「真梨…暫く母さん達は、どんなことになってるか情報を仕入れてくるから、夜遅くなるわ」と言った。


その日の夜は怖くて眠れなかった。
いままでだって、何度もインフルエンザの流行や麻疹の流行はあった。

だけど、こんな世界を巻き込んだバイオクラスターなんか見たことない。

16年間生きてきて、
ヌクヌクと育ってきたわたしは何だかザワザワとした焦燥感に胸を詰まらせていた。






桜並木をこっそり散歩してから数日
国会のえらい大臣が

「非常事態宣言を発表いたします」

とものものしく伝えていた。

その日珍しくお母さんは、家のライトブルーのソファーで仮眠を取っていて、
外からの風が窓を開けたカーテンの隙間から、心地よく入ってきた午後のことだぅた。

日夜交代でワクチンの開発にあたっている、両親は食事もほどほどにあまり眠れていなかったらしい。

家につくなり、シャワーを浴びると

「もう無理ぃ。ちょっと母さん仮眠する~」とソファーに転がり込んだかと思うと、
そのまま眠ってしまった。

よほど疲れていたのだと思う。

そっとタオルケットをかけ、その横で愛犬のトイプードルのココとテレビを見ていると、
突如「非常事態宣言」が出されてしまった。

「非常事態宣言を発令いたします。
我が国ではこれまでにみたこともない事態にあるといえます。
甚大なバイオクラスターの威力に国民たちも疲弊し、成す術もない状況です。
いまは対策本部で特例の法案を練り込んでいる最中です。
国民の皆さまが自宅で待機しながらも…安心して生活していただけるように補助金政策も考えております。

いま一度不要な外出は避けて、できるだけ日用品もインターネットでお買いいただくようお願い申し上げます。
尚、公共交通機関も一旦徐行運転を行い、段階的に運行の見直しを行なってまいります。

皆さまも引き続き、在宅ワーク…リモートワークをご活用いただきますよう宜しくお願い申し上げます…」

国会からは物ものしい雰囲気が、漂っていた。

「ココ…ヤバいよ…」
わたしはそのテレビ画面を見ながら、
ココに呟くことしか出来なかった。
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