亡国の近衛騎士 ~追放された王家直属の最強護衛、幼なじみの旅商人と共に世界を回ることにする~

アイスクリーム仕立て

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第4話 王都脱出

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 俺がメルサの護衛になると決めた以上、早くここを出てしまわないとならない。
 もうとっくに準備の方は終わらしているようだ。
 
「ねえ、ゲルツさんを呼んできてくれない? 終わったって」
「いや、あいつはもういるぞ?」

「……なんか俺に用か?」

「っえ? いつからそこに?」

 自慢の気配隠しをまたしていた。
 こいつ、メルサにまでやってやがる……
 実際、奇襲に使われると俺じゃどうしようもなかった。こいつが暗殺者じゃなくて良かったな……

「……シュベルト、もうその辺の手続きは終わらしたぞ。ちょうど馬車にも乗れるし、幸運だな」
「おお、仕事が速いな」
 
「こうなることくらい、予測済みだ」
「ふっ、ただ単に会話を盗み聞きしていただけだろ?」

「さあ? ……どうだかな?」

 はぐらかすような仕草をしたって無駄だ。
 昔からゲルツは嘘を付くのが下手だ、顔でバレバレなんだよ。

「それより、どうやって警備の目をかいくぐるつもりだ? 廃れたとは言ってもな、厳しいぞ」
「……俺に考えがある」
 
 よく、ローザ様と王城から抜け出す時に使っていた技がある。
 ……っ、忘れろ、あいつのことは! 後悔なんてしていない。はずだ……
 

「どうしたの、そんな顔をして。大丈夫?」
「……ん? あ、ああ、任しておけ」

「なら、良いけど……」

 メルサはまだ眉を潜めている。

「いや、昔のことを思い出していてな…… 本当に心配はいらない」
「シュベルト、今はどう嬢ちゃんを守るかを考えるんだ。そんなこと気にしても、結果は変わらねえぜ?」

「……ゲルツ、お前良いこと言うな。お前そんな性格だったか?」
「うるせえよ」

「シュベルト、もう時間だわ。そろそろ出発しないと」

 メルサは馬の上にまたがりながらそう言ってきた。
 俺も荷台の方に乗るとするか。
 そして、俺はゲルツの方に振り返りながら、馬車に乗った。

「……色々とありがとうな、ゲルツ。また会える機会があったら飯でも奢るぞ」
「おうよ、とびっきり高いやつを頼んでやるぜ! だったらさっさと行け!」

「じゃあな!」
 
 そうして、馬車は冒険者ギルドから離れていく。
 俺はゲルツのほうに少し手を振った。あいつも両手を大きく振って返してくれている。
 まったく…… 大人気が無いやつだな……
 
「ずいぶんと別れ方がさっぱりしてるわね」
「さあな。 ……世界中回ってれば、いつかは再会するだろう」

「……そういうものなの?」
「ああ」

 
 ――そうして、馬車は夜の街並みに消えていったのだった……

 
「……マスター、ここに居たんですか。早く仕事に戻ってください」
「ん? ああ、分かったよ。 ……ぁあ、めんどくせぇ」

「……それより、大丈夫でしょうか、あの方たち。護衛もひとりだけで」
「ああ、それなら心配ない。何だってあいつは……」
 

「この国でも指折りの、白金級冒険者だからな」

 
 ~~


 ――ガラガラガラ……
 馬車は止まることなく街道を進み続ける。
 それにしても、夜の街並みは久しぶりに見るな。ずっと王城に居たからか。

「さっきから何をずっと見てるの?」
「……ずいぶんと人通りが少ないな。昔はそこそこいたと思うんだが」

「治安が悪くなったの。今じゃ危ないのよ」

 なるほど、だからこの時間帯にしたのか。
 人目が少ないから、万が一のことは起きないだろう。
 だが……

「メルサ、関所まであといくらくらいかかる?」
「え? まだ時間がかかると思うけど……」

 ……間に合わないな。賊がいる。
 仕方ない。やるとするか。


 
「ひっひっひっ、こんな時間に女ひとりでいるっすね。これはカモじゃないんですか~?」
「とんだバカがいるもんだぜ、おい、馬車の中身を残らず奪い取って女は売るぞ」

「分かりやした…… ひひっ」

 ――魔法陣展開 生成 棘……
 
「今だ、行くz……ヴァ、ガハッ」
「お、お頭! ヴッ! グ……ァ……」

 ……敵は沈黙。動く気配なし。
 今、大事になって戦闘になるのは困る。だから、先に消してやった。

「ね、ねぇ。何か今、声が聞こえなかった?」
「……そうだな」

「賊かもしれないわね。早く切り抜けないと」
「大丈夫だ。もう倒しておいたぞ」

「え? いや、あなた何も……」

 メルサは信じられないような顔をしている。
 ……もう護衛になったことだし、そろそろこのことを話してもいいだろう。
 
 俺の、スキルについて。

「魔法陣を賊の後ろに展開して、不意打ちしたんだ」
「……魔法陣? それって、廃れたはずじゃ」

「……確かにそうだな」

 魔法陣はふつう、魔法言語と呼ばれるものを詠唱して創り出すものである。
 しかしそれにはかなりの時間がかかり、才能も関わってくるので、使える人がものすごく限られていた。

 そして、魔道具を使った簡単なやり方が発明されると、魔法陣は無くなっていったというわけだ。

「俺の師匠がとても変わった人でな。このやり方を教わったんだ」

 ――魔法陣展開 生成 炎

 「わぁ…… すごい……」

 とりあえず目の前に魔法陣を創って見せた。
 小さな火球が現れ、辺りをほのかに照らしている。

「ねえねえ、もっとやって!」
 メルサは目を見開きながらも、興味津々に魔法陣の方を見ている。

「おい、危ないぞ? 前をちゃんと見ろ。また後でな」

「えぇ…… 分かったわよ……」

 そんなに驚いてくれるなんて、……ちょっと嬉しいな。
 こんな反応をしてくれたのは久しぶりだ。王城では大してすごいと思われなかったから……
 しばらくは明かり代わりにともしておこう。
 
 そして少し時は経ち……

 
「……シュベルト、関所が近づいて来たわ」
「分かった、準備をする」

 奥の方に、明かりが2つ。関所の灯だ。
 暗闇の中から、大きくそびえ立つ城壁が見えてくる。

 さてと、やるか。

 ――魔法陣展開 付与…………



「おい! そこの馬車、止まれ!」

 馬車は関所に着き、止まった。
 今俺たちは5人くらいの兵士たちに囲まれている。

「こんな時間に出るのか?」
「……はい、できるだけ早く出たかったもので」

「見ろよ、女ひとりだぜ?」
「護衛も無しか? 俺が守ってやるぜ? ガハハ!」

 好き勝手言いやがって…… 
 こいつら酒でも飲んでいるのか? 乱れているな。

「……俺が護衛だ、心配はいらない。……何か文句でもあるのか?」
 
 俺は顔を出して、兵士たちを睨みつける。
 強く、鋭く、そして冷たい視線は、流石の兵士たちも少し怖気づいたようだ。

「ちょっと、シュ……」

「ッ、チッ…… なっ、何だよ、久しぶりに行けるかと思ったのによ!」
「ふむ、人相書きが回ってきているが、……お前は違うようだな。商人ライセンスもあるし問題ない。通ってもいいぞ」

 ――ガラガラガラ……
 門が開き始める。
 メルサはそのまま馬車を前に進ませ、あっさりと通ることができたのだ。

 
「……メルサ、怖くなかったか?」
「うん、大丈夫。慣れてるから…… それより、どうしてなの? 顔まで見せたのに……」

 魔法陣の能力は、それだけではないのだ。
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