上 下
85 / 89
第五章 覚醒

第八十五話 大魔女の血を継ぐ者

しおりを挟む
 ――うぅ・・・ ここは、どこだ・・・

 レイドが頭を痛めながらも起き上がった場所は、見慣れた場所であった。

「はっ、何を寝そべっているんだよ、無能が」

 前に人影が一つ・・・

「ふ、ファブリス・・・」
「どうした? 俺様の魔法が凄すぎて呆然としているのか?」

 こいつは、確かに死んだはずだ・・・
 なぜ、なぜ・・・

 そう思い、レイドは体を動かそうとするが、すぐに違和感に気付く。

「体が・・・ 小さく・・・」

 ――そう、これはまだ幼き日の体であったのだ。

「まっ、無能のお前には一生経っても出来ないことだよな! ガハハッ!」

 そうファブリスが笑い始めると、近くに居た使用人たちもそれに続く。
 カインは、居ない。

「・・・・・・」
「? 何か言ってみろよ? 魔力無し!」



「ああっ!」
「ちょ、おい、どこに行くんだよ!!」

 ――俺は全力で駆けだす。
 今すぐ、ここから出ていかなければ・・・!


「おい・・・ 待てって言っているだろ・・・?」
「っっ!! は、放せ!」

 レイドは何とかして、ファブリスの手を離そうとするが、全く動きやしない。

「お前も・・・ コっちに・・・ クルンだよ・・・」
「はっっっ・・・!」

 次第にファブリスの顔面が溶けていき、骨が見え始める・・・!
 その途端、周りの様子は急変、使用人だった骸骨たちが一斉にこちらへ向かってきた!

「ああっ・・・! 来るな! 来るなっ!!」
「ア゛ア゛ア゛・・・」

 ファブリスの拘束は未だ解けない。

「止めろっ! 止めろ!! ああああっ!!!!」
「大人シク・・・ 従エ!」

 

「・・・そこまでだ!!」
「ア゛ア゛ッ!」

 ファブリスの拘束はそこで途切れた。

「・・・マリー!?」
「レイド! 今は話している場合ではない! 今すぐ脱出するぞ!」

「わ、分かった・・・」
「ヴォォォ・・・ 待て・・・」

 マリーはレイドの手をつなぎ、全速力で走り始めた!
 後からは無数の骨が迫る・・・!

「はぁ、はぁ・・・ なんなんだ! これは!」
「・・・・・・」

 しかし、マリーは何も話さない。


 しばらく走り続けると、何やら空間の切れ目が見えてきた。
 中からは、遺跡の様子が見える・・・

「レイドっ! あそこに飛び込め・・・!」
「ちょっと待ってくれ! マリーは来ないのか?」

「私は、そちらへは行けない」
「はぁ? なんでだよ、骸骨共もすぐそこに・・・」

「・・・レシティア様を、頼んだぞ」
「え? なっ・・・!」

 マリーは静かに、レイドを抱きしめる。
 ・・・そして、思いっきり押した。

「おい、マリー・・・!」

 そのままレイドは、空間の切れ目に呑まれていく。
 ――そうか、そういうことか・・・


 
 レイドが最後に見たのは、涙するマリー。
 彼の意識は、それで途切れた。






 
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ぅ・・・ ぅぅ・・・っ」
「嘘だろ? まだ生きているのかよ!」

 レイドは焦げ臭い匂いを感じながら、静かに起き上がった。
 段々と視界がはっきり見えてくる。

 少し離れたところに、カインと・・・ エレーヌが居た。


「ヴ・・・ ぁ・・・」
「カッ、そんな重症じゃ、まともに動くことすらできないよな?」

「カイ・・・ン、何を・・・した?」
「エレーヌにか? ・・・ようやく、ようやく復活を果たしたんだぜ! こいつは・・・ガ・・・ッ」

 カインはそのまま血を吐き、倒れた。
 腹を貫かれている・・・ そう、魔法によって。


「ご苦労。カインよ・・・ 貴様はもう用済みだ」
「え、エレーヌ・・・?」

「ふむ、この者はエレーヌと言うのか。中々良い体だな」
「・・・お前は、誰だ?」

 エレーヌは体を動かしながら、ギラリとこちらを見つめてきた。
 あれは、とても生物ができるような目ではない。

「貴様は・・・ ジャンとよく似ているな。そういえば、この体もミアに似ている気が」
「おい、質問に答えろ!!」

「・・・ふむ、なぜ貴様ごときの質問に答えねばならない?」
「なぜって・・・ っ、早くエレーヌから出ていくんだ!」

「それは出来ぬ相談だ。欲しかったら殺せば良い。ジャンもそうしたようにな」
「・・・・・・」

「まあ、貴様にジャンほどの覇気を感じないがな・・・ 死ね」

 エレーヌは杖を大きく掲げ、何やら唱え始める・・・!
 
 ――来やがったか!!

「Έκρηξη...! Ακολουθήστε με!」

 エレーヌの頭上から魔法陣が現れ、こちらに魔法が飛来する!

「こうなったら・・・ インテグリー!!」

 ――しかし、インテグリーは光ることは無かった。

「ぐわぁっ!!」

 レイドにそのまま爆風が直撃し、後ろに吹き飛ばされる!


「・・・どうした? ほんの小手調べだぞ?」

 インテグリ―が・・・ 反応しないだと・・・!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~

阿澄飛鳥
SF
俺ことグレン・ハワードは転生者だ。 転生した先は俺がやっていたゲームの世界。 前世では機械エンジニアをやっていたので、こっちでも祝福の【情報解析】を駆使してゴーレムの技師をやっているモブである。 だがある日、工房に忍び込んできた女――セレスティアを問い詰めたところ、そいつはなんとゲームの隠しボスだった……! そんなとき、街が魔獣に襲撃される。 迫りくる魔獣、吹き飛ばされるゴーレム、絶体絶命のとき、俺は何とかセレスティアを助けようとする。 だが、俺はセレスティアに誘われ、少女の形をした魔導兵器、ドール【ペルラネラ】に乗ってしまった。 平民で魔法の才能がない俺が乗ったところでドールは動くはずがない。 だが、予想に反して【ペルラネラ】は起動する。 隠しボスとモブ――縁のないはずの男女二人は精神を一つにして【ペルラネラ】での戦いに挑む。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします! 感想待ってます! まずは一読だけでも!! ───────  なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。    しかし、そんなオレの平凡もここまで。  ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。  そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。  使えるものは全て使う。  こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。  そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。  そしていつの日か、彼は……。  カクヨムにも連載中  小説家になろうにも連載中

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気が付くと見知らぬ部屋にいた。 最初は、何が起こっているのか、状況を把握する事が出来なかった。 でも、鏡に映った自分の姿を見た時、この世界で生きてきた、リュカとしての記憶を思い出した。 記憶を思い出したはいいが、状況はよくなかった。なぜなら、貴族では失敗した人がいない、召喚の儀を失敗してしまった後だったからだ! 貴族としては、落ちこぼれの烙印を押されても、5歳の子供をいきなり屋敷の外に追い出したりしないだろう。しかも、両親共に、過保護だからそこは大丈夫だと思う……。 でも、両親を独占して甘やかされて、勉強もさぼる事が多かったため、兄様との関係はいいとは言えない!! このままでは、兄様が家督を継いだ後、屋敷から追い出されるかもしれない! 何とか兄様との関係を改善して、追い出されないよう、追い出されてもいいように勉強して力を付けるしかない! だけど、勉強さぼっていたせいで、一般常識さえも知らない事が多かった……。 それに、勉強と兄様との関係修復を目指して頑張っても、兄様との距離がなかなか縮まらない!! それでも、今日も関係修復頑張ります!! 5/9から小説になろうでも掲載中

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...