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第五章 覚醒
第七十一話 街に出よう
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「レシティア・・・ なのか?」
「れ、レイド・・・」
レシティアはレイドを見た途端、委縮してしまう。
なんだか、凄くおびえているようだ。
「ご、ごめんなさい、ごっ・・・」
「おい、もう大丈夫だ。気にしていない。それよりも、一年間も看病、ありがとうな」
「いや、わたくしが、あの時、あんなことをしなければ・・・」
「もういいと言ってるだろ?」
「・・・・・・」
今度は黙り切ってしまった。
今のレシティアは、とても情緒不安定に見える。
「・・・レシティア、いつもこんな感じじゃないんです。きっと、慣れますよ」
「あ、ああ・・・ そうだといいが」
(ところで、あの人形みたいなものは何だろうか・・・)
レイドは、レシティアの傍にある大きな何かを見つめた。
「レシティア、”あの研究”は順調ですか?」
「・・・ええ、実用化までもう一歩よ」
レシティアはエレーヌの言葉を聞き、我に返ったようだ。
「”あの研究”って、そこにあるやつのことか?」
「・・・今、自立型の魔導兵器を作っているのよ。これで、誰も戦場に出なくていいようにね・・・」
「・・・・・・そうか」
「わたくしね、怖いのよ。また、誰か失ってしまうのではないか、と。いつまで、戦い続ければ・・・」
「レシティア、もう少しの辛抱です。彼が、レイドが、復活したのですから・・・」
「・・・そうだといいわね」
――すると、レイドはこちらに近づいている足音に気付いた。
「エレーヌ、ここで何をしている。・・・って、貴様、レイドか!?」
「・・・ロベルト、なのか?」
変わり果てたロベルトの姿が目に入った。
長髪になり、その目つきは非常に恐ろしい。
「・・・復活したのか。それならばさっさと黒き魔獣との戦争に加勢しろ」
「お、おい。どうしたんだよ・・・」
「・・・これがいつもの俺だ。奴らを皆殺しにする、約束された未来に向かってな」
「ロベルト、彼はまだ本調子ではありません。もうちょっと待ってください」
「・・・チッ、まあいい。おい、レシティア」
「ロベルト、完成したの?」
「ああ、理論上はな」
そうして、ロベルトは人形に向かう。
「Tartalmazza a lelket...」
「ゴゴォ、ガッ、ギ・・・」
「やったわ! ついに成功かしら!」
「いや、まだ油断はできない。これを制御する方法を見つけなければ・・・」
人形が何と動き始めたのだ。
何か、苦しんでいるような様子だが・・・
「何を、したんだ?」
「・・・成仏しきれなかった魂を封じ込め、本能のままに戦ってもらう。それが、”人造魔導兵”だ」
(・・・いくら何でも、それは、)
――こんな残酷なことが許されていいのか。
と言いたかったが、レイドは思い留まることにした。
「ククク・・・ これで、奴らを・・・!」
今のロベルトをどう表現すればいいのだろうか。まさに、狂気と呼ぶべきか・・・
「すみません、これでは失礼します・・・ 行きますよ、レイド」
「あ、ああ・・・」
そうして、レイドたちはレシティアの部屋から去ることにした。
「どうしたって言うんだよ。レシティアも、ロベルトも、何かおかしいぞ・・・?」
「・・・この一年間、色々あったんですよ」
「一体何が起きたら・・・」
(いや、これ以上、踏み入れてはいけない)
レイドの本能が、そう語っていた。
「せっかく一日自由になったんです。街に、出てみませんか?」
「・・・そうだな」
そうして、レイドとエレーヌは、学園から出ていくのであった・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
あれから少し時が過ぎ、レイドたちは街に出ることが出来た。
王都の活気は一年前と全く変わっていない。
「私たちは、これを守っているのですよ」
「・・・なるほどな」
そして、再び歩き始める。
「さて、どこに行きましょうか。ご飯でも食べに行きます?」
「病み上がりだが、大丈夫なのか?」
「多分大丈夫でしょう。昏睡中でも、強引に食べさしていましたから」
「え? どうやって?」
「もちろん、魔法ですよ」
「ははは・・・」
(なんか想像したくないな・・・)
そう思うレイドであった。
「どこでもいいぞ、エレーヌが好きなところでな」
「そうですか、では早速お肉の店へ・・・!」
「そういや、肉が好きだったな」
「確か、貴方は葉っぱが好きでしたっけ?」
「いや、そんな訳でもないが・・・」
「なら大丈夫ですね、付いてきてください。あっちに良いステーキの店があるんです!」
そういい終わるや否や、エレーヌは走り始めた。
「お、おい! 待てよ! ・・・食い意地が張ってることで」
そうして、レイドもエレーヌの後を追うのだった・・・
「れ、レイド・・・」
レシティアはレイドを見た途端、委縮してしまう。
なんだか、凄くおびえているようだ。
「ご、ごめんなさい、ごっ・・・」
「おい、もう大丈夫だ。気にしていない。それよりも、一年間も看病、ありがとうな」
「いや、わたくしが、あの時、あんなことをしなければ・・・」
「もういいと言ってるだろ?」
「・・・・・・」
今度は黙り切ってしまった。
今のレシティアは、とても情緒不安定に見える。
「・・・レシティア、いつもこんな感じじゃないんです。きっと、慣れますよ」
「あ、ああ・・・ そうだといいが」
(ところで、あの人形みたいなものは何だろうか・・・)
レイドは、レシティアの傍にある大きな何かを見つめた。
「レシティア、”あの研究”は順調ですか?」
「・・・ええ、実用化までもう一歩よ」
レシティアはエレーヌの言葉を聞き、我に返ったようだ。
「”あの研究”って、そこにあるやつのことか?」
「・・・今、自立型の魔導兵器を作っているのよ。これで、誰も戦場に出なくていいようにね・・・」
「・・・・・・そうか」
「わたくしね、怖いのよ。また、誰か失ってしまうのではないか、と。いつまで、戦い続ければ・・・」
「レシティア、もう少しの辛抱です。彼が、レイドが、復活したのですから・・・」
「・・・そうだといいわね」
――すると、レイドはこちらに近づいている足音に気付いた。
「エレーヌ、ここで何をしている。・・・って、貴様、レイドか!?」
「・・・ロベルト、なのか?」
変わり果てたロベルトの姿が目に入った。
長髪になり、その目つきは非常に恐ろしい。
「・・・復活したのか。それならばさっさと黒き魔獣との戦争に加勢しろ」
「お、おい。どうしたんだよ・・・」
「・・・これがいつもの俺だ。奴らを皆殺しにする、約束された未来に向かってな」
「ロベルト、彼はまだ本調子ではありません。もうちょっと待ってください」
「・・・チッ、まあいい。おい、レシティア」
「ロベルト、完成したの?」
「ああ、理論上はな」
そうして、ロベルトは人形に向かう。
「Tartalmazza a lelket...」
「ゴゴォ、ガッ、ギ・・・」
「やったわ! ついに成功かしら!」
「いや、まだ油断はできない。これを制御する方法を見つけなければ・・・」
人形が何と動き始めたのだ。
何か、苦しんでいるような様子だが・・・
「何を、したんだ?」
「・・・成仏しきれなかった魂を封じ込め、本能のままに戦ってもらう。それが、”人造魔導兵”だ」
(・・・いくら何でも、それは、)
――こんな残酷なことが許されていいのか。
と言いたかったが、レイドは思い留まることにした。
「ククク・・・ これで、奴らを・・・!」
今のロベルトをどう表現すればいいのだろうか。まさに、狂気と呼ぶべきか・・・
「すみません、これでは失礼します・・・ 行きますよ、レイド」
「あ、ああ・・・」
そうして、レイドたちはレシティアの部屋から去ることにした。
「どうしたって言うんだよ。レシティアも、ロベルトも、何かおかしいぞ・・・?」
「・・・この一年間、色々あったんですよ」
「一体何が起きたら・・・」
(いや、これ以上、踏み入れてはいけない)
レイドの本能が、そう語っていた。
「せっかく一日自由になったんです。街に、出てみませんか?」
「・・・そうだな」
そうして、レイドとエレーヌは、学園から出ていくのであった・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
あれから少し時が過ぎ、レイドたちは街に出ることが出来た。
王都の活気は一年前と全く変わっていない。
「私たちは、これを守っているのですよ」
「・・・なるほどな」
そして、再び歩き始める。
「さて、どこに行きましょうか。ご飯でも食べに行きます?」
「病み上がりだが、大丈夫なのか?」
「多分大丈夫でしょう。昏睡中でも、強引に食べさしていましたから」
「え? どうやって?」
「もちろん、魔法ですよ」
「ははは・・・」
(なんか想像したくないな・・・)
そう思うレイドであった。
「どこでもいいぞ、エレーヌが好きなところでな」
「そうですか、では早速お肉の店へ・・・!」
「そういや、肉が好きだったな」
「確か、貴方は葉っぱが好きでしたっけ?」
「いや、そんな訳でもないが・・・」
「なら大丈夫ですね、付いてきてください。あっちに良いステーキの店があるんです!」
そういい終わるや否や、エレーヌは走り始めた。
「お、おい! 待てよ! ・・・食い意地が張ってることで」
そうして、レイドもエレーヌの後を追うのだった・・・
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