上 下
67 / 89
第四章 学園 前期生編 ~予測不可能な学園生活~

第六十七話 岐路

しおりを挟む
「い、いやぁぁぁ!!」
「なっ・・・! どうしたんだ!」

 レシティアの悲鳴を聞き、レイドたちは直ちに駆けつけた。

「マリーが、マリーがぁっ!」
「・・・うそだろ」

 マリーはレシティアをかばい、黒き魔獣によって胸を貫かれていた・・・

「くそっ! マリーから離れろ!」
「ギシャァ!?」

「殺ったぞ! マリーは!」
「ねえ、返事をしてっ! マリーっ!!!」

 マリーは虚ろな目でレシティアを見つめる。
 もう、体は動かないのだろうか・・・

「マリー! 今すぐ、治癒魔術を!」
「あっ! エレーヌ、お願い! 何とかして!!」

「Θεραπευτική μαγεία, θεραπευτής...」
「ねえ、これで大丈夫よ・・・」

 そう言って、レシティアはそっとマリーの手を握った。
 しかし、反応はまたもや無い・・・

「おかしいよ~ なんで気が付かなかったんだ? 魔力探知は確かに動作してたのに・・・」
「・・・ロイクさん」

「何だい?」
「奴の体から、こんなものが出てきました」

 そうしてレイドはロイクに、何かを手渡した。
 紫色に光る、禍々しい球体だ。

「・・・これが体の中から出てきたのは確かかい?」
「はい、間違いありません」

「これは、認知疎外の魔道具だよ。なぜこれが体の中に・・・」
「つまり、人工物が体内にあったと・・・」

「うん、そういうことになるね」

 軽々しい物言いではあるが、ロイクの顔は非常に険しいものになっている。
 手に力がこみ上げ、今にも魔導具が割れてしまいそうだ。

「・・・ねえ、エレーヌ、まだなの?」
「ちょっと待ってください。・・・これは、厳しいです」

「え? なんでよ・・・ レイドだって治せたじゃないの!」
「内臓が潰れてしまっては、どうしようも・・・」

「嫌よ! 嫌よ!! 何とかしなさいよ! ねえ!」
「おい! 落ち着け!」

「アナタは黙ってなさいよ! レイドっ!」
「うぐっ、」

 レイドはレシティアに突き飛ばされ、転んでしまう。
 
「何をするんだ、レシティア・・・」

 そうしてもう一度立ち上がろうとしたときに、異変を感じた。

(な・・・ 急にめまいが・・・)

 レイドは立ち上がれず、その場にもう一度倒れこんでしまった。

「ん? レイド、大丈夫かい?」
「お、おい! しっかりしろよ! 俺が分かるか? カインだぜ?」

(っ・・・ 身体強化魔術の、げん、か・・・い)
 ――レイドは、そのまま、気を失ってしまったのである・・・




 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 
「レ、ド・・・ レイド・・・」

 ――何か、聞いたことのある声だな・・・

「聞こえますか・・・ レイド・・・」

 何もない、真っ白い空間が広がっている。
 自分の体は、無い。

 ・・・はっ! ”あの声”だ!

「良かったです・・・ 聞こえているようですね」
「また、お前か・・・」

「久しぶり、というべきでしょうか? 貴方にとっては、これが数年ぶりの再会ですからね」

 (やっぱり、どこから話しかけているかが分からないな・・・)
 ――もがこうとしても、実体が無いからどうしようも無い。

「さて、貴方は今、生死の狭間をさまよっています」
「・・・そうだ、マリー、マリーはどうなった!」

「貴方の運命が変わり、私も役目を終えたはずなのですが・・・ このままだとまた、死んでしまいます」

「やっぱり無視かよ・・・」

 これまでも、”そいつ”に話しかけたことはあったが、反応してもらえたことは無い。

「レイド・・・ 変えた未来を守るために、ひとつ忠告をしましょう」
「・・・なんだよ」

「貴方たちの中に、まだ裏切り者がいます。それを探し当てるのです! そうすれば、今度こそ脅威は打ち砕かれるでしょう!」

「裏切り者、だと・・・?」

 ――エレーヌ。いやいや、それは無いだろう・・・
   ロイク。これもあり得ない。はずだ・・・
   カイン。信じたい。友が裏切るはずが無いと。

 レシティア、ロベルト、エマ、マリー・・・

 だめだ。信じたくない・・・ なんで、そうなるんだよ・・・

「・・・理解できましたでしょうか。それでは、時間のようです」
「おい、最後に教えてくれ。お前は、何者なんだ・・・?」

 レイドがそう言っている間にも、意識が段々と薄くなっていっている。

「・・・それは、また、お教えする機会があるのかもしれませんね」

(・・・! 反応したぞ! おい、ちょっと、待って、く、れ・・・)











「ぅ・・・、う・・・ はっ!」

 レイドはまた、違うところで目が覚めた。
 辺りを見回していると・・・ どうやら、どこかの病室のようだ。

「・・・え、レイド・・・?」

 何か、懐かしい声が聞こえた。

「え、エレーヌ・・・ ゲホッ、ゲホッ・・・」
「っ・・・」

 たまたま病室に入ってきたエレーヌは、驚きの余り、持っていた杖を落としてしまう。 そして、そのまま・・・

「ああ、良かった!!」
「え? ちょ、エレーヌ・・・!」

 ――なんと、レイドに飛びついて来たのだ!

「ど、どうしたんだよ。なんか、身長も伸びたか?」
「・・・っ、当たり前ですよ! 貴方、一年も寝たきりだったんですよ!?」

「は? 一年・・・? え、えぇぇぇぇぇぇっ!!??」
「も、もう、帰ってこないかと・・・ ぐす・・・ぅ、ぅぅ・・・」

 エレーヌはそのまま泣き始めてしまった。
 レイドも何が何だか分からず、呆然としている。


 
 レイドたちの英雄章は、ついに、最終局面へと迫る・・・


 第四章 学園 前期生編 ~予測不可能な学園生活~ 終
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

底辺エンジニア、転生したら敵国側だった上に隠しボスのご令嬢にロックオンされる。~モブ×悪女のドール戦記~

阿澄飛鳥
SF
俺ことグレン・ハワードは転生者だ。 転生した先は俺がやっていたゲームの世界。 前世では機械エンジニアをやっていたので、こっちでも祝福の【情報解析】を駆使してゴーレムの技師をやっているモブである。 だがある日、工房に忍び込んできた女――セレスティアを問い詰めたところ、そいつはなんとゲームの隠しボスだった……! そんなとき、街が魔獣に襲撃される。 迫りくる魔獣、吹き飛ばされるゴーレム、絶体絶命のとき、俺は何とかセレスティアを助けようとする。 だが、俺はセレスティアに誘われ、少女の形をした魔導兵器、ドール【ペルラネラ】に乗ってしまった。 平民で魔法の才能がない俺が乗ったところでドールは動くはずがない。 だが、予想に反して【ペルラネラ】は起動する。 隠しボスとモブ――縁のないはずの男女二人は精神を一つにして【ペルラネラ】での戦いに挑む。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします! 感想待ってます! まずは一読だけでも!! ───────  なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。    しかし、そんなオレの平凡もここまで。  ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。  そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。  使えるものは全て使う。  こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。  そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。  そしていつの日か、彼は……。  カクヨムにも連載中  小説家になろうにも連載中

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

処理中です...