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第四章 学園 前期生編 ~予測不可能な学園生活~

第六十話 魔術と呪術の戦い

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~マルク側 控室にて~

「くそっ! ヤン! のうのうと負けるとは何事かっっ!!」
「も、申し訳ございません!! マルク様!!」

 マルクは頭を搔きむしりながら、怒りに染まった目でヤンを睨みつけていた。
 あの頃のマルクとは、もう違う。薬物にでも狂ったようだ。

「良いか! 我はこの試合に勝つために! わざわざ下賤な平民と下級貴族を選んだんだっ!」
「ひ、ひぃ・・・」

「なのに! その貴様らが負けてどうする!!」
「ごぼえぅ!」

 マルクはヤンを一発、また一発と殴った。それも、顔が変わるくらいに。
 そして、ロベルトの方に顔を向けた。

「いいか・・・? ロベルト、貴様が負けると我は不戦敗となる・・・ 分かっているな?」
「ええ、もちろん。分かっていますよ」

 ロベルトは静かに、それだけを伝える。

「良いか? どんな手を使ってもでも・・・ 勝て」
「どんな手でも、ね・・・」

「ふふふ、待っていろよレイド・・・ ”あの力”があれば、もう負けることは無い・・・」

 マルクはもうロベルトの話なんて聞いていない。
 ただ、不敵な笑みを浮かべながら、突っ立っているだけであった・・・


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 時は少し進み、ついに第二回戦が始まろうとしていた。

「エレーヌ~ お兄ちゃんも応援しているぞ~!」

 レイドの隣にはロイクが座っていた。
 観客たちも、主席と次席の戦いで大いに盛り上がっている。

「やあ、気分はどうかな? エレーヌ」
「・・・まあ、ぼちぼちですかね」

「僕はね、ずーっと、ずっと、君の実力が見たかったんだ。期待しているよ?」
「何を偉そうに・・・」

「両者そこまで! 試合の準備を始めてください!」

 試合監督の制止により、ロベルトとエレーヌは戦いの準備を始める。
 といっても、両者とも杖を取り出すだけだが。

「それでは、よーい、始めっ!!」

 ついに、戦いの火蓋が落とされた。

「A halottak lelkei... nekem...」
「させませんよ! はぁっ!!」

(くっ、無詠唱魔法か・・・!)

 エレーヌが詠唱魔法を行使せず、いきなり無詠唱を使ったことで、ロベルトの意表を突いた。
 ロベルトは始めていた詠唱を止めるしか手が無い。
 後手に回ってしまったのだ。

「エレーヌ、成長したじゃないか・・・ お兄ちゃんは嬉しいぞ~!」

(よし、初動は成功だ。このまま押し切ってくれ・・・)
 レイドはそう祈った。

「チュドンッ! チュドンッ! ドドドドドドドドドッッ!」

 エレーヌの更なる追撃がロベルトに襲い掛かる。

「くっ・・・!」

(な、なんて火力だ・・・ 近づけない!)

 そのままロベルトは押され続け、ついに端まで追いやられてしまった。

(今です・・・! 極大魔法を・・・!)

「Ω, ας έρθει η καταδίκη στον λαό του! Ο μεγάλος βομβαρδισμός!」
「まずいっ! Szellemek! Védjetek meg!」

「ドガァァァァァァンッ!!」

 エレーヌの放った爆裂魔法がロベルトに直撃した。

「やったか・・・!」
「・・・いいや、まだ倒れていないね~」

 ロイクの顔は険しいままだ。

「いいや、いいや、危なかった~」

 ロベルトはあの攻撃を受けてもなお、全くの無傷だったのである。

(手ごたえ無し・・・ ですか。この人は一体・・・?)

「さーて、僕の反撃といこうかぁ。Halál! Hadd vigyenek el a szellemek!」
「・・・! なんですかっ! これは!」

 エレーヌの周りに蒼い炎が纏わりついた。
 明らかにエレーヌの機動力が遅くなっている・・・!

(彼、こんなにも強力な呪術を・・・! 早く浄化魔術を施さなければ・・・!)

「くっ・・・ Καθαρίστε με...」
「させない! 亡霊たちよ! もっと苦しめるんだ!」

「う、ぁっ・・・ ああぁぁっ!!」

 エレーヌはついに、もがき苦しみ始める。
 ロベルトは少し、ニタァっと笑った気がした。

「エレーヌッ!!!」
「待て! レイド! ・・・今は神聖な試合だよ。耐えるんだ・・・」

(クソッ・・・!)

「これで止めだよ! Második eljövetel! A nagy átok, a feketedés!」
「ああああぁぁぁあっっ!! 腕がぁ・・・ ぁ・・・」

 ついに、エレーヌは左腕を抱えたまま、倒れてしまった。

「おい・・・ これが、試合なのか・・・?」
「大丈夫かよ、あの魔術師。尋常じゃない苦しみ方だったぞ・・・?」

 余りの残酷さと衝撃に、観客も戸惑っている。

「りょ、両者そこまでっ! ただ今の勝者、ロベルト!」

 ロベルトがそれを聞き終えると、静かに闘技場を去る。
 辺りは、とても静かだった・・・
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