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第四章 学園 前期生編 ~予測不可能な学園生活~
第五十五話 運命を共に
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ロイクとエレーヌに”あの夢”について、レイドは語った。
最初こそ二人は信じられないような顔をしていたが、レイドの真剣な顔を見て、二人も最後まで話を聞くことを決めたようだ。
「と、言うわけです。すぐに信じられるような話では無いですが・・・」
「確かにね・・・ 会う前からエレーヌのことを知っていたなんて、どんなおとぎ話だい?」
ロイクは口調こそいつもと変わりは無いが、その顔は険しい。
エレーヌは静かに、そして黙ったままだ。
「死ぬ運命を変えたと思ったのに、”あいつら”の脅威は消えない・・・ 一体どうすればいいんだ!」
レイドは拳を壁に叩きつける。
「多分、君には分からないだろうよ」
「・・・は?」
「もちろん、僕もどうすればいいか分からない。だってこの話を聞いたのが、これで初めてなんだからね」
「・・・・・・」
レイドは何も言い返せない。そのままロイクは話し続ける。
「君はその信用できるかどうか分からない”天啓”で、僕たちを助けたのは確かだ」
「・・・信用はできます! だって助けてくれたし・・・」
「・・・その”天啓”がもし、嘘をついていたら、どうするつもりだったんだい?」
「・・・どういうことですか?」
エレーヌの顔は暗い。
「信用する相手を間違っていないか、ということだよ」
「それはっ・・・」
「すまない。言い過ぎたようだね、打ち明けてくれてありがとう。また君が一人で突っ走らないための牽制だよ」
「え?」
重い雰囲気が一気に和らいだ。ロイクもいつもの感じに戻っている。
「その時はまだ出会ったばかりなんだ。君の選択は間違っていないよ」
「ロイクさん・・・」
「まあ、もうちょっと早く言ってくれれば、ファブリスは死ななかったかもね?」
「ははは・・・」
(冗談じゃねえ・・・)
レイドの乾いた笑いが辺りに響いた。
「・・・聞きたいことがあります」
ずっと黙っていたエレーヌがようやく口を開いた。
「なんだ?」
「私と出会う前から、私が死ぬ運命を知っていて、それを一人で変えようとしたんですか?」
(ちがうな、その時は自分のことしか考えていなかった。そんなことは全く思っていない)
「いや、違う。あくまで自分のためだ」
「・・・そうですか」
エレーヌが再び黙った。何か納得していないような顔だ。
「すみません・・・ ちょっと頭を冷やしてきます・・・」
「あ、ちょっと・・・」
レイドが呼び止めたが、止まることは無かった・・・
「仕方ないよ。まだ幼いんだ。こんなに複雑な事情を聞かされてはね・・・」
「そうですか・・・」
(どうしよう・・・ エレーヌに嫌われてしまったかも・・・)
と、そんなことを考えてばかりいるレイドだったが、それをロイクに気付かれたようだ。
「大丈夫、エレーヌのことは後で良い。彼女は賢いよ」
「・・・・・・」
「それよりもこれからのことだね。その、エマって子は本当に黒幕かい?」
「はい、俺の知っていることをはるかに凌駕するレベルの物だったので・・・」
「・・・多分、君と同じように”天啓”を授かった人だと僕は思うけど?」
「え? いや、それは・・・ いや、確かに・・・」
レイドはその時とても感情的になってしまったため、他の可能性なんて考えてもいなかった。
「そのエマにこれから起きることを聞いた方が良かった気がするけど・・・」
「・・・すみません」
レイドは素直に謝る。
「いいんだよ、誤解を解けばいいことだし。それより、問題はマルクか・・・」
「マルクは今、手が付けられないほどに暴走しています。どうすればいいでしょうか?」
ロイクはうーん、とそれとなく考えている。
「やっぱり、実力の違いを見せつけてやる気をなくさせるとか?」
(さすがはバイセン家、脳筋だ・・・)
「嫌だったかい? ちょうど来週ほどに、希望者で剣術大会を行うはずだったから・・・」
「・・・それに参加しましょう。必ず、マルクは戦いを挑んでくるはずです」
「よし、それじゃあ決まりだ。ミゲル教頭には僕から伝えておくよ」
「はい、お願いします」
「何か遺跡探索に役に立ちそうだからね。急がないと、それじゃあね!」
「また後で・・・」
ロイクはどこかへと飛び去る。
そうしてレイドはロイクとも別れ、ついには一人になった。
(信頼できる人・・・ カインにもこのことを伝えようか。 ・・・ロベルトにも)
レイドは間違いを犯さない。そう誓ったのだ。
(それにしても、エマは真の敵をベレーター家と言っていたが・・・ いったい誰を指すのだろうか?)
少なくともこの国にはいない家名だ。
外国からの攻撃としたら、それはもう立派な外交問題だ。
考えれば考えるほど分からなくなっていく。
(取りあえず、明日にでもいろんな人に聞いてみよう)
レイドはそう考え、自室へ帰ることにした。
最初こそ二人は信じられないような顔をしていたが、レイドの真剣な顔を見て、二人も最後まで話を聞くことを決めたようだ。
「と、言うわけです。すぐに信じられるような話では無いですが・・・」
「確かにね・・・ 会う前からエレーヌのことを知っていたなんて、どんなおとぎ話だい?」
ロイクは口調こそいつもと変わりは無いが、その顔は険しい。
エレーヌは静かに、そして黙ったままだ。
「死ぬ運命を変えたと思ったのに、”あいつら”の脅威は消えない・・・ 一体どうすればいいんだ!」
レイドは拳を壁に叩きつける。
「多分、君には分からないだろうよ」
「・・・は?」
「もちろん、僕もどうすればいいか分からない。だってこの話を聞いたのが、これで初めてなんだからね」
「・・・・・・」
レイドは何も言い返せない。そのままロイクは話し続ける。
「君はその信用できるかどうか分からない”天啓”で、僕たちを助けたのは確かだ」
「・・・信用はできます! だって助けてくれたし・・・」
「・・・その”天啓”がもし、嘘をついていたら、どうするつもりだったんだい?」
「・・・どういうことですか?」
エレーヌの顔は暗い。
「信用する相手を間違っていないか、ということだよ」
「それはっ・・・」
「すまない。言い過ぎたようだね、打ち明けてくれてありがとう。また君が一人で突っ走らないための牽制だよ」
「え?」
重い雰囲気が一気に和らいだ。ロイクもいつもの感じに戻っている。
「その時はまだ出会ったばかりなんだ。君の選択は間違っていないよ」
「ロイクさん・・・」
「まあ、もうちょっと早く言ってくれれば、ファブリスは死ななかったかもね?」
「ははは・・・」
(冗談じゃねえ・・・)
レイドの乾いた笑いが辺りに響いた。
「・・・聞きたいことがあります」
ずっと黙っていたエレーヌがようやく口を開いた。
「なんだ?」
「私と出会う前から、私が死ぬ運命を知っていて、それを一人で変えようとしたんですか?」
(ちがうな、その時は自分のことしか考えていなかった。そんなことは全く思っていない)
「いや、違う。あくまで自分のためだ」
「・・・そうですか」
エレーヌが再び黙った。何か納得していないような顔だ。
「すみません・・・ ちょっと頭を冷やしてきます・・・」
「あ、ちょっと・・・」
レイドが呼び止めたが、止まることは無かった・・・
「仕方ないよ。まだ幼いんだ。こんなに複雑な事情を聞かされてはね・・・」
「そうですか・・・」
(どうしよう・・・ エレーヌに嫌われてしまったかも・・・)
と、そんなことを考えてばかりいるレイドだったが、それをロイクに気付かれたようだ。
「大丈夫、エレーヌのことは後で良い。彼女は賢いよ」
「・・・・・・」
「それよりもこれからのことだね。その、エマって子は本当に黒幕かい?」
「はい、俺の知っていることをはるかに凌駕するレベルの物だったので・・・」
「・・・多分、君と同じように”天啓”を授かった人だと僕は思うけど?」
「え? いや、それは・・・ いや、確かに・・・」
レイドはその時とても感情的になってしまったため、他の可能性なんて考えてもいなかった。
「そのエマにこれから起きることを聞いた方が良かった気がするけど・・・」
「・・・すみません」
レイドは素直に謝る。
「いいんだよ、誤解を解けばいいことだし。それより、問題はマルクか・・・」
「マルクは今、手が付けられないほどに暴走しています。どうすればいいでしょうか?」
ロイクはうーん、とそれとなく考えている。
「やっぱり、実力の違いを見せつけてやる気をなくさせるとか?」
(さすがはバイセン家、脳筋だ・・・)
「嫌だったかい? ちょうど来週ほどに、希望者で剣術大会を行うはずだったから・・・」
「・・・それに参加しましょう。必ず、マルクは戦いを挑んでくるはずです」
「よし、それじゃあ決まりだ。ミゲル教頭には僕から伝えておくよ」
「はい、お願いします」
「何か遺跡探索に役に立ちそうだからね。急がないと、それじゃあね!」
「また後で・・・」
ロイクはどこかへと飛び去る。
そうしてレイドはロイクとも別れ、ついには一人になった。
(信頼できる人・・・ カインにもこのことを伝えようか。 ・・・ロベルトにも)
レイドは間違いを犯さない。そう誓ったのだ。
(それにしても、エマは真の敵をベレーター家と言っていたが・・・ いったい誰を指すのだろうか?)
少なくともこの国にはいない家名だ。
外国からの攻撃としたら、それはもう立派な外交問題だ。
考えれば考えるほど分からなくなっていく。
(取りあえず、明日にでもいろんな人に聞いてみよう)
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