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第四章 学園 前期生編 ~予測不可能な学園生活~

第五十四話 マルクの乱入

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「ちょっと・・・ 何を勘違いしているのよ・・・」

 レイドは抜刀し、エマに静かに近づく。
 周りの生徒も何か異常だと感じ、こちらに集まってきた。

「おい、喧嘩か?」
「いや、あいつ剣を持っているぞ! あの女が危険だ!」

(これで・・・ すべてが終わる・・・)
 レイドは周りのことなんて見えていない。そのまま歩みを止めることは無かった。

「わ、私がべレーター家のはずがないでしょ!」
「・・・何?」

「だ、だって私平民だし・・・」
「名前など、いくらでも変えられるだろう? お前が、”あれ”を知っているからだよ」

「そんなの・・・ ひぃっ!」

 レイドの剣がエマの首筋にまで届く。

「おい、本当にやばいぞ! どうするよ!」
「だけどあいつってレイドだろ? 化け物じゃねえか!」

 野次馬の生徒たちは皆、止めに入らない。だが、ただ一人を除いては・・・

「おい! レイド! 何をしているんだ!」
「・・・マルク?」

 どこかへ消えたはずのマルクが戻ってきた。

「その剣をしまえ!」
――そして、こちらに剣までも向けてきたのだ。

「・・・なんのつもりだ?」
「決まっているだろう! その女を助けるためだ!」

「はぁ・・・?」

(こいつ、今さら正義の味方にでもなったつもりか?)

「さあ、来るんだ! 女!」
「え、え? 急に何?」

 エマも突然のことに困惑する、そもそもマルクが誰だか分かっていない状況なようだ。
 マルクは強引にエマを引き寄せた後、こちらに剣を再び向けてきた。

「良いか? お前が次何か悪事を働こうとしても、俺が止めてやる!」
「・・・状況も理解しないで突撃してくるとは、いい度胸だな?」

「はっ! よく言うな!」

(なぜマルクは勝てる自信があるんだ?)
 マルクは過去、レイドに惨敗している。本来ならばまた突っかかることは自殺行為に等しいはずだ。

「・・・マルク、お前、剣が変わったか?」
「ようやく気付いたようだな! 我は、この世で一番強力な魔剣を見つけたのさ!」

 マルクの剣は、黒く輝く剣に変わっている。

「いいからエマをこちらに渡すんだ。分かった、殺しはしない」
「・・・そんな戯言、信じられるわけがないだろう!」

 ――うっとおしい。だが、こいつの言っていることは正しい。
 しかし、今逃したら、エマが逃げるかもしれない!

「・・・俺にも譲れないものがある。ここで退かないならば、お前もただじゃ済まないぞ!」
「ようやく本性を見せたか! レイドぉ!」

「・・・止めてください! 私がレイドと話をしますからぁ!」
「うるさい! 女! 貴様は黙って見てろ!」

「・・・え?」

 さて、レイドとマルクは一触即発の状態だ。
 野次馬たちも、静かにその状況を見ている。

「・・・何をしているんですか! レイド!」
「エレーヌ・・・」

 すると、騒ぎを聞きつけたエレーヌがレイドの元へ駆けつけてきた。

「あいつが、あいつが! 全て知っているんだ! 俺の敵だ!」
「何を訳の分からないことを言っているんですか! 取り合えず落ち着いてください!」

「もしかして、俺がおかしいのか?」
「そうですよ! いったん落ち着いて下さい!」

 レイドはその場でよろめき始める。

「エレーヌ! 飼い犬のしつけがまるでなっていないようだな!」
「飼い犬・・・? まさか、レイドのことを言っているんですか?」

「そうだ! 犯罪者予備軍はさっさとCクラスに帰るんだな! なぜ貴様らが授業に参加できるのかも不思議なんだが」

「あの、私もCクラスなんですが・・・」
 エマが気まずそうにマルクにそう言った。

「何!? それは大変危険だ! すぐにAクラスに移転させよう!」

「それはさすがにおかしいだろ!」
「そうだそうだ! 部外者が出しゃばるな!」
 周りの生徒たちからも批判の声が上がる。
 マルクが登場した時から、彼らの視線は冷たかった。

「ええい! うるさい! 我の父上は誰だと思っているんだ!」
「・・・・・・」

「フン! 最初からそうしておくんだな! 行くぞ! 女!」
「え? ちょ、ちょっと・・・!」

 そのままエマはマルクによってどこかへと連れ去られてしまった。

「はーい! 皆そこで何しているの~?」
「ロイク先生だ。仕方ない、もう行くか」
 
 野次馬もその場からいなくなった。
 辺りにはレイドとエレーヌ、そしてロイクしかいなくなる。

「・・・落ち着きましたか? レイド」
「ああ、だが、あいつに聞かなければならないことが・・・」

「それは、また今度にしましょう?」
「・・・ああ」

「何があったか、聞かせてくれるかい?」

(ロイク、エレーヌは家族みたいなものだ。いっそ、話してしまうのもいいのかもしれない・・・)
 レイドはそう考えた。

「・・・エレーヌ、ロイクさん。今から話したいと思います。信じられないと思いますが、一旦聞いてください」

 エレーヌとロイクは、無言でうなづいた。
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