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第三章 学園入学編 ~崩壊した本編~

第三十四話 バイセン家、出立

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 アミアンの騒乱から半年が経った。
 そして、今レイドたちは王立学園へ向かいにバイセン家の玄関まで来ている。

(いやあ、きつかったなあ・・・)
 レイドはこの半年間、エレーヌに徹底的に受験対策をさせられた。
 あーだ、こーだ・・・ エレーヌが熱心すぎて参ってしまう。

「カインも王立学園へ行くのか?」
「ああ、俺も影でいろいろやってたんだぜ」
 カインが胸を張って答える。

「レイド、王都シャロンへ向かう馬車が用意できたそうです」
「そうか。では、荷物を運び込むぞ」
 レイドはラジとソニアの方へ顔を向けた。
 どちらも神妙な顔でこちらを見ている。

「エレーヌ、レイド、カイン・・・ ここから数年間お別れか・・・ 寂しくなるな」
「ラジさん。2年したらすぐ戻ってきますよ」
 そう言ってラジを慰めようとする。

「エレーヌのことを頼んだ。君だけが唯一信頼できる男だ」
「ちょっと・・・ 父さん、私は一人でもやれますよ」

「しかし、レイドをあんなに王立学園に推薦していたのはエレーヌだろう」
「な!? それは黙っといてくれるという約束だったじゃないですか!」
 エレーヌは慌てて弁明しようとする。

「レイド、これには訳がありまして・・・」
「大丈夫、全て分かってる」
「す、全て分かっている!? まさか・・・」
(? 俺に教育の機会を与えてくれたんじゃ無いのか?)
 何か行き違えている気がするが・・・ まあ気にしないことにしよう。

「そうだエレーヌ。渡したいものがある」
 ラジはそう言うと、何やら杖のようなものを持ってきた。

「父さん・・・ それは?」
「エレーヌとレイドで、昔遺跡に行っただろう? これはその門番が待っていた杖を使えるようにしたものだ。名前はフェイスと言うらしい」
 そう言ってその杖、フェイスをエレーヌに手渡す。
 特殊な金属で作られたであろうこの杖は、神々しく輝いている。

「・・・ありがとうございます。 今持ってる杖はもう古かったんで、変えようと思っていたんですよ。大切にします」
 そうしてエレーヌはフェイスを大事そうに抱えた。

「お礼はロイクに言ってくれ。あいつが全て調整したんだ」
「そうなんですか。ところで、ロイクは・・・?」
 そういえばさっきからロイクを見かけない。どこへ行ったのだろうか。

「おはよう! みんな! 今日もいい天気だねえ」
「ロイクさん!? なんで馬車に?」
 なんとロイクは馬車の中から出てきた。

「なあに、僕もちょっと王都に用事ができてしまってね・・・ どうせなら一緒に行こうと思っていたのさ」
「兄さん、まさか学校まで来る気は無いですよね?」
「ま、まさか! そんなことはないぞエレーヌ」

 ロイクは一瞬動揺したように見えたが、何事もなかったかのように再び馬車に戻った。
 
「さあ、乗りましょう」
「エレーヌ。辛くなったらすぐ帰って来るのよ~」
「母さん・・・」
 先程まで黙っていたソニアも、ついに口を開けた。

「レイド君~ ちょっときてくれるかしら」
「? 何ですか、ソニアさん」
 レイドがソニアに近づいた瞬間、猛烈な速さで膝蹴りが飛んできた。

「!!??」
 レイドは慌てて受け止める。少しでも遅かったら内臓が逝っていただろう。

「ふふふ、合格よ~ 貴方は十分に強くなったわ。これなら、エレーヌのそばにいてもいいわね」
(こ、怖ええ・・・!)
 レイドは逃げるように馬車に乗り込んだ。すでにみんな乗っていたようだ。

「・・・皆さん揃ったようですね。それでは、馬車を出してください」
 レイドたちが乗った馬車はついに動き始める。

「頑張れ! 間違っても試験に落ちてくるなよ」
「ファイトよ~」
 ラジとソニアは、見えなくなるまで手を振り続けた。

 レイドたちの新たな旅路が始まったのだった・・・


「フィウ~ 風が気持ちいいぜ!」
「カイン、外にいるのはいいが、落ちても知らないぞ?」

 今レイドたちは馬車に揺られている。
「ロイクさん、ここから王都まで何日かかるのですか?」

「うーん、ざっと一週間かなあ。リヨンを経由した後にエッセンへ向かうよ」
「エッセン・・・!」

 レイドの家族が治めている街だ。いや、もう家族とは呼べないだろうが・・・

「大丈夫さ、僕たちが付いている。ていうか君は十分強いよ」
「それに、今のエッセンはとんでもないことになっているらしいぜ」
 カインが会話に入ってきた。

「それは、どういう・・・」
 レイドはカインに問おうとしたが、途中でやめた。何か肩に乗っかる感触がしたのだ。

「・・・・・・すぅ」
 どうやらエレーヌは寝てしまったようだ。
 
「グギギ・・・ レイドぉ、・・・いや、起こしたらダメか。我慢我慢我慢・・・」
 漏れ出る殺気がレイドに突き刺さる。

「へへ、お熱いねえ」

 しばらく、馬車では殺伐とした雰囲気が続くのだった・・・
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