魔力無し、チート婚約者ができる ~インテグリー=フェイス 婚約者は裏ボスだった!? 死の運命を変え、ゲーム本編をぶっ壊す!~

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第ニ章 運命との戦い

第二十七話 不意打ち

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「どうやら、あちらの方では戦いが始まったようだね・・・」
 ロイクは煙が上がっている街の方向を見てそう言う。

「ラジさんたちは無事でしょうか・・・」
 レイドは落ち着かない様子で話す。
 ここ、バイセン家でも緊張が高まっていた。

 先ほど、カインが街からこちらへ向かってくる何かを見たと言うのだ。
「あの黒い何かはよ、絶対にこちらに向かってきてたぜ!」
「本当か? 何かの見間違いではないのかい?」

「いいや! 俺はちゃんと見たぞ、ロイクの兄貴も気を張っていた方がいい」
「ふーん・・・ そこまで言うのなら・・・」

 ロイクは何やら魔術を唱え始めた。
「Ω παντοδύναμο μάτι που βλέπει τα πάντα γύρω μου ... δύναμη σε μένα!」

 ロイクを中心に魔力の波が広がる。どうやら広域探知魔法を使用したようだ。
「近くの森にも大きな反応は無い・・・ 敵と見られる反応は無いね」
 ロイクは淡々と述べる。

「そんな! 俺は確かに見たんだって! 黒い何かがこっちに来るのを!」
「・・・」

 どうやらロイクは完全に興味を失ったらしい・・・ カインも何か腑に落ちない表情だ。

「ロイクさん。もしかしたら、相手は認識阻害魔法でも使っているんじゃ無いですか?」
「認識阻害魔法・・・? ははは! 相手は知能もない魔獣だぞ? そんな高度な魔術を使うわけが無いじゃないか」
 ロイクは相変わらず取り合う気がない。

(何か嫌な予感がする・・・ 黒き獣たちは異常に統率がとれているというのに、知能を持った敵はいないと言い切ることは出来るのか?)

「心配しなくても良いよ、こう見えても僕はバイセン家では一番強いんだ。何か来ても返り討ちにしてやるさ。可愛いエレーヌを守らないといけないしね」
「そういう・・・ ものですかね・・・」

 レイドたちの緊張は解かれることとなる。ただし、今回はそれが命取りになったようだ・・・

「エレーヌの様子はどうだい?」
 ロイクはそうレイドに問う。

「はい、先ほど来た呪術に詳しい方からの話によると、あれは精神攻撃の一種ならしいです。相手が苦しめば苦しむほど、呪いの効果も高まっていくようで・・・」
「・・・つまり、エレーヌが悲しむと呪いが進行してしまうのか?」
「ええ、どうやらそのようです」
 すると、ロイクが突然立ち上がった。

「じゃあ、僕が慰めに行くよ! 一日中エレーヌの側でお世話をするんだ!」
「何言っているんですか! ちゃんと家を守ってくださいよ! そういうのは使用人たちが引き受けていますから!」
「嫌だ嫌だ! 僕はエレーヌの元へ・・・!」

 レイドとロイクは揉み合いになる。カインはその様子をアホらしそうに見ていた。

「何やってんだか・・・ ん?」
 カインは不意に空を見上げる。

 カインは目を疑った。遠いが・・・ 目視できる範囲に巨大な黒い龍がこちらを見下ろしているではないか!

「おい! 敵襲だ!」
 カインは叫ぶ。

「敵襲って・・・ 探知魔法には何も引っ掛からなかったじゃ・・・」
 ロイクは興味が無さそうにカインの方を見たが、指をさした方向を見て、ようやく理解した。

 黒い龍は攻撃準備をすでに始めていた。口から青い炎が見える・・・
「まずいぞ! 今すぐ防御するんだ!」
 黒き龍が攻撃するまで僅かな猶予しか無かった。

 「Τοίχος φωτός! Προστατέψτε μας!」
 ロイクは即座に防御魔法を展開したが、不十分だったようだ・・・

 黒き龍から青い炎が放たれる。
「ゴオオオオオン!」
 凄まじい勢いと共に、バイセン家の庭を焼き払っていく。
 屋敷の窓は全て割れて、内部も一部焼失したようだ。

(う・・・ 体が、熱い・・・!)
 レイドは咄嗟に厨房に逃げ込んだが、火の手はここまで回って来たようだった。しかし、幸いなことに火傷は軽く済んだ。
 周囲には焦げ臭い匂いが漂っている・・・

「・・・! カイン! ロイクさん!」
 レイドは二人のことを心配して、確認しに行こうとドアノブに手をかけた。

「あ、熱い!」
 ドアノブはとても触れるほどの温度では無かった。レイドは仕方なくドアを蹴り飛ばす。

「ドンッ!」
 レイドは強行突破した後、庭があった方へ走り出した。

「カイン! ロイクさん!」
 庭は完全に焼け野原となっていた。もし、まともに食らっていたら・・・
 レイドは背筋が凍る。

「レイド様・・・」
 カインが屋敷の向かい側から出て来た。

「カイン! 大丈夫だったか!」
「ああ、まあな。屋敷がちょうど壁になってくれて助かったぜ・・・ それより、ロイクの兄貴は・・・?」
 レイドとカインは辺りを見回す。ロイクは先ほどの位置に留まったままだった。

「・・・! ロイクさん!」
「・・・・・・」
 しかし、ロイクからは返事がない。

 よく見たら全身に火傷ができており、左腕においては服が焼けて肌がただれていた・・・ 
 ロイクは一方向を見たまま、決して動かない。

「奴が、来るぞ・・・」 
 ロイクは、ポツリとつぶやく。

 彼が見ていた先には、近づいてくる黒き龍がいた。
「キャキャキャ! 無様ねえ!」

 竜の上に、誰かが乗っている!? 
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