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第一章 狂人たちとの出会い
第十六話 運命に抗う男
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レイドがバイセン家に来てから一週間がたった。
ロイクから地獄のような特訓を受け続け、レイドは強靭な体を手にすることが出来ていた。
「すごい・・・ 本当に強くなっている・・・」
レイドは違いを身に染みて感じていた。今まで構えるのが精いっぱいだった剣も、軽々と振ることが出来る。
「ふふふ、僕の指導は間違っていなかったようだねえ・・・」
ロイクが自信満々に言う。痛みに耐えながらの訓練は殺意すら湧いたが、今回だけは大目に見るとしよう。
「ありがとうございました! ロイクさん」
「ああ、なんてことは無いさ。それより、ほとぼりが冷めたら・・・ (エレーヌとの婚約を破棄して) ね?」
「はい! (婚約者としての自覚を持つため) 頑張ります!」
「? 頑張ります・・・? まあ、いいや」
ロイクはそう言うと剣を鞘に収めた。
「あ、そうだ。そろそろ、エレーヌに演算を教える時間では? 早く行ってね~」
ロイクが太陽の位置を確認する。もう、正午辺りのようだ。
レイドも現在時刻を確認する。
「あ、そうですね、では、行ってきます」
そうして、急ぎ足で館に向かうのだった・・・
レイドはエレーヌに、統計学や、暗算のコツを教えている。どうやら、暗算の精度と速さは、直接魔法の実力に関わってくるそうなのだ。
ロイクは、電撃系の魔術を軽々と使用しているが、これは魔法陣無しで唱えていると、無駄な演算をしなくていいらしい。
大型の魔術を使用する場合は、必要なのだ。
「このように、私は大型魔術を使うのが役目となっているんです。兄さんや、父さんが前衛として守ってくれるからですね」
「へえ、なるほど・・・」
この一週間で、かなりエレーヌと打ち解けることが出来た。どうやら、いつもぼろぼろになりながら帰ってくるレイドを見て、回復魔術を施すなど、かなり世話焼きになってくれたようなのだ。
ちょっと面目ないが、内心はものすごくうれしい。
「レイドさん、この数式を簡単にするためにはどうすればいいですか?」
「これはね・・・ こことここを先に処理することによって、あとは楽になるよ」
「なるほど・・・ レイドさん、教えるのが上手なんですね・・・」
エレーヌが感心したように言う。
(えへへ、そ、そうかなあ!?)
これほど喜びを感じたことは無い。あ、いけない、いけない。顔に出したらだめだ。
レイドは何とか神妙な顔で持ちこたえる。
「完全に理解することが出来ました。レイドさん、ありがとうございます」
エレーヌは、ぺこりと頭を下げる。
「為になれてよかった」
レイドは、バイセン家に来てからかなり明るくなった。家族から迫害されていた時期と比べると、一目瞭然だ。
エレーヌが立ち上がった時、ふと思いついたように言った。
「そうだ、レイドさん。私の魔術、見てみます?」
「・・・! 見たい!」
レイドはものすごい勢いで食いつく。
エレーヌの実力を見る絶好の機会だ。これを逃す手は無い。
「そんなにですか・・・ では、いまから庭園へ行きましょう」
エレーヌは杖を持ち出すと、部屋の外に出た。
レイドも後からついていく。
それから数分後・・・
「さあ、ここらへんでいいでしょう」
レイドたちは庭園のさらに奥の方まで来ていた。どうやらここが練習場みたいだ・・・ なんかクレーターがあるぞ・・・
「分かった。よろしく頼む」
「ええ、さっそく撃ってみましょう」
エレーヌがそう言うと、詠唱を始めた。周りから、何やら魔法陣が浮かんでくる・・・
「Στέλνω τη φλόγα μου... Να είσαι μαζί μου σαν πνεύμα...」
次第に、魔法陣が大きくなってきた。杖から、巨大な火の玉が創り出される・・・
「Κάψτε! Φλόγα!」
エレーヌがそう言った直後、火の玉は一直線に発射された。
やがて地面に着弾する。
「ドガアアアアアアンン!!!」
凄まじい轟音と共に、辺り一面が火の海となった。この一瞬でだ。
ものすごい熱気が皮膚に刺さる。
「え、凄くない? これが普通なの?」
「まあ、これほどの魔術を行使するのは私くらいだと思いますよ。 ・・・ドャァ」
エレーヌは胸を張って言う。
「まじかよ・・・」
俺なら多分・・・ 瞬殺されるな。
レイドは今、もう一度理解することとなる・・・ この家族が、どれだけ異常なのかを・・・
これは、悲惨な運命を迎えてしまう者たちが、運命を変えるために、奮闘する物語・・・
たとえ、どんな試練が立ちはだかったのしても、彼らは未来の為に、抗う。
レイドよ、刻一刻と近づく死の運命を変え、君がこの物語の、主人公になるのだ!
第一章 狂人たちとの出会い 完結
~あとがき~
ここまで読んで頂きありがとうございます!
「面白い!」
「続きが気になる!」
と思った方は、是非、応援よろしくお願いします!
ロイクから地獄のような特訓を受け続け、レイドは強靭な体を手にすることが出来ていた。
「すごい・・・ 本当に強くなっている・・・」
レイドは違いを身に染みて感じていた。今まで構えるのが精いっぱいだった剣も、軽々と振ることが出来る。
「ふふふ、僕の指導は間違っていなかったようだねえ・・・」
ロイクが自信満々に言う。痛みに耐えながらの訓練は殺意すら湧いたが、今回だけは大目に見るとしよう。
「ありがとうございました! ロイクさん」
「ああ、なんてことは無いさ。それより、ほとぼりが冷めたら・・・ (エレーヌとの婚約を破棄して) ね?」
「はい! (婚約者としての自覚を持つため) 頑張ります!」
「? 頑張ります・・・? まあ、いいや」
ロイクはそう言うと剣を鞘に収めた。
「あ、そうだ。そろそろ、エレーヌに演算を教える時間では? 早く行ってね~」
ロイクが太陽の位置を確認する。もう、正午辺りのようだ。
レイドも現在時刻を確認する。
「あ、そうですね、では、行ってきます」
そうして、急ぎ足で館に向かうのだった・・・
レイドはエレーヌに、統計学や、暗算のコツを教えている。どうやら、暗算の精度と速さは、直接魔法の実力に関わってくるそうなのだ。
ロイクは、電撃系の魔術を軽々と使用しているが、これは魔法陣無しで唱えていると、無駄な演算をしなくていいらしい。
大型の魔術を使用する場合は、必要なのだ。
「このように、私は大型魔術を使うのが役目となっているんです。兄さんや、父さんが前衛として守ってくれるからですね」
「へえ、なるほど・・・」
この一週間で、かなりエレーヌと打ち解けることが出来た。どうやら、いつもぼろぼろになりながら帰ってくるレイドを見て、回復魔術を施すなど、かなり世話焼きになってくれたようなのだ。
ちょっと面目ないが、内心はものすごくうれしい。
「レイドさん、この数式を簡単にするためにはどうすればいいですか?」
「これはね・・・ こことここを先に処理することによって、あとは楽になるよ」
「なるほど・・・ レイドさん、教えるのが上手なんですね・・・」
エレーヌが感心したように言う。
(えへへ、そ、そうかなあ!?)
これほど喜びを感じたことは無い。あ、いけない、いけない。顔に出したらだめだ。
レイドは何とか神妙な顔で持ちこたえる。
「完全に理解することが出来ました。レイドさん、ありがとうございます」
エレーヌは、ぺこりと頭を下げる。
「為になれてよかった」
レイドは、バイセン家に来てからかなり明るくなった。家族から迫害されていた時期と比べると、一目瞭然だ。
エレーヌが立ち上がった時、ふと思いついたように言った。
「そうだ、レイドさん。私の魔術、見てみます?」
「・・・! 見たい!」
レイドはものすごい勢いで食いつく。
エレーヌの実力を見る絶好の機会だ。これを逃す手は無い。
「そんなにですか・・・ では、いまから庭園へ行きましょう」
エレーヌは杖を持ち出すと、部屋の外に出た。
レイドも後からついていく。
それから数分後・・・
「さあ、ここらへんでいいでしょう」
レイドたちは庭園のさらに奥の方まで来ていた。どうやらここが練習場みたいだ・・・ なんかクレーターがあるぞ・・・
「分かった。よろしく頼む」
「ええ、さっそく撃ってみましょう」
エレーヌがそう言うと、詠唱を始めた。周りから、何やら魔法陣が浮かんでくる・・・
「Στέλνω τη φλόγα μου... Να είσαι μαζί μου σαν πνεύμα...」
次第に、魔法陣が大きくなってきた。杖から、巨大な火の玉が創り出される・・・
「Κάψτε! Φλόγα!」
エレーヌがそう言った直後、火の玉は一直線に発射された。
やがて地面に着弾する。
「ドガアアアアアアンン!!!」
凄まじい轟音と共に、辺り一面が火の海となった。この一瞬でだ。
ものすごい熱気が皮膚に刺さる。
「え、凄くない? これが普通なの?」
「まあ、これほどの魔術を行使するのは私くらいだと思いますよ。 ・・・ドャァ」
エレーヌは胸を張って言う。
「まじかよ・・・」
俺なら多分・・・ 瞬殺されるな。
レイドは今、もう一度理解することとなる・・・ この家族が、どれだけ異常なのかを・・・
これは、悲惨な運命を迎えてしまう者たちが、運命を変えるために、奮闘する物語・・・
たとえ、どんな試練が立ちはだかったのしても、彼らは未来の為に、抗う。
レイドよ、刻一刻と近づく死の運命を変え、君がこの物語の、主人公になるのだ!
第一章 狂人たちとの出会い 完結
~あとがき~
ここまで読んで頂きありがとうございます!
「面白い!」
「続きが気になる!」
と思った方は、是非、応援よろしくお願いします!
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