上 下
11 / 52
第一章 狂人たちとの出会い

第十一話 狩人の街 アミアン

しおりを挟む
「ぜぇ、ぜぇ、ロイクの奴どこへ行ったんだ?」
 カインは辺りを見回す。

 走り去ったロイクを追いかけるためにこちらも走ってきたが、見つからない。
 ついにはアミアンに着いてしまった。
 堅牢な石造りの壁に囲まれているこの街は、東の国境の最前線である。

「アミアンに着いてしまったな・・・ ひとまず中に入ってみよう。流石のあいつも少したったら俺たちのことを探し始めるだろう」
 レイドはそう言って街の検問所に向かった。
 
 特に何も起こることが無く入ることが出来た。必要だったのはお金だけだったようで、今まで働いた分とコレル子爵からもらった分で十分に足りた。

 検問所から真っすぐに伸びている街道には、さまざま店が並んでいる。
「ジャイアントベアの肉が手に入っているよ~ 早い者勝ちだ!」
「俺に買わせてくれ!」
「いや、俺だ!」

「すまない、武器を買いたいのだが・・・」
「・・・ここに並んでいるやつを自由に見ていきな。安くはしねえぞ」

 人々でにぎわっているのが分かる光景だ。 
「なあ、レイド様。腹が減ったよな。よかったらあれを食わねえか?」
 カインはそう言って少し先にある食堂を指さす。

(確かに、もう昼を過ぎているころだ。お金は十分にあるし、いいかな・・・)
「ああ、いいぞ。食いに行こう」
 レイドとカインは食堂へ向かった。

 食堂の中に入る。すでに中には沢山の人たちで溢れかえっていた。
「いらっしゃい。そこのテーブルに座んな」
 店員のおばさんにそう告げられ、レイドたちは外の見えるテーブル席に座る。

(さてさて、メニューは・・・)
 レイドはメニュー表を開いた。

 ~ ダムラヤの酒場 今日のメニュー ~

 ・ジャイアントベアのそのまんま丸焼き
 ・歴史あるポイザスネークのかば焼き
 ・ホーンラビットのジューシーすぎる唐揚げ
 ・各種酒類

 これはこれは。肉類で埋め尽くされているな。これも、狩人の街ならではの光景だろう。 
「とりあえず、一つ頼んでみようぜ」
 カインはそう言ってホーンラビットの唐揚げを注文した。
 
「へい、おまち!」
 しばらくたったのち、来たのは山盛りの唐揚げだ。明らかに一人では食べきることが出来なさそうなので、レイドとカインは協力して食することにした。

 うまい。うまいのだが・・・ いかんせん量が多すぎる。こんなの胃が持たれてしまいそうだ。
 レイドたちが夢中で食べている中、こちらを見てくる人がいた。

「おい、あの小僧が身に着けている剣。どう思うよ」
「ああ、あれはどう見ても魔剣だ。あいつはただ者じゃねえぞ・・・」
「きっとものすごい強者なんだろうな・・・」
 数人の戦士がそう話している。

(何かに見られているような・・・)
 レイドは、皆から畏怖の目で見られていることには気づいていなかった・・・

 数十分後、レイドたちはようやく食べ終わる。
「ふー、腹がいっぱいだぜ・・・」
 カインは満足そうな顔だ。

 ざわざわざわ・・・
 何やら外が騒がしい。
「なんだ? なんかの見世物か?」
 カインがそうつぶやくが、どうやら違ったようだ。

「レイド君! 探したよ~ 急にいなくなるからさあ」
 青髪の青年、ロイクだ。
 
「おい、あのロイクと知り合いならしいぞ! やっぱりただもんじゃねえ・・・!」
「あの狂人の・・・」
 先ほどの戦士たちがまた話し始める。さらにレイドは勘違いされることとなった。

「貴方が意味の分からないことを言いながら、走り去っていったじゃないですか!」
 レイドはそう反論する。
「え? そうだっけ? もう忘れちゃったよ! あはは!」
 ロイクはどうでもよさそうに反応する。

「それより、先に家にこのことを伝えておいたよ~ 一応迎え入れてくれるみたい。良かったねえ~」
 ロイクは万歳! の格好をする。

「ありがとうございます。今から向かいますか?」
 レイドはそう問う。

「うん。あ、一個先に言っておくね。 可愛い可愛いエレーヌに何か変なことをしようとしたら・・・ リアルに爆殺するよ?」
 ロイクから目の光が失う。

「やりません! やりません!」
 怖え・・・ レイドは顔を引きつらせながら言う。
「それでよし! じゃあ行くか!」
 ロイクはレイドたちを引き連れてバイセン家へ向かうことにした。

(ようやくのエレーヌとの初対面だ。俺は何があっても生き残る・・・ 運命を、変えるんだ!)
 レイドはそう決意する。

 エレーヌとの初対面。いや、再開とも言うべきだろうか・・・ レイドにとってこの出会いは、彼の意識を根本から変えることとなる。

 ちなみにあの後、レイドはアミアンの人々に、"狂人の犬” と呼ばれることとなる・・・ もちろん、彼はまだ知らない・・・
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

貴方のお気に入りにはなりません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:5

重なる。

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

憑依転生~手違いで死亡した私は、悪女の身体を乗っ取り聖女となる~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:48

悪役令嬢と元CIA連絡官

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

他人を傷つけて手に入れた幸せが続くはずもありません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:47

剣と弓の世界で俺だけ魔法を使える~最強ゆえに余裕がある追放生活~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:660pt お気に入り:542

処理中です...