9 / 89
第一章 狂人たちとの出会い
第九話 化け物の因子
しおりを挟む
レイドたち一行はバイセン領へ向け歩みを進めていた。
コレル子爵から馬を貸そうと提案があったのだが、あいにくレイドは乗れない。
身内から迫害された日々、そんなことを学ぶ余裕はなかったのだ。
「ここから歩いて2日ほどでバイセン領の領都、アミアンに着くだろう」
マリーは前を見ながら言う。
「なぜ、君がアミアンを目指しているのかは知っている。本当に敬語じゃなくていいのかい?」
「ああ、構わない。カインもそんなノリだろう」
レイドはカインを見る。
「あ? なんか文句あんのか?」
「だ、そうだ」
「はは・・・」
マリーは苦笑いだ。
「バイセン家は4人家族でね、長男と長女しかいないんだ。だけど家族全員が化け物みたいに強いらしいけどね・・・」
バイセン領は森に囲まれている。昔から外国の侵略や、森からやってくる魔獣たちを退けてきた貴族らしい。
もともと強力な魔獣が出現していたが、バイセン家が徹底的に狩りつくしたため、理解のある強い魔獣は森に引っ込んで出現しなくなったらしい。
だからこの街道も使用することが出来るのだ。
「それにしても何もねえな、ここら辺は」
カインがそうつぶやく。
辺りは森で囲まれている。アミアンまで本当に何もないそうだ。
「そうだな。だが、アミアンは凄い街だぞ? 私は一回行ったことがある」
「何がすげえんだ?」
「各地に魔導兵器が設置されていて、常に大量の魔導士が空を飛びまわっているんだ。あんなに武装化されているのはあの街くらいだろう」
「さらに、魔獣の希少な素材を手に入れるために、数々の狩人が世界中から集まっているんだ」
「へえ、早く行って見てみてえなあ」
カインがうなずく。
レイドたちはしばらくの間、そんな話をしていた。すると・・・
ゴオオオオオン!!!
突如として轟音が鳴り響く。
「な、なんだ!」
マリーが身構える。敵襲かもしれない。
「ギュラララララ・・・」
レイドたちの前に現れたのは、巨大な赤い竜。
「なんで、こんな魔獣が・・・」
この赤い竜は非常に強く、かの口から吐き出される灼熱の炎は骨も残さないという。
(まずい! このままだと死んでしまう!)
レイドはとても焦る。
赤い竜の口が開く。
そのまま、灼熱地獄に・・・ なんてことは起こらなかった。どうやら、様子がおかしい。
全身に傷があり、息も絶え絶えのようだ。
「ギュララ・・・」
そのまま、赤い竜は轟音と共に倒れてしまったのだ・・・
理解が追い付かないレイドたち。なぜいきなり赤い竜がここに現れ、そしてそのまま倒れてしまったのか・・・
「やあ、大丈夫かい? 旅の者たちよ」
空から声が聞こえてくる。
「誰だ!」
マリーは再び身構える。
「ちょっと街道に近かったから処分してたんだ。すごく抵抗してきてさ、逃げ回られたんだよねー」
空から青髪の少年がやってきたではないか! 彼は平然と話す。
(そんな! 災害ににもなりうる竜を平気で倒すだと!? なんだこいつは・・・)
レイドは冷や汗をかく。こんな化け物、もしかしたら・・・
「・・・貴方の名前は?」
マリーがそう問う。
「僕の名前? ロイク・バイセンさ。ここを治める貴族の一員だよ」
ロイク・バイセン・・・ エレーヌの兄にあたる。
化け物の噂は本当だったんだ。
「さあ、君たちも名乗るんだ」
ロイクはそう言う。
「マリーだ・・・」
「カインです・・・」
カインはおびえている。
「レイド・フォn」
レイドも名乗ろうとするが、途中で止められてしまった。
「ああ、もう良い。レイド・フォン・ユーラルだろ」
ロイクはやはり気付いたようだ。
「ふふふ、君か・・・ 僕の可愛い可愛いエレーヌの婚約者ってやつは! こちらへ来るという話は聞いてはいたが・・・ どうやら手間が省けたようだね・・・」
おぞましい悪意がロイクから漏れ出る。
(おいおい! 手間ってなんだよ!)
レイドは命の危険を感じる。
「本来ならばここで消し飛ばしているが・・・ 君の名声は聞き及んでいるよ。リヨンの救世主だって? それに免じて、一応家までには連れて行ってやるさ」
ロイクはため息をつきながらそう言う。
まさか、リヨンを救ったことがここで役に立つとは。
「あ、ありがとうございます?」
一応お礼を言っておこう。
「で、そこの二人は君の仲間かい?」
ロイクはカインたちを指さす。
「はい。カインが私の連れ添いで、もう一人のがリヨンから護衛を担っています」
「・・・じゃあ、その護衛さんはここでお別れだね、ここからは僕が代わりをするよ」
彼女をこれ以上付きまわすのは悪い。まあ、ほぼ強制というのもあるが・・・
レイドは彼女に振り向く。
「・・・いままでありがとうな、マリー。また会おう」
レイドとマリーは握手をする。
「・・・ああ、私も今回が一生の別れではない気がする。 ちゃんと生きておくんだぞ?」
彼女はロイクの方をちらっと見て言う。
「ははは・・・」
そうして、レイドたちはマリーと別れたのだった。
「うーん。随分とあっさりした別れだったねえ」
ロイクはあくびをする。
(お前が強引に別れさせたんだろ!)
そんなことはもちろん言えない。
「さあ、カイン君も来るんだね」
「う、うっす・・・」
「レイド、君とはずっと話をしたかったんだ・・・ まあ、時間は沢山あるしね・・・」
ロイクは悪意ある表情でそう言う。
果たして、レイドは生き残ることが出来るのだろうか・・・
コレル子爵から馬を貸そうと提案があったのだが、あいにくレイドは乗れない。
身内から迫害された日々、そんなことを学ぶ余裕はなかったのだ。
「ここから歩いて2日ほどでバイセン領の領都、アミアンに着くだろう」
マリーは前を見ながら言う。
「なぜ、君がアミアンを目指しているのかは知っている。本当に敬語じゃなくていいのかい?」
「ああ、構わない。カインもそんなノリだろう」
レイドはカインを見る。
「あ? なんか文句あんのか?」
「だ、そうだ」
「はは・・・」
マリーは苦笑いだ。
「バイセン家は4人家族でね、長男と長女しかいないんだ。だけど家族全員が化け物みたいに強いらしいけどね・・・」
バイセン領は森に囲まれている。昔から外国の侵略や、森からやってくる魔獣たちを退けてきた貴族らしい。
もともと強力な魔獣が出現していたが、バイセン家が徹底的に狩りつくしたため、理解のある強い魔獣は森に引っ込んで出現しなくなったらしい。
だからこの街道も使用することが出来るのだ。
「それにしても何もねえな、ここら辺は」
カインがそうつぶやく。
辺りは森で囲まれている。アミアンまで本当に何もないそうだ。
「そうだな。だが、アミアンは凄い街だぞ? 私は一回行ったことがある」
「何がすげえんだ?」
「各地に魔導兵器が設置されていて、常に大量の魔導士が空を飛びまわっているんだ。あんなに武装化されているのはあの街くらいだろう」
「さらに、魔獣の希少な素材を手に入れるために、数々の狩人が世界中から集まっているんだ」
「へえ、早く行って見てみてえなあ」
カインがうなずく。
レイドたちはしばらくの間、そんな話をしていた。すると・・・
ゴオオオオオン!!!
突如として轟音が鳴り響く。
「な、なんだ!」
マリーが身構える。敵襲かもしれない。
「ギュラララララ・・・」
レイドたちの前に現れたのは、巨大な赤い竜。
「なんで、こんな魔獣が・・・」
この赤い竜は非常に強く、かの口から吐き出される灼熱の炎は骨も残さないという。
(まずい! このままだと死んでしまう!)
レイドはとても焦る。
赤い竜の口が開く。
そのまま、灼熱地獄に・・・ なんてことは起こらなかった。どうやら、様子がおかしい。
全身に傷があり、息も絶え絶えのようだ。
「ギュララ・・・」
そのまま、赤い竜は轟音と共に倒れてしまったのだ・・・
理解が追い付かないレイドたち。なぜいきなり赤い竜がここに現れ、そしてそのまま倒れてしまったのか・・・
「やあ、大丈夫かい? 旅の者たちよ」
空から声が聞こえてくる。
「誰だ!」
マリーは再び身構える。
「ちょっと街道に近かったから処分してたんだ。すごく抵抗してきてさ、逃げ回られたんだよねー」
空から青髪の少年がやってきたではないか! 彼は平然と話す。
(そんな! 災害ににもなりうる竜を平気で倒すだと!? なんだこいつは・・・)
レイドは冷や汗をかく。こんな化け物、もしかしたら・・・
「・・・貴方の名前は?」
マリーがそう問う。
「僕の名前? ロイク・バイセンさ。ここを治める貴族の一員だよ」
ロイク・バイセン・・・ エレーヌの兄にあたる。
化け物の噂は本当だったんだ。
「さあ、君たちも名乗るんだ」
ロイクはそう言う。
「マリーだ・・・」
「カインです・・・」
カインはおびえている。
「レイド・フォn」
レイドも名乗ろうとするが、途中で止められてしまった。
「ああ、もう良い。レイド・フォン・ユーラルだろ」
ロイクはやはり気付いたようだ。
「ふふふ、君か・・・ 僕の可愛い可愛いエレーヌの婚約者ってやつは! こちらへ来るという話は聞いてはいたが・・・ どうやら手間が省けたようだね・・・」
おぞましい悪意がロイクから漏れ出る。
(おいおい! 手間ってなんだよ!)
レイドは命の危険を感じる。
「本来ならばここで消し飛ばしているが・・・ 君の名声は聞き及んでいるよ。リヨンの救世主だって? それに免じて、一応家までには連れて行ってやるさ」
ロイクはため息をつきながらそう言う。
まさか、リヨンを救ったことがここで役に立つとは。
「あ、ありがとうございます?」
一応お礼を言っておこう。
「で、そこの二人は君の仲間かい?」
ロイクはカインたちを指さす。
「はい。カインが私の連れ添いで、もう一人のがリヨンから護衛を担っています」
「・・・じゃあ、その護衛さんはここでお別れだね、ここからは僕が代わりをするよ」
彼女をこれ以上付きまわすのは悪い。まあ、ほぼ強制というのもあるが・・・
レイドは彼女に振り向く。
「・・・いままでありがとうな、マリー。また会おう」
レイドとマリーは握手をする。
「・・・ああ、私も今回が一生の別れではない気がする。 ちゃんと生きておくんだぞ?」
彼女はロイクの方をちらっと見て言う。
「ははは・・・」
そうして、レイドたちはマリーと別れたのだった。
「うーん。随分とあっさりした別れだったねえ」
ロイクはあくびをする。
(お前が強引に別れさせたんだろ!)
そんなことはもちろん言えない。
「さあ、カイン君も来るんだね」
「う、うっす・・・」
「レイド、君とはずっと話をしたかったんだ・・・ まあ、時間は沢山あるしね・・・」
ロイクは悪意ある表情でそう言う。
果たして、レイドは生き残ることが出来るのだろうか・・・
32
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ
真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします!
感想待ってます!
まずは一読だけでも!!
───────
なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。
しかし、そんなオレの平凡もここまで。
ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。
そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。
使えるものは全て使う。
こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。
そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。
そしていつの日か、彼は……。
カクヨムにも連載中
小説家になろうにも連載中
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
魂が百個あるお姫様
雨野千潤
ファンタジー
私には魂が百個ある。
何を言っているのかわからないだろうが、そうなのだ。
そうである以上、それ以上の説明は出来ない。
そうそう、古いことわざに「Cat has nine lives」というものがある。
猫は九つの命を持っているという意味らしく、猫は九回生まれ変わることができるという。
そんな感じだと思ってくれていい。
私は百回生きて百回死ぬことになるだろうと感じていた。
それが恐ろしいことだと感じたのは、五歳で馬車に轢かれた時だ。
身体がバラバラのグチャグチャになった感覚があったのに、気が付けば元に戻っていた。
その事故を目撃した兄は「良かった」と涙を流して喜んだが、私は自分が不死のバケモノだと知り戦慄した。
13話 身の上話 より
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ゲームの裏切り者に転生したが、裏ボスも反転していました
竹桜
ファンタジー
裏ボスを倒し続けていた主人公はゲームの裏切りキャラに転生した。
慢心した本来の主人公だった勇者が裏ボスを復活させたのだ。
だが、その裏ボスには厄介な特性があった。
反転という特性が。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる