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看病されました

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 ふと目が覚めると傍らに白い何かが見えた。

 「リョウ?」

 ベッドに突っ伏すように眠っているリョウに、昨日のことを思い出す。
 どうやら、家に帰ったことで気が緩み、熱で気を失ったようだ。そして、状況を見る限り、 リョウが看病してくれたのだろう。

 「リョウ、ありがとうな」

 手を伸ばしてその白い髪を撫でる。
 きっと触れたらさらりと手触りがいいんだろうな…と何度かすいていると、寝ぼけまなこのリョウと目があった。 

 「よかった…、 気がついたんだ…」

 胸を撫で下ろすように呟いてゆっくりと閉じた目蓋が、一拍置いてガッと開く。

 「~~っ!?」

 とっさに言葉が見つからないのか、ハクハクと口を動かした次の瞬間、濡れたタオルを顔面に当てて姿を消した。
 完全に照れ隠しとわかる様子が微笑ましくて笑うと、今度は乾いたタオルが顔に当たる。それでありがたく汗でベタつく、顔や身体を拭いてすっきりした。
 復活とまではいかないが、身体はだいぶ楽になっている。 これなら午前中の講義には出られるだろう。
 バスローブから着替えてリビングに行くが、特に何もなかった。
 怪奇現象を仕込めないほど、看病するために力を使わせてしまったのかと思うと申し訳なくなる。 もしかしたら、今もどこかで眠っているのかもしれない。

 「今日はケーキを買って帰るから、留守番よろしくな」

 昨日とは違うカバンを持って、玄関で声をかけたが返事はなかった。
 怒っているというよりは、先ほどの様子を見る限りかなり疲れてしまっているようだ。


ーーーーーー


 「…で、幽霊に看病してもらったと?」

 「ああ」

 「幽霊が美女ならめっちゃ羨ましい話なんだけどなぁ~」 

 昨日あったことを話しながらカバンを開けると中から四角い二段重ねのお弁当箱が出てきた。
 ずっしり重いので中身がちゃんと詰まっているらしい。

 「え…、なにそれ愛妻弁当? お前、幽霊云々言ってて彼女と暮らしてるわけ?」

 宗二の手元を見た斎がいじってくるが、そんなものはいない。
 結局、先生が来てしまったのでカバンを戻し、講義が終わると同時に食堂に直行した。

 「どうだった、やっぱり彼女のドッキリ?」

 かけ蕎麦の食券を持ってテーブル席に来た斎に急かされ、高校の時に使っていた青い弁当箱の蓋を取る。

 「うわぁ~、美味そうな豚の生姜焼き! この卵焼きとかーー…」
 
 一つ摘まもうとする手を叩き、下の段を開けるとそこには海苔で"呪"と大きく描かれていた。

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