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Second Tales:生意気なドラゴンにどちらが上かわからせます
Tale24:女神もうっかりしてしまうことはあるのです
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リリアの言葉で、ちょっとエロティックな装備にも愛着を持ち始めたとき。
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【名前】オーリから【メッセージ】が届きました!
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目の前に、にゅんっと黒い画面が現れた。
どうやら、うちの自慢の先兵はきっちりと仕事をこなしたようだ。
画面の下の方に触れて、メッセージ内容を表示させる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【名前】オーリ
【メッセージ】
標的の位置情報の直前で進めなくなった。
この先にはリリアしか行けないと思う。
周囲の安全を確保して、来るのを待つ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「オーリが上手くやってくれたみたい」
前回、ホワイトドラゴンに出会うまでの道すがら、かなりの数の魔物にも出くわした。
そして、リリアから教えてもらったのだが、シルバニア・ジャイアントウルフがいなくなった後の覇権を狙って、さらに多くの魔物が森に集結しつつあったそうだ。
『運営側の私がこんな発言をしていいのかわかりませんが、オーリ様にはなにか手枷でも嵌めていていただきたいものです』
揃えた両手を前に出しつつ、ため息をつくリリア。
捕まった犯人みたいな姿勢でも、リリアは可愛い。
『30そこそこのレベルで、あの森をほとんど無傷で切り抜けるなんてちょっと信じられませんね』
オーリには、私がホワイトドラゴンと戦う前に消耗しないように、代わりに森を攻略してもらった。
相互ブックマークの機能を利用すれば、街中でなくても任意の場所に転移することができるということだ。
「あの子、ゲームに関しては全身全霊だからね。ちょっと前に格闘系のゲームをやってたとき、現実で道場とかボクシングジムに通ったりしてたんだよ」
身体を鍛えはじめたのも、その頃だったように思う。
そのせいで学業がおろそかになったのだから、褒めはしない。
しかし、これは褒めるわけではないけど、あれだけ全力でなにかに打ち込めることは素直にかっこいいと思うし、姉として誇らしい。
『そのゲーム、鬼畜難易度で有名なやつですね。私もプレイしたことがあるのですが、制作者は頭がおかしいのかと思いました』
「ずっと遊んでいたのかは知らないけど、話を聞いていた限り一年ぐらいはやってたんじゃないかな」
その間に身長もぐっと伸びて、あんなに生意気になっちゃって。
子どもの頃から、私の方が小さかったことは確かだ。
でも、もう少し可愛げはあったような覚えがあるんだけどね。
『なるほど、あれを一年もプレイし続けたということでしたら、達人の域に達していても不思議ではありません。どおりで動きが洗練されているわけですね』
感心するかのように大きく頷くリリア。
ただ、大げさな動きのわりに、言葉に心がこもっていないような気がする。
うーむ……なんとなく、いつもよりお喋りだとも思う。
「やっぱり、心配?」
間違っているかもしれないから、“なにが”とか“誰が”とかを明確にせずに問いかけた。
すると、しばらくしてリリアは口を開く。
『……あの子が、自らを罰するかのように強さを追い求めてきた姿を、私は知っています。その過程で、弱者に対してはあのような態度を取るようになってしまったのです』
悲しげに顔を伏せつつ言葉を紡ぐ、まるで罰されなければならないのが自分であるかのように。
心配事は、あのドラゴンについてだったか。
『リリア様に敗れて、あの子の信念が折れてしまわないか、もっとねじ曲がってしまうのではないか……どうなるかわからないので、心配です』
俯いたまま、リリアは祈るように両手を組む。
その女神を体現する所作にも、悲しみや不安が混ざり込んでいた。
『この世界の生きとし生けるものは、全て大切な子どもたちです。ただ、あの子は……あの子だけは、特別なのです』
「……ねえ、リリア?」
組まれたリリアの手を覆うように、両手でそっと包み込んだ。
呼びかけに応えるように、リリアはゆっくりと顔を上げる。
「ちょっと、冷たいんじゃない?」
『えっ?』
しょぼんからきょとんに移りゆき、半ば閉じられていた目がぱっと丸くなった。
儚げな表情も美しくて好きだけど、ずっと見ていたいとは思わない。
「めちゃくちゃ強いドラゴンに挑みに行く、私の心配はしてくれないの?」
ちょっと前までは“この女神は心配性だなぁ”と思わせるぐらいだったのに、あの生意気ドラゴンの物語になってからは、あいつのことばっかり。
そろそろ嫉妬しても、誰も文句は言わないだろう。
『……確かに、そうですね。あの子が負けた後のことしか考えられてなかったです』
自分のことなのに、不思議そうな表情を浮かべるリリア。
「サポートNPCなんだから、もっと私のことも考えてよね」
握る両手にぐっと力を込めながら告げると、リリアは恥ずかしそうに笑った。
少し自嘲めいたその笑いは、しかし、どこか清々しさを感じさせるものだ。
『そういえば、私の役割はリリア様のサポートでしたね――ふふっ、忘れないようにしないと』
もう平気かと思い、私は手に込めた力を緩める。
すると、リリアは組んでいた両手を解いて、指を絡めるように私の手を握り返してきた。
そのままなにも言わずに、ぎゅっと力を強くしたり、握り心地を確かめるように動かしたりしている。
「まあ、信頼してくれているって思えばいいのかしら?」
『はい、いまのいままで、リリア様が負けることなど考えもしていませんでした』
そういうことなら、私はその信頼に応えるだけのことだ。
しっかりとあいつに勝ってから、私だけを見てもらえるようにしよう。
『スラリアちゃんも、信じてるからね』
「えへへっ、ありがとうございます!」
隣にいたスラリアの頭に手を伸ばすリリア。
ああ、スラリアの存在を忘れてた――私とスラリアだけを見てもらえるようにしよう、だ。
ちょっと薄情だったなと思いながら、オーリに転移許可を促すメッセージを送る。
程なくして、私たちはオーリの居場所に転移されるだろう。
「じゃあ、いってくるね」
「いってきます、女神様っ」
『ちゃんと心配して待っていますから、無事に帰ってきてください』
私たちに向かって、リリアは母のように慈愛に満ちた表情で手を振る。
視界が切り替わるまでの少しの間だが、その愛情が途切れることはなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【名前】リリア
【レベル】29
【ジョブ】テイマー
【使用武器】スライム:習熟度8
【名前】スラリア
【使用武器】ローゼン・ソード:習熟度5
【ステータス】
物理攻撃:105 物理防御:55
魔力:85 敏捷:40 幸運:50
【スキル】
スライム強化:使用武器スライムのステータスが、一時的に大程度だけ増加します。
なつき度強化:隠れステータス、魔物のなつき度の上昇値が大程度だけ増加します。
勇敢:恐怖の状態異常への耐性が、大程度だけ増加します。
知恵の泉:思考速度を零程度だけ増加します。
魅了:NPCに与える好感度を零程度だけ増加します。
同調:テイマー専用、習熟度5以上の魔物を一定時間、身体に宿すことができます。
不器用:物理防御のステータス値を、10%だけ増加します。
統率:範囲内の任意の対象のステータスを、大程度だけ増加します。
灯火:暗闇の状態異常への耐性が、大程度だけ増加します。
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【名前】オーリから【メッセージ】が届きました!
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目の前に、にゅんっと黒い画面が現れた。
どうやら、うちの自慢の先兵はきっちりと仕事をこなしたようだ。
画面の下の方に触れて、メッセージ内容を表示させる。
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【名前】オーリ
【メッセージ】
標的の位置情報の直前で進めなくなった。
この先にはリリアしか行けないと思う。
周囲の安全を確保して、来るのを待つ。
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「オーリが上手くやってくれたみたい」
前回、ホワイトドラゴンに出会うまでの道すがら、かなりの数の魔物にも出くわした。
そして、リリアから教えてもらったのだが、シルバニア・ジャイアントウルフがいなくなった後の覇権を狙って、さらに多くの魔物が森に集結しつつあったそうだ。
『運営側の私がこんな発言をしていいのかわかりませんが、オーリ様にはなにか手枷でも嵌めていていただきたいものです』
揃えた両手を前に出しつつ、ため息をつくリリア。
捕まった犯人みたいな姿勢でも、リリアは可愛い。
『30そこそこのレベルで、あの森をほとんど無傷で切り抜けるなんてちょっと信じられませんね』
オーリには、私がホワイトドラゴンと戦う前に消耗しないように、代わりに森を攻略してもらった。
相互ブックマークの機能を利用すれば、街中でなくても任意の場所に転移することができるということだ。
「あの子、ゲームに関しては全身全霊だからね。ちょっと前に格闘系のゲームをやってたとき、現実で道場とかボクシングジムに通ったりしてたんだよ」
身体を鍛えはじめたのも、その頃だったように思う。
そのせいで学業がおろそかになったのだから、褒めはしない。
しかし、これは褒めるわけではないけど、あれだけ全力でなにかに打ち込めることは素直にかっこいいと思うし、姉として誇らしい。
『そのゲーム、鬼畜難易度で有名なやつですね。私もプレイしたことがあるのですが、制作者は頭がおかしいのかと思いました』
「ずっと遊んでいたのかは知らないけど、話を聞いていた限り一年ぐらいはやってたんじゃないかな」
その間に身長もぐっと伸びて、あんなに生意気になっちゃって。
子どもの頃から、私の方が小さかったことは確かだ。
でも、もう少し可愛げはあったような覚えがあるんだけどね。
『なるほど、あれを一年もプレイし続けたということでしたら、達人の域に達していても不思議ではありません。どおりで動きが洗練されているわけですね』
感心するかのように大きく頷くリリア。
ただ、大げさな動きのわりに、言葉に心がこもっていないような気がする。
うーむ……なんとなく、いつもよりお喋りだとも思う。
「やっぱり、心配?」
間違っているかもしれないから、“なにが”とか“誰が”とかを明確にせずに問いかけた。
すると、しばらくしてリリアは口を開く。
『……あの子が、自らを罰するかのように強さを追い求めてきた姿を、私は知っています。その過程で、弱者に対してはあのような態度を取るようになってしまったのです』
悲しげに顔を伏せつつ言葉を紡ぐ、まるで罰されなければならないのが自分であるかのように。
心配事は、あのドラゴンについてだったか。
『リリア様に敗れて、あの子の信念が折れてしまわないか、もっとねじ曲がってしまうのではないか……どうなるかわからないので、心配です』
俯いたまま、リリアは祈るように両手を組む。
その女神を体現する所作にも、悲しみや不安が混ざり込んでいた。
『この世界の生きとし生けるものは、全て大切な子どもたちです。ただ、あの子は……あの子だけは、特別なのです』
「……ねえ、リリア?」
組まれたリリアの手を覆うように、両手でそっと包み込んだ。
呼びかけに応えるように、リリアはゆっくりと顔を上げる。
「ちょっと、冷たいんじゃない?」
『えっ?』
しょぼんからきょとんに移りゆき、半ば閉じられていた目がぱっと丸くなった。
儚げな表情も美しくて好きだけど、ずっと見ていたいとは思わない。
「めちゃくちゃ強いドラゴンに挑みに行く、私の心配はしてくれないの?」
ちょっと前までは“この女神は心配性だなぁ”と思わせるぐらいだったのに、あの生意気ドラゴンの物語になってからは、あいつのことばっかり。
そろそろ嫉妬しても、誰も文句は言わないだろう。
『……確かに、そうですね。あの子が負けた後のことしか考えられてなかったです』
自分のことなのに、不思議そうな表情を浮かべるリリア。
「サポートNPCなんだから、もっと私のことも考えてよね」
握る両手にぐっと力を込めながら告げると、リリアは恥ずかしそうに笑った。
少し自嘲めいたその笑いは、しかし、どこか清々しさを感じさせるものだ。
『そういえば、私の役割はリリア様のサポートでしたね――ふふっ、忘れないようにしないと』
もう平気かと思い、私は手に込めた力を緩める。
すると、リリアは組んでいた両手を解いて、指を絡めるように私の手を握り返してきた。
そのままなにも言わずに、ぎゅっと力を強くしたり、握り心地を確かめるように動かしたりしている。
「まあ、信頼してくれているって思えばいいのかしら?」
『はい、いまのいままで、リリア様が負けることなど考えもしていませんでした』
そういうことなら、私はその信頼に応えるだけのことだ。
しっかりとあいつに勝ってから、私だけを見てもらえるようにしよう。
『スラリアちゃんも、信じてるからね』
「えへへっ、ありがとうございます!」
隣にいたスラリアの頭に手を伸ばすリリア。
ああ、スラリアの存在を忘れてた――私とスラリアだけを見てもらえるようにしよう、だ。
ちょっと薄情だったなと思いながら、オーリに転移許可を促すメッセージを送る。
程なくして、私たちはオーリの居場所に転移されるだろう。
「じゃあ、いってくるね」
「いってきます、女神様っ」
『ちゃんと心配して待っていますから、無事に帰ってきてください』
私たちに向かって、リリアは母のように慈愛に満ちた表情で手を振る。
視界が切り替わるまでの少しの間だが、その愛情が途切れることはなかった。
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【名前】リリア
【レベル】29
【ジョブ】テイマー
【使用武器】スライム:習熟度8
【名前】スラリア
【使用武器】ローゼン・ソード:習熟度5
【ステータス】
物理攻撃:105 物理防御:55
魔力:85 敏捷:40 幸運:50
【スキル】
スライム強化:使用武器スライムのステータスが、一時的に大程度だけ増加します。
なつき度強化:隠れステータス、魔物のなつき度の上昇値が大程度だけ増加します。
勇敢:恐怖の状態異常への耐性が、大程度だけ増加します。
知恵の泉:思考速度を零程度だけ増加します。
魅了:NPCに与える好感度を零程度だけ増加します。
同調:テイマー専用、習熟度5以上の魔物を一定時間、身体に宿すことができます。
不器用:物理防御のステータス値を、10%だけ増加します。
統率:範囲内の任意の対象のステータスを、大程度だけ増加します。
灯火:暗闇の状態異常への耐性が、大程度だけ増加します。
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